外国人政策めぐり都内でシンポ 鈴木前法相「実行力問われる」家族滞在32万人、支援課題 「移民」と日本人

講演する鈴木馨祐前法相=12月20日、東京都港区

高市早苗政権で外国人政策の見直しが進む中、外国人との「秩序ある共生」のための政策のあり方を考えるシンポジウムが東京都内で開かれた。鈴木馨祐前法相が基調講演し、外国人対応について「これからの数年が極めて大事な時期だ」「政府の実行力と発信力が問われる」などと述べた。シンポでは「家族滞在」の在留者の増加を背景に、今後の日本語教育のあり方などが議論された。

シンポジウムは、政治社会学会の移民難民研究部会(代表・滝沢三郎東洋英和女学院大名誉教授)が主催した「国際的な移民排斥の時代における日本の外国人政策」。今月20日に東京都港区の同大大学院で開かれ約30人が参加したほか、登壇者の一人で米移民政策研究所のアンドリュー・シーリー所長ら約100人がオンラインで参加した。

特定技能「2号」急増

明治大の山脇啓造教授は「日本の外国人政策には二重構造がある」として「日本では長年、移民政策を否定する言説が維持されてきた。一方で外国人の受け入れと定住は着実に進行してきた。この言説と現実の乖離が近年、政府に対する国民の不信と自治体の疲弊を生み出している」と報告した。

山脇氏は、移民政策について「国際的には、永住か一時滞在かを問わず、外国人の入国から滞在、統合を管理する政策を指す」と指摘。政府が平成31(2019)年に新設した人手不足が深刻な業界で外国人労働者を受け入れる「特定技能」制度は、「特定技能2号」で家族帯同を認め、永住も可能となるため「移民政策と言える」と述べた。

また、出入国在留管理庁の福原申子在留管理支援部長が、同庁が出入国管理だけでなく在留支援も担うようになった経緯を説明。特定技能2号の在留者が令和6年末の832人から7年6月末時点では3073人と、半年間で約3・7倍に急増したことや、「家族滞在」の在留者が6年末時点で30万人を超え、10年間で約2・4倍になったことなどを紹介した。

家族滞在は7年6月末時点ではさらに増え、32万5401人と全在留外国人の8・2%を占めている。

焦点は日本語教育

その後の質疑では、愛知県の研究者が外国人の「社会統合」政策に関連して「子供の教育について研究しているが、日本語がまったくわからない子供が100人くらいいる一方で、支援員の訪問は2週間に1度で、自治体は疲弊している。特定技能2号による家族滞在の在留者が今後さらに増えると予想される中で、国として支援策をどう考えているのか」と質問。

福原氏は「いま、そういう声が非常に増えている。子供の学習支援だけでなく母親の出産支援など、人生のさまざまな段階に寄り添って支援策を実施していかなければならないと考えている」と答えた。

また、「日本語学習では文部科学省が、子供の学校入学前での支援策も検討していると聞いている」と説明した。

山脇氏は「学校教育の中で日本語教育をきちんと位置づける必要がある。米国や豪州などでは移民のための言語教育の専門資格を持った教員がいる。日本でも、日本語科を設けたり、日本語教育の専門教員の育成を制度化する必要がある」と話した。

「移民」に定義を

関西国際大の毛受敏浩客員教授は、山脇氏が提起した「二重構造」について、「移民に対して否定的なイメージが広がっている。私は『移民ジレンマ』と呼んでいるが、移民について正面から議論すべき時期に来ている」と指摘。「政府は有識者会議などで、これからの新しい移民像について定義づけすべきだ」と問題提起した。

福原氏は「お答えになっていないかもしれないが、『移民』という言葉に限らず外国人の受け入れ自体に否定的なイメージがある。外国人労働者の受け入れの必要性や、その肯定的な面をどう発信していくのか、工夫していきたい」と語った。

山脇氏は「私も、いまの日本の現状では、はっきりした答えはないかなと考えている」とした上で「英語には移民を表す言葉が『immigrant(永住者)』と『migrant(移住者)』と2つあるが、日本語では両方とも『移民』と訳されている。それが日本での議論を難しくしているのではないか」と指摘した。

外国人労働者の日本語能力「N5」は英検3級相当、N4は準2級 帯同家族は要件なし

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