謎多きデニソワ人の化石と大量の石器発見、ついに暮らしが見えた

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中国南西部の雲南省にあるビエンフー洞窟遺跡で、デニソワ人の骨3点、歯4本を発見し、同じ洞窟から石器も1366点見つかった、と9月9日付の学術誌「ネイチャー」に二つの国際研究チームがそれぞれ論文を発表した。骨は頭頂骨の断片が2点と前腕骨が1点で、デニソワ人の前腕骨が発見されたのは初めてだ。これらの化石と石器は、6万点以上の哺乳類の骨片に混ざった形で発見された。

2010年にデニソワ人の存在が明らかになって以来、彼らについて科学者たちが知っていることの多くは、シベリアの洞窟で発見された小指の骨の化石から抽出されたDNAに由来している。その後、肋骨、数本の歯、顎骨の断片2点なども見つかっているが、最大の発見は2025年にもたらされた。中国北東部で以前に発見されていた、目の上の骨が大きく隆起した古人類「竜人」の頭蓋骨がデニソワ人のものと特定されたのだ。

にもかかわらず、この絶滅した古人類は依然として謎に包まれていた。科学者たちはデニソワ人の化石を、近くで発掘された石器や動物の骨と結びつけることに苦戦してきた。

今回の発見により、研究者たちはついにデニソワ人が日常生活の中で使ったスクレイパー(皮などを削ったり掻いたりする石器)、チョッパー(石を打ち欠いて刃をつけた石器)、ハンマーストーン(石器作りなどでハンマーとして使う石)、そしてこれらの成形に使われた骨製道具などの一連の道具を詳しく調べられるようになった。

「遺跡はたくさんあるのですが、これらの道具の製作者が誰なのかは往々にして分かりません」と、中国科学院チベット高原研究所の考古学者で、論文の共著者の1人であるリー・ハオ氏は言う。研究チームは今回の発見のおかげで、デニソワ人と彼らが製作して使用した石器との間に確固たる関連を立証できた。リー氏によれば、道具や動物の骨の多くには、互いにこすられたり打ち付けられたりしてできたと思われる痕跡が見られるという。

「デニソワ人が利用した技術に関する知見は、非常に興味深いです」と、ドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所の進化遺伝学者のスバンテ・ペーボ氏は語る。ペーボ氏の研究室は2010年に、指の骨の化石からデニソワ人のDNA配列を初めて解読したが、氏は今回の研究には関与していない。

「彼らがどのように暮らしていたかについて、ついに直接的な知見が得られたのは素晴らしいことです」

今回の研究チームは限られたデータのみを根拠に化石をデニソワ人のものと同定している。「これは現時点でなし得る最善のことであり、化石はデニソワ人のものだと私は確信しています」とペーボ氏は言う。

具体的には、研究チームは骨からDNAを抽出できなかったため、DNAを使わない方法で同定する必要があった。彼らが採用したのは、骨に多く含まれるコラーゲンというタンパク質を分析する方法だ。

同じヒト族(ホミニン)の中でも、コラーゲンのアミノ酸の組成は互いにわずかに異なっている。分析結果を見た研究者たちは、この骨がデニソワ人のものであることにほとんど疑いの余地はないと考えた。

両方の研究に関わった南京師範大学の地質年代学者のシャオ・チンフェン氏は、骨は16万7000年前から13万4000年前のものと推定されるが、石器の年代の幅はもっと広く、19万年前から7万年前のものと推定されると言う。同氏によると、これらはかつての石灰岩採石場の植生を回復させるプロジェクトの中で偶然見つかったもので、幸運な発見だった。

「洞窟の大部分はすでに破壊されていました」とシャオ氏。

デニソワ人の頭頂骨の断片について、おそらく最も注目すべき点は7.6mmと10mmという厚さだ。これは現生人類ホモ・サピエンスよりも、ホモ・エレクトスやネアンデルタール人に近い。

回収された前腕骨は、橈骨(とうこつ、親指側にある前腕の長い骨)の一部だ。保存されているのは肘側の部分のみで、上腕二頭筋の腱が付着する箇所の隆起(橈骨結節)の向きは、現生人類に多い「前内側」寄りではなく「内側」を向いていたと見られる。この発見は、筋肉の大きさが同じであれば、腕をねじって手のひらを上に向ける動作において、デニソワ人は現生人類よりも大きな力を生み出せた可能性を示唆している。

道具については、典型的なホモ・サピエンスの道具に見られるほどの加工は施されていない。この洞窟のデニソワ人はどちらかというと即興的に道具を製作していたと考えられる。

多くの場合、石から鋭い破片を数個打ち出しては使用し、使った後は捨てていたようだ、とリー氏は言う。発見された道具は、製作者が私たちの祖先がのちに見せるほどには、特定の形状や技術にこだわっていなかったことを示唆している。

おそらく彼らは、道具にこだわる必要がなかったのだろう。このデニソワ人が生きていた時代は氷期にあたり、シカやウシ科などの動物の骨が豊富に見つかっている。この地域の比較的穏やかな環境では、食料の確保はそれほど難しくはなかったと考えられる。このことは、ホモ・サピエンスが登場したときにデニソワ人が競争に敗れた理由を説明する一助となるかもしれない。

とはいえ、デニソワ人は完全に姿を消したわけではない。今日生きている多くの人々のDNAには、祖先がデニソワ人と交雑した証拠が含まれている。チベット人はこうした交雑によって、高地で生き抜くのを助けてくれる遺伝子を獲得した。

中国南西部での今回の発見は、デニソワ人が最初に発見されたシベリアから遠く離れた地域にもいたことをさらに裏付ける新たな証拠となった。デニソワ人の遺伝的要素は、フィリピン、パプアニューギニア、オーストラリアなどの先住民族において一般的だが、世界中の他の多くの人々にも見られる。

「私は両方の研究に感銘を受けました。デニソワ人の考古学的痕跡に関する知見をもたらしてくれる新たな遺跡が発見されたのは嬉しいことです」と、デンマーク、コペンハーゲン大学の古代タンパク質分析の専門家のフリード・ウェルカー氏は語る。

氏は今回の研究には参加していないが、ラオスで発見されたデニソワ人の歯を特定したチームの一員だった。「デニソワ人が現生人類のゲノムに及ぼした遺伝的影響を超えて、私たちの理解を深める上で極めて重要な発見だと思います」

文=Tim Vernimmen/訳=三枝小夜子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2026年9月15日公開)

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