ロシア軍がウクライナを503発の長距離ドローン・ミサイル攻撃、弾道ミサイル32発は過去最大(JSF)
2025年11月8日のウクライナに対するロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃は合計503飛来(ドローン458機+ミサイル45発)でした。今月初の大規模攻撃です。なおウクライナ側の集計で混乱があり、撃墜したミサイルの種類が詳しく報告されていません。ただし飛来した種類は詳しく報告されており、特にミサイル45発のうち32発が弾道ミサイルという異例の事態です。これは過去最大だった10月16日の弾道ミサイル28発をさらに上回っています。
2025年11月8日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部
- キンジャール空中発射弾道ミサイル×7飛来
- イスカンデルM/KN-23弾道ミサイル×25飛来
- イスカンデルK巡航ミサイル×10飛来
- カリブル巡航ミサイル×3飛来
※ミサイル×45飛来9撃墜(撃墜したミサイルの種類は詳細不明)
- 自爆無人機と囮無人機×458飛来406排除(飛来うちシャヘド約300)
※合計503飛来415排除、88突破 ※阻止率83%
ウクライナ空軍より2025年11月8クライナ空軍より2025年11月8日迎撃戦闘の集計報告攻撃は石油・ガスのインフラに集中
※ППО радар と monitorwar による共同作業の可視化地図(2025年11月8日)攻撃経路の可視化地図の出典 : https://t.me/mon1tor_ua/57478
- 橙色:弾道ミサイル(イスカンデルM/KN-23:地上発射)
- 水色:弾道ミサイル(キンジャール:空中発射)
- 赤色:巡航ミサイル(イスカンデルK:地上発射)
- 緑色:巡航ミサイル(カリブル:艦船発射)
- 黄色:各種ドローン(シャヘド自爆無人機/ガーベラ囮無人機:地上発射)
各種ミサイル×45飛来9撃墜、36突破 ※阻止率20%
- キンジャール空中発射弾道ミサイル×7飛来
- イスカンデルM/KN-23弾道ミサイル×25飛来
- イスカンデルK巡航ミサイル×10飛来
- カリブル巡航ミサイル×3飛来
※撃墜したミサイル9発の種類は報告されておらず、詳細不明。
弾道ミサイル32発は異例の事態です。これまで弾道ミサイルは一度の使用は数発ずつがほとんどで、2桁以上の数はごく稀で、過去最大は10月16日の28発が記録されたばかりです。しかし10月16日は未到達18発が報告されておりイスカンデルM用デコイ弾「9B899」を誤認した可能性がありますが、11月8日には未到達の報告が無く、実弾の弾道ミサイルが32発飛来したとそのまま受け取ることになります。
最近の大規模な弾道ミサイル発射記録(5月以降、2桁以上)
- 2025年11月08日:32飛来(撃墜数の詳細不明)
- 2025年10月22日:15飛来6撃墜
- 2025年10月16日:28飛来18未到達
- 2025年10月10日:16飛来5撃墜
- 2025年09月:2桁以上の発射無し(9月20日の8発が最大)
- 2025年08月28日:11飛来8撃墜
- 2025年07月26日:12飛来(撃墜数の詳細不明)
- 2025年07月19日:12飛来7撃墜
- 2025年06月23日:11飛来7撃墜3未到達
- 2025年05月24日:14飛来6撃墜
※弾道ミサイルの2桁以上の発射は月に1回程度が平均的だったが、10月から突然に増え出しており、10月分の弾道ミサイルは合計で101発(関連記事)と過去最大。11月もこの傾向が続く場合、ロシアの弾道ミサイル調達に劇的な動きが生じたことになる。
各種ドローン×458飛来406排除、52突破 ※阻止率89%
長距離無人機について阻止率は最近の大規模攻撃と比べても大きな違いはありません。長距離ドローン攻撃は毎日行われており、数日おきに纏まった数の大規模なドローン発射が記録されていて、阻止率は80~90%の状態が続いています。
最近の大規模なドローン飛来記録(10月以降)
- 2025年11月08日:458飛来406排除、52突破 ※阻止率89%
- 2025年10月30日:653飛来592排除、61突破 ※阻止率91%
- 2025年10月22日:405飛来333排除、72突破 ※阻止率82%
- 2025年10月16日:320飛来283排除、37突破 ※阻止率88%
- 2025年10月10日:465飛来405排除、60突破 ※阻止率87%
- 2025年10月05日:496飛来439排除、57突破 ※阻止率89%
- 2025年10月03日:381飛来303排除、78突破 ※阻止率80%
※ドローン阻止率の推移は最近に限らず過去3年を見ても大きな変動は無く、概ね80~95%の範囲に収まっており、特に悪い場合でも70%台が稀に記録された程度。
※ドローン飛来数のおそらく半分以上は安価な囮無人機であると思われる。長距離ドローン攻撃で囮無人機が混じり出したのは2024年7月以降、本格的に増加したのは2024年10月以降。
突破数の打撃力換算:ミサイル1点、ドローン0.1点
- 2025年11月08日:合計41.1点(ドローン5.2点+ミサイル36点)
- 2025年10月30日:合計24.1点(ドローン6.1点+ミサイル18点)
- 2025年10月22日:合計21.2点(ドローン7.2点+ミサイル14点)
- 2025年10月16日:合計17.7点(ドローン3.7点+ミサイル14点)
- 2025年10月10日:合計19.0点(ドローン6.0点+ミサイル13点)
- 2025年10月05日:合計13.7点(ドローン5.7点+ミサイル8点)
- 2025年10月03日:合計25.8点(ドローン7.8点+ミサイル18点)
※打撃力換算はミサイルとドローンの弾頭重量差を10倍とする。
※上記リストは10月以降の突破数の打撃力10点以上のケース。
11月8日は弾道ミサイルの飛来が多かったのでミサイル突破数が突出して多く、被害を受けた打撃量では過去最大を記録しています。
ウクライナ国営ガス会社ナフトガスの損害報告
和訳:ナフトガスのセルヒ―・コレツキーCEO「ロシアは昨夜、ウクライナのガスインフラに対し、ミサイルとドローンによる大規模な攻撃を再び開始しました。従業員1名が負傷し、設備が損傷しています。これは10月初旬以来9回目の(ガスインフラを)標的にした攻撃であり、ウクライナ国民からガスと暖房を奪うことを狙った新たなテロ行為です。」
和訳:ナフトガス「今夜、ロシアが再び我々のガスインフラを攻撃しました。これは10月以降で9回目の大規模攻撃です。命中と損傷が発生しています。 残念ながら、我々の同僚1名が負傷しました。現在、彼は医師の監察下にあります。」
ウクライナのエネルギー大手企業DTEKの停電報告
和訳:DTEK「キーウ市およびキーウ州:ウクルエネルホの緊急停電命令を実行中。緊急停電は危機的な状況下で計画外かつ急きょ実施されるため、通常スケジュール外で実施されます。電気が使える場合は、節電にご協力ください。」
※ウクルエネルホ:ウクライナの国家送電網を管理する国営企業。
弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。