長友佑都の“スピード復帰”を支えた青魚…専属シェフ・加藤超也が明かす回復メシ

5回目のW杯に臨む長友佑都

 5月15日に発表された北中米ワールドカップ(W杯)の日本代表26選手のなかに、長友佑都(FC東京)の名前があった。日本人として史上初、5度目のW杯メンバー入りだ。  W杯メンバー発表から遡ること2か月前。3月14日のJ1百年構想リーグで、長友は右足の違和感を訴えると担架でピッチを後にした。右ハムストリング肉離れだった。W杯メンバー入りが不安視されたなかで、長友は見事な復活劇を見せた。  ドクターも驚いたという長友の超回復。それを食事の面から支えたのが、長友の専属シェフを務める加藤超也シェフだ。取材日は、W杯のメンバー発表直前の5月15日昼過ぎ。加藤シェフは「長友選手をサポートするようになって3回目のW杯(2018年、22年、26年)ですけど、今回のメンバー発表が一番緊張しています。気が紛れるので、取材をしていただけてありがたいです」と口元を緩めた。そして、取材終了から90分後、森保一日本代表監督は長友佑都の名前を読み上げた。

長友復活へのカギは“青魚”

 2016年に長友本人へのDMで立候補したことをきっかけに、加藤シェフは専属シェフに就任した。それから10年、長友が大きな筋肉系の怪我をしたのは初めてのことだった。 「筋肉系の怪我をさせてしまったことに関しては、自分の責任だと思いました。長友選手はそんなこと全く思っていないでしょうし、いろいろな要素があるとは思いますが、僕個人としてはその思いが強いです」  長友の体づくりを支える加藤シェフにとって、ショックは大きかった。しかし、下を向いてはいられない。W杯に間に合わせるため復帰への道筋を描いた。 「肉離れは筋肉の断裂によって起こるため、体のなかでは血管が傷つき、内出血が起きています。だからこそ食事では、『これ以上ダメージを広げないこと』と『修復を早めること』を最優先にアプローチしました。まず着目したのは、内出血や炎症をどう抑えていくかでした。そのうえで、回復段階に合わせて血流を促し、修復に必要な栄養をしっかり届けていくことの優先的食材として、青魚に含まれるオメガ3系脂肪酸を摂取することに注力しました」  ハムストリングの肉離れはサッカー選手が見舞われる怪我のひとつだ。長友をサポートして10年、初めて直面する大きな筋肉系の怪我に対して、加藤シェフはどのようなサポートをしたのか。 「オメガ3系脂肪酸を効率よく摂るために、長友選手にはアジなどの青魚を食べてもらうことを徹底しました。青魚を食事として摂るうえで、刺身など生に近い状態で食べることで、効率よくオメガ3系脂肪酸を摂取できると言われています。朝、水揚げされた鮮度抜群の魚を長友選手へ提供していました」  加藤シェフが相模湾近海で獲れた魚を購入して自宅で下処理をし、長友の自宅に行って夕食の提供をしていたなかで、うれしい知らせが届く。 「『数週間でこんなにきれいに出血が消えるとは』と、長友選手がドクターに言われたそうです。食事のアプローチとしては、間違っていなかったんだと確信しました」 「全治までのスケジュールを考えると、復帰はギリギリ」という困難な状況でありながら、驚異の回復力を見せた長友は、負傷から53日後の5月6日には途中出場で復帰をはたした。「99.9%は、長友選手のポテンシャルと努力です。0.1%ぐらいは僕が力になれたかもしれません」と加藤シェフは安堵した。  39歳という大ベテランに差し掛かりながらも、いまだ長友の鉄人ぶりは健在だ。それを支えているのは、毎日の積み重ねだと、加藤シェフは強調する。 「特に食事に関しては、『今日食べたから、明日良くなる』というほどの影響はないと思っているんです。日々の食事が、血となり肉となり細胞になっていきます。私は長友選手が29歳のときに専属シェフに就いたんですけど、長友選手は『10年早く食事の重要性に気づいて取り組んでいたら、もっと状態が良くなっていた』と言います。早く気づいた者勝ちというのが、食事においては非常に重要だと思います」 育成年代にも勧めたい“高たんぱく食”  長友と加藤シェフが歩んできた10年の間に、アスリートの食に対する考え方も変化してきているという。 「プロのアスリートで専属シェフも増えましたし、プロのアスリートを目指している方から、『どのような食事を摂ったほうがいいですか?』という質問をいただく機会も多いです。部活でスポーツに取り組んでいる若い世代の子たちも意識的に軽食を取っているという話も聞きます。10年前には考えられないほど、食への意識が高まっているのを感じます」  加藤シェフは高校で食に関する講演を行うなど、育成年代に食の重要性を伝える活動も行っている。 「高校年代は成長期のラストスパートと言われる時期に差し掛かっていますから、そのタイミングで成長期の体づくりをサポートするには、何を摂取すればいいのか。まずは、筋肉や血液、髪の毛など、体のさまざまな組織をつくるたんぱく質が重要です。それに付随して、カルシウムと、ビタミンDも必要になってきます。たんぱく質、カルシウム、ビタミンDが手軽に摂れる食品としておすすめしているのが、しらすです。ごはんに混ぜておにぎりにすると、お腹が空いたときに食べる軽食として高い効果を期待できます」  より身近に摂取できるたんぱく質として、加藤シェフが注目した食材が、鶏肉だ。 「鶏肉の栄養素のメリットとしては、たんぱく質がしっかり摂れることがまずは挙げられます。また、肉の脂はネガティブなイメージがあるかもしれませんが、鶏に含まれる脂は決して悪いものではなく、特に鶏もも肉の皮に含まれる脂の成分はオリーブオイルに近い成分が含まれています。つまり、たんぱく質と良質な脂質を同時に摂取できるのです。ほかにも、内臓系であるレバーは鉄分が非常に豊富に含まれています。鉄分は、特に成長期のお子さんや女性に摂っていただきたい栄養素です」  加藤シェフの最新刊『鶏が主役!超タンパクめし』(主婦の友社)では、その名のとおり55の鶏レシピが掲載されている。鶏もも肉から鶏むね肉、鶏ひき肉、レバーなどの内臓系、卵を使った、たんぱく質豊富な鶏のレシピが満載だ。  レシピのなかから、手軽な軽食・補食として加藤シェフがおすすめしてくれたのが、「エネルギー蒸しパン」だ。 「育成年代の子どもがいる親御さんから、軽食や補食についての質問をよくいただきます。コンビニでパンを食べるより、高たんぱくで体のエネルギーになりやすい『エネルギー蒸しパン』は好評をいただいています。書籍ではバナナや小豆などを使ったアレンジレシピも載せているのですが、手軽につくれてボリュームもあるプレーンなタイプをご紹介します。高校で運動系の部活をしている息子にも持たせています」

「エネルギー蒸しパン」の作り方

■材料(直径24cmの蒸し器1台分) ・卵…2個 ・きび糖(なければ砂糖)…80g ・調製豆乳…200g ・オリーブ油…15g A・米粉…150g A・アーモンドプードル…50g A・ベーキングパウダー…10g

■作り方

1.生地を作る 大きめのボウルに卵を入れて泡立て器でさっとまぜる。きび糖を加えて白っぽくなるまでよくまぜ、オリーブ油、豆乳を加えてさらにまぜる。とろっとしたらAを加え、ゴムべらでだまがなくなるまでさっくりとまぜる。 2.蒸す せいろにクッキングシートを敷き、1を流し入れる。鍋に湯を沸かしてせいろをのせてふたをし、中火〜強火で30分ほど蒸す。 【書籍概要】 ■書名:鶏が主役!超タンパクめし ■著者:加藤超也(かとう・たつや) ■発売日: 2026年4月15日 ■発行元:主婦の友社 ■定価:1,980円(税込)

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(取材・文 奥山典幸)●2026ワールドカップ(W杯)北中米大会特集▶お笑いコンビ「ヤーレンズ」がサッカーをしゃべり倒すポッドキャスト「ボケサカ」は毎週金曜配信

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