習国家主席が米中貿易協議で描く長期戦略-トランプ氏の重点と対照的
- 戦略的成果、中国に時間的猶予を与える交渉プロセス得る
- 貿易摩擦の管理巡り米中で隔たり、トランプ氏は迅速な合意求める
トランプ米大統領がロンドンで実施された米中貿易協議の成果を声高に主張したのに対し、中国の習近平国家主席は目立たないながらも戦略的な成果を上げた。具体的には同国に時間的な猶予を与え、より打撃の大きい関税措置や技術規制の脅威を回避する交渉プロセスだ。
協議終了後の11日、トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で中国からの重要な磁石の供給回復について合意が「成立した」と表明し、中国人留学生ビザの制限解除を約束した。
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またラトニック米商務長官はその数時間前、米国の自動車や防衛産業に不可欠な金属が十分迅速に供給されるようになれば、最近導入した対中技術規制を解除すると表明した。
ただ中国の重点は、全く違うところにあった。共産党機関紙・人民日報の12日付の論説には今回の協議を巡る中国側の最も具体的な見解が示されたものの、輸出管理については一切言及がなかった。その代わり、「協議メカニズム」を通じて両国の相違を埋める「制度的保障」を同紙は強調している。
ロンドンでの協議に先立ち行われた米中首脳電話会談でも、習氏はトランプ氏にこの経路を用いた意思疎通の重要性を説いたと論じている。
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こうした状況は、貿易摩擦や不安定な関係の管理を巡る米中の隔たりを示している。トランプ氏が首脳同士の迅速な合意を求めているのに対し、習氏は側近主導の枠組みを重視しており、不意打ちを避けようとしている。駆け引きは数年続く可能性もある。
ギャブカル・リサーチの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベダー氏は、「習氏は米中貿易において長期的な戦略を取っている。習氏の任期はトランプ氏よりもはるかに長い」と指摘。「短期的な思考がないわけではないが、任期制限がない点で、トランプ氏とは全く異なる動機が働く」と語った。
原題:Xi Plays Long Game on US-China Trade as Trump Seeks Quick Wins(抜粋)