「気合を入れ直せば戻る」は通用しない…細胞が10歳老ける「ストレスを受け続けた脳」にあらわれる危険な変化(プレジデントオンライン)
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ストレスを受け続けた脳には何が起こるか。起業家の小原康照さんは「ストレスは単なる精神的な不快感にとどまらず、物理的な『毒素』として血中に蓄積し、脳の構造や細胞の遺伝子レベルにまで深刻な悪影響を及ぼす。ストレスによる認知機能の低下は、1日の中でも時間とともに悪化していく」という――。
※本稿は、小原康照『世界の一流が実践している科学的休養』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。■3週間のストレスで脳への入力が33%減る ストレスは単なる精神的な不快感にとどまらず、物理的な「毒素」として血中に蓄積し、脳の構造や細胞の遺伝子レベルにまで深刻な悪影響を及ぼす。その具体的な被害は以下の通りだ。 ①神経細胞の破壊 ロックフェラー大学のブルース・マキューエン博士らの研究によれば、慢性的なストレスにさらされると、脳の前頭前野や海馬にある神経細胞の「樹状突起(他の神経細胞から信号を受け取る枝のような構造)」が萎縮し、枝分かれが減少することがわかっている。 わずか3週間のストレスで、前頭前野の樹状突起への入力が最大33%も減少したという報告もある。 樹状突起が縮むと、神経細胞同士のつながりが弱まる。判断力、注意力、感情の安定など、『世界の一流が実践している科学的休養』第2章で挙げた「5つの機能」の土台そのものが、文字通り物理的に削られていくのだ。 さらに厄介なのは、回復に条件があることだ。若い脳であれば、ストレスが取り除かれた後、数週間で樹状突起は再び伸び始めることが確認されている。 しかし、加齢やストレスの長期化によって、この回復力は著しく低下する。つまり、ストレスを放置すればするほど、脳が元に戻る力そのものが失われていく。「いつか休めば治る」――その「いつか」を先延ばしにするたびに、回復のハードルは上がり続けているのである。
■「気合を入れ直せば戻る」が通用しない ②認知機能の低下 ストレスによる脳のダメージは、日常の認知機能を広範囲に蝕んでいく。影響は大きく3つの領域に現れる。 第一に、判断力の慢性的な低下。 脳が疲れると前頭前野の機能が低下し、扁桃体が優位になる。それは「脳疲労の状態」である。ここで重要なのは、慢性ストレスがこの状態を構造的に固定してしまうということだ。 一時的な疲れであれば、一晩眠れば前頭前野は回復する。しかし、ストレスが数週間、数カ月と続くと、前頭前野の樹状突起そのものが萎縮し、神経回路が物理的に細くなっていく。 すると、たとえ休日に休んでも、前頭前野が本来の処理能力を発揮できない「低出力モード」が常態化する。 これは一時的な不調ではなく、脳の配線が書き換えられている状態だ。だからこそ、「気合を入れ直せば戻る」が通用しなくなる。 重要な案件を前にしても決断が下せない、些細なリスクを過大に感じて動けなくなる――これらは意志の問題ではなく、脳が物理的に変わってしまった結果なのだ。■RAM容量が半分になったパソコンのよう 第二に、ワーキングメモリの劣化。 ワーキングメモリとは、「今この瞬間に必要な情報を一時的に頭に保持しながら処理する」能力のこと。会議で相手の発言を聞きながら自分の意見をまとめる、複数のタスクの優先順位をつける――こうした日常の知的作業はすべてワーキングメモリに依存している。 イェール大学のエイミー・アーンステン博士らの研究では、ストレスホルモンの過剰分泌が前頭前野のワーキングメモリ回路を直接的に阻害することが示されている。 ストレスが高まると、脳はまるでRAM容量が半分になったパソコンのようになる。アプリを開きすぎてフリーズするように、情報を保持しきれずに思考が止まるのだ。 第三に、意思決定疲労。
ストレスによる認知機能の低下は、1日の中でも時間とともに悪化していく。
■判断力が午前中に枯渇する 前頭前野が判断に使えるエネルギーには上限がある。朝の時点ではまだ余力があっても、ストレスを受け続けた脳は、時間が経つほど判断の質が落ちていく。これが「意思決定疲労」と呼ばれる現象だ。 朝は冷静に対処できた案件が、夕方には些細なことで投げやりな決断をしてしまう。重要な判断を先送りにし続け、締め切り直前に追い込まれて質の低い選択をする。 あるいは、帰宅後にネットショッピングで不要なものを衝動買いしてしまう――これらはすべて、前頭前野の燃料切れによるものだ。 問題は、ストレス状態の脳では、この燃料の消耗スピードが通常の何倍にも跳ね上がることだ。健康な脳であれば1日を通して保つはずの判断力が、慢性ストレス下では午前中に枯渇してしまうこともある。 すると午後からの数時間は、まともな判断ができないまま仕事を続けることになる。生産性が落ちるだけではない。誤った判断が積み重なり、仕事の質、人間関係、さらには人生の方向性そのものに影響を及ぼしていく。■細胞レベルで10歳以上老ける ③細胞の老化を加速させる「テロメアの短縮」 私たちの細胞には「テロメア」と呼ばれる構造がある。染色体の末端を保護するキャップのようなもので、靴紐の先端についているプラスチックのカバーに例えられることが多い。 カバーがすり減れば靴紐がほつれるように、テロメアが短くなれば細胞は老化し、やがて死んでいく。 カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエリッサ・エペル博士と、ノーベル生理学・医学賞受賞者のエリザベス・ブラックバーン博士らの研究は、慢性的なストレスがこのテロメアの短縮を加速させることを明らかにした。 ストレスレベルが最も高いグループの女性は、低いグループに比べて、テロメアの長さが約10年分も短かったのである。
つまり、強いストレスにさらされ続けると、細胞レベルで実年齢より10歳以上老けていくということだ。「ストレスで老ける」は比喩ではなく、観測可能な生物学的事実なのである。
■防御遺伝子がオフに切り替わる ④遺伝子のスイッチが切り替わる「エピジェネティクス」 ストレスの影響は、さらに深いレベルにまで及ぶ。 私たちの遺伝子には、免疫を活性化させるもの、炎症を鎮めるものなど、身体を守るための様々なプログラムが書き込まれている。 しかし、慢性的なストレスにさらされると、コルチゾールが過剰に分泌され、これらの防御プログラムの一部が「オフ」に切り替わってしまうことがわかっている。 この現象は「エピジェネティクス(後成遺伝学)」と呼ばれる分野で研究が進んでいる。遺伝子そのものが書き換わるわけではないが、遺伝子の「読み取られ方」が変化する。 たとえるなら、楽譜(DNA)は同じでも、演奏の仕方(遺伝子の発現)が変わってしまうようなものだ。 ストレスによって防御遺伝子がオフになると、身体は病気に対する抵抗力を失っていく。■「なんとなく調子が悪い」のサイン ⑤コルチゾールの蓄積と免疫力の低下 ストレス反応が慢性化すると、コルチゾールが血中に居座り続ける。コルチゾールは本来、短期的な危機に対応するためのホルモンだ。瞬間的に心拍数を上げ、エネルギーを動員し、免疫をブーストする。ここまでは正常な反応である。 しかし、コルチゾールが長期にわたって高い状態が続くと、逆に免疫系が抑制される。白血球の働きが鈍り、炎症を鎮める機能が低下し、身体は感染症や慢性疾患に対して無防備になっていく。 風邪を引きやすくなった。傷の治りが遅くなった。原因不明の倦怠感が抜けない。――これらの「なんとなく調子が悪い」は、コルチゾールの慢性的な蓄積が免疫系を蝕んでいるサインかもしれない。 ⑥不快な圧迫感 ここまで述べた細胞レベルの変化は、やがて日々の身体感覚としてはっきり現れてくる。 強いストレスが続くと、胸が締めつけられる、胃のあたりが重い、肩から首が詰まったように感じるといった身体感覚が生じる。これは交感神経の過剰な緊張により、筋肉や内臓の血管が収縮し続けていることによる。
感情的なストレスが、物理的な圧迫として身体に刻まれているのだ。
■「活動」と「休息」のリズムが壊れる ⑦慢性的な睡眠不足 夜、眠りたいのに眠れない。日中、起きているのに意識がぼんやりする。常にどこかが疲れていて、何をしても回復しきらない。 慢性的なストレスにさらされた身体は、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなり、「活動」と「休息」のリズムそのものが壊れてしまう。 不眠と日中の極度の眠気が同時に起こるのは、まさにこのリズムの崩壊を示している。 ここまで見てきた通り、ストレスは脳、細胞、遺伝子、免疫、身体感覚――あらゆる層を同時に蝕んでいく。しかも、それぞれが独立した問題ではなく、連鎖している。 脳の疲弊がコルチゾールを増やし、コルチゾールがテロメアを縮め、免疫が落ちた身体がさらに脳を疲弊させる。1つが崩れると、すべてが崩れていく。----------小原 康照(おはら・やすのぶ)ONENESS JAPAN代表、Quantum代表取締役社長他2社経営。20~25歳まで世界中をまわり、これまで旅した国は64カ国。日本に帰国後、ビジネスをスタート。30歳で年商20億円の会社にまで成長させ、お金・時間・場所・人間関係の4つの自由を手に入れるが、その後、ビジネスの失敗により数千万円の借金を背負う。借金を返すためだけに働き、「仕事の意味とは何か」と自問する日々を過ごす。人生のどん底で眠れない夜を過ごすなか、インドの哲学者でありONENESSの創始者であるシュリ・プリタジ&シュリ・クリシュナジに出会い、渡印、師事する。毎年、1年のうち4カ月間をインドに渡り、人間の意識のメカニズムを学び続けている。その経験をもとに、マインドフルネスの講演やセミナー、プログラムや企業研修を全国で開催。延べ受講者数3000人以上。また年に2回、日本最大級である1000人規模のマインドフルネスのイベントを企画&運営している。
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ONENESS JAPAN代表、Quantum代表取締役社長 小原 康照