米海軍の攻撃型原潜、メンテナンス問題で1万5,000日以上の作戦日数を失う

米海軍の攻撃型原潜が直面するメンテナンス問題は2022年頃から表面化し、米政府説明責任局(GAO)は27日「10年間もメンテナンス問題に悩まされた結果、米海軍の攻撃型原潜は1万5,000日以上の作戦日数を失い、非稼働の潜水艦維持に推定34億ドルの費用がかかった」と報告した。

参考:Navy Readiness:Actions Needed to Address Costly Attack Submarine Maintenance Challenges

米海軍の攻撃型原潜は定数66隻に対して推定49隻(ロサンゼルス級×20隻/シーウルフ級×3隻/バージニア級×26隻)しかなく、バージニア級の工期は当初約60ヶ月(建造・艤装・引き渡しにかかる期間の合計)と見積もられていたが、ブロックVは船体中央にバージニア・ペイロード・モジュール(VPM)を挿入したため工程数が増加し、COVID-19感染症対策の導入も建造スピードに影響をもたらし、工期が70ヶ月台後半まで伸びてしまったためロサンゼルス級の退役スピードにバージニア級の供給が追いついておらず、2030年代初頭には攻撃型原潜の保有数が約45隻まで落ち込むと予想されている。

出典:U.S. Navy photo courtesy of Newport News Shipbuilding/Released

さらにメンテナンスの遅れで現役の攻撃型原潜も港に係留されたまま放置されるケースが増加しており、米潜水艦部隊の司令官を務めていたジェフリー・ジャブロン少将は2022年2月「事前スケジュールで定められた通りにメンテナンスが開始されなかったことで、攻撃型原潜戦力全体に1,500日近いアイドルタイム(メンテナンスを受けるため待機していた時間)が発生し、さらにメンテナンス作業が予定をオーバーしたことで1,300日の機会損失も被り、2021年には約7.5隻分相当する潜水艦不足に直面した」と明かして注目を集めた。

2023年1月に開催された海軍協会年次総会でも不満が爆発し、ダリル・コードル大将は「私にとってCOVID‑19やサプライチェーンといった問題もどうでもいい。SM-6や魚雷をスケジュール通りに納品して欲しいだけだ。10隻の潜水艦を発注したのに手元に届いたのは6隻だけで残りの4隻はどこに消えたのか?私の部隊は潜水艦が不足している」「現在19隻の潜水艦が整備中か整備待ちの状態だ。もし全ての作業がスケジュール通りに行われていれば潜水艦艦隊の戦力は9隻も増えていた」と不満をぶち撒け、2026年には10年以上も放置してきたロサンゼルス級ボイシのオーバーホールを断念して退役を発表している。

出典:U.S. Government Accountability Office

米政府説明責任局(GAO)は27日に発表した攻撃型原潜に関する報告書の中で「10年間もメンテナンス問題に悩まされた結果、米海軍の攻撃型原潜は1万5,000日以上の作戦日数を失い、運用できない状態の潜水艦(原潜運用認証を喪失した状態)と乗組員の維持に推定34億ドルの費用がかかった」「米海軍も現役潜水艦の待機時間短縮(メンテナンス遅延問題)に取り組んでいるものの、運用状態にない潜水艦の待機時間は増加する一方で、対策を講じなければ2026年から2030年の間に退役に備えて15隻が待機状態に入り、1万4,000日以上の待機時間が発生して潜水艦と乗組員の維持に推定31億ドルの費用がかかるだろう」と指摘。

この問題をさらに複雑にしているのは退役した原潜の廃炉作業で、ロサンゼルス級パサデナは退役に備えて2025年1月に非稼働状態に入ったものの2028年11月までノーフォーク海軍造船所に入渠できないため、海軍は退役手続きが完了するまで艦長を含む全乗組員をパサデナに配属しておかなければならず、約4年間の廃炉作業遅延で3億ドル以上の費用負担が発生し、非稼働状態のロサンゼルス級がもたらす損失は1日あたり約21.9万ドル、バージニア級は約23.7万ドルに達する。

出典:U.S. Government Accountability Office

ちなみにバージニア級ブロックVの平均工期は70ヶ月台後半ではなく100ヶ月を超えており、2026会計年度の造船予算書の中でブロックV1番艦のオクラホマは起工から引き渡しまでに105ヶ月、2番艦のアリゾナは112ヶ月と言及され、ブロックVの工期は約36ヶ月遅れの平均約106ヶ月に達している。

建造遅延の原因はVPM挿入による作業量増に加え、熟練工の不足、品質不良、資材調達やサプライヤーの作業遅延、コロンビア級建造とドックを奪い合うことなどが挙げられ、引き渡しペースは2022年以降おおむね年1.1〜1.2隻で、建造ペースの年2隻達成は2028年から2032年頃へ後ろ倒しされたが、オーストラリアにバージニア級を売却することも加味すると達成しなければならない建造ペースは年2.33隻になり、トランプ政権は大統領令第14269号、海洋行動計画、防衛調達慣行の改革によって造船産業界の再工業化に取り組んでいる。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mike Wilson

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