〈注目〉トランプ関税で訴訟が多発する米国、生活費高騰で市民も悲鳴、関心高まる法廷の判断(Wedge(ウェッジ))
トランプ関税にストップがかけられるか――。米政権の関税措置巡り、被害対象の企業、自治体、人権保護団体などから訴訟が相次いでいる。訴えが認められ「差し止め令」が出たとしても、政府側の上訴は確実なため、最終的には共和党系判事多数の最高裁が難しい判断を迫られることになる。
トランプ大統領が「解放の日」と銘打った去る4月2日以来、世界各国相手に次々に打ち出した相互関税、追加関税措置は、(1)1962年通商拡大法(Trade Expansion Act〈TEA〉)(2)74年通商法(3)76年国家非常事態法(National Emergencies Act〈NEA〉)(4)1977年国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act〈IEEPA〉)の四つのすべて、あるいはいずれかを法的根拠にしている。 まず、「貿易拡大法」は、ジョン・F・ケネディ政権当時、国際貿易促進による恩恵を国内産業界に幅広くもたらす目的で制定されたもので、その際、競争にさらされ被害をこうむる企業および労働者に対する特別助成・救済条項が議会審議で盛り込まれた。 今回、トランプ政権は去る4月14日、同法のうち、「国家安全保障に損害を与える恐れのある輸入品」を制限する権限を大統領に賦与すると規定した「第232条」に基づき、医薬品および医薬品原料、半導体および半導体生産機器について、商務省産業安全保障局に対し「国家安全保障上の脅威の実態」の調査を指示した。 その際、通常なら「第232条」は実態調査期限を「270日以内」としているが、大統領はハワード・ラトニック商務長官に対し、「早急な調査完了」を命じているため、早ければ月内にもこれらの外国製品に対する追加関税措置を発表するとみられる。 「第232条」関連ではすでに3月、銅、木材および木材製品に対する関税が課せられている。 「1974年通商法」はとくに「第301条」で、米国貿易に不利益となりかねない諸外国による「不公正な貿易慣行」監視権限を通商代表部に与えたもので、法律制定以来、日本などを含め「不公正取引」の疑いをもたれた輸出国に対し、是正措置の要求、輸入制限措置がとられてきた。トランプ第一次政権が発足した2017年以降は、主として中国、欧州連合(EU)、ベトナムなどに対する関税が課せられてきた。 しかし、第二次トランプ政権が関税措置の法的根拠として最も多用しているのが、「1977年国際緊急経済権限法」(IEEPA)にほかならない。 「IEEPA」は前年の76年に制定された「国家非常事態法」(NEA)に付随して、国際貿易面で米国にとって「異常かつ甚大な脅威(unusual and extraordinary threat)」に対処する権限を大統領に賦与することを明記し、77年12月、議会承認をへてカーター民主党大統領の署名で成立した。その効力は、「国家非常事態法」の規定に従い、1年ごとに更新を必要としている。