天王星を周回する新しい衛星を発見したとNASAが発表
宇宙に関する数多くの新発見や構造の理解に貢献している超高性能宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」を使って、「これまで知られていなかった天王星の衛星を特定した」とNASAの研究チームが発表しました。新しい衛星をより詳細に観察することで、天王星の知られざる謎の解明につながる可能性があります。
New Moon Discovered Orbiting Uranus Using NASA’s Webb Telescope - NASA Science
https://science.nasa.gov/blogs/webb/2025/08/19/new-moon-discovered-orbiting-uranus-using-nasas-webb-telescope/Webb telescope just peeked at Uranus and got mooned, literally | Mashable http://mashable.com/article/james-webb-space-telescope-uranus-moon-discovered 以下は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のYouTubeチャンネルが公開した、天王星の衛星の動きを図で示したムービー。
New Moon Discovered Orbiting Uranus Using NASA’s Webb Telescope - YouTube
天王星には、「5大衛星」と呼ばれるミランダ、アリエル、ウンブリエル、チタニア、オベロンを初めとして、28個の衛星が確認されていました。5大衛星は20世紀までに観察されたほか、残りの衛星は1985年以降のボイジャー2号の探査によって発見されています。
そして、NASAは2025年8月19日に、これまで知られていなかった29個目の天王星の衛星が特定できたと発表しました。衛星を発見したサウスウエスト研究所率いるチームによると、最初の検出が行われたのは2025年2月2日のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測中で、近赤外線カメラが撮影した40分間の長時間露光画像10枚の中で発見されたそうです。 サウスウエスト研究所太陽系科学探査部門の主任科学者であるマリアム・エル・ムタミッド氏は「小さな衛星ですが、重要な発見です。NASAのボイジャー2号探査機でさえ、約40年前のフライバイでは捉えられなかったものです」と発見の驚きを伝えています。また、研究結果は科学誌の掲載に必要な査読プロセスを通過していませんが、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の公式Xアカウントは「私たちはこの発見を前にじっと待っていられません、天王星に新しい月が!」と投稿しています。
「S/2025 U1」という仮称が付けられた衛星は、天王星の他の小さな衛星と同様の反射率を持つと仮定した場合、直径わずか10kmと推定される小さなものです。カリフォルニア州にある地球外知的生命体探査研究所の研究チームメンバーであるマシュー・ティスカレノ氏は「天王星ほど小さな衛星を多く持つ惑星は他にありません。そして、それらの衛星と環との複雑な相互関係は、環系と衛星系の境界を曖昧にしている天王星の謎について示唆しています。さらに、今回の衛星はこれまで知られている最も小さな衛星よりも小さく、はるかに暗いため、さらに複雑な謎が隠されている可能性があります」と述べています。 2023年に地上望遠鏡を使って天王星の衛星を発見したカーネギー科学研究所の天文学者スコット・シェパード氏は、「新しい衛星(S/2025 U1)は小さいものですが、天文学上の偉業の一つだと言えます」と語りました。シェパード氏によると、S/2025 U1は天王星の内側の環形と関係している可能性が高く、より詳細な観察から天王星について深く知ることができるとのこと。
「S/2025 U1」の正式な名前は、国際天文学連合の承認を受けて付けられる予定です。2023年にシェパード氏が発見した「S/2023 U1」も、記事作成時点で正式な名前が付けられていません。なお、天王星のすべての名付けられている衛星は、ウィリアム・シェイクスピアもしくはアレクサンダー・ポープの作品中の登場人物の名前が付けられています。
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