【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」(NEWSポストセブン)

 愛知県内のとある閑静な住宅街。その家のインターフォンを押すと、「はい」と応答する中年女性の声が聞こえてきた。その女性は学生当時、安福容疑者の親友で、悟さんが想いを寄せていたAさんである——。  安福容疑者は取り調べに対し、「(悟さんに)子育ての大変さをわからせたかった」などと、犯行動機をほのめかす供述をしている。容疑者と高校時代の同級生だったという悟さんが、当時を振り返る。 「私は安福と同じ軟式テニス部に所属しており、彼女からは2年連続でバレンタインデーにチョコレートをもらいました。でも私は当時、安福の親友であるAさんのことが好きだったんです」  容疑者の親友Aさんは当時、バレー部に所属し、軟式テニス部のコートの隣で練習をしていた。その姿が、悟さんには眩しく映っていた。 「Aさんとは当時あまり話はしてないです。あの頃は純情だったんで恥ずかしくて。でも、Aさんへの好意を安福に伝えて付き合えないと断ると傷つけるかなと。Aさんと安福もギクシャクしますから」(悟さん)  高校を卒業後、3人はそれぞれ別の大学に進学したが、安福容疑者は浪人生活に入った。

 その時のことだ。悟さんが大学で練習中、安福容疑者がテニスコートに1人で見に来たという。何時間も練習が終わるのを待っていたから、「このまま帰すのはさすがに悪い」と、一緒に喫茶店へ行った。 「(告白に対して)きっぱり断ったら、シクシク泣き始めたもんだから。周りからは女の子に失礼なことをしたような視線を浴びるし、えらい大変な思いをしました」  ところが時期を同じくして、今度はAさんも、悟さんが別の大学で練習試合中に1人で見に来たというのだ。Aさんは大学でバレー部に所属しており、2人は偶然同じ大学に練習試合に来て鉢合わせしたらしい。悟さんが思い返す。 「たまたま僕がいるのを見つけたのか、コートの脇に1人でポツンといたんですよ。あれ? と思って。昼休みを抜け出してきたのか、Aさんが15分ぐらいいたんです。でも僕は話しかけなかった。バリバリの体育会で、僕は当時まだ1年生だったから、女の子に話しかけたりしたら先輩から怒られるでしょ。  でもAさんは僕以外の人と面識はないはずだから、僕を見に来ていたのだったら両思いだったのかなと、当時は思っていました」  それから約20年後に事件が発生した。きっかけはその5か月前に開かれた高校時代の軟式テニス部の同窓会だった。悟さんは久しぶりに安福容疑者に再会したが、その時の悟さんの近況報告が、安福容疑者の犯行動機につながったとみられている。


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 奈美子さんを殺害した安福容疑者はその後、逮捕されるまでの26年間、事件については家族や周囲には話さず、身を隠すように生きていたという。  Aさんの自宅を訪ね、安福容疑者との交流を聞くと、こう答えたのだった。 「(安福容疑者とは)幼馴染だったからよく知っているっていうか。私の結婚式には来てもらいました。年賀状のやり取りはしていましたけど」  いつぐらいまで続いていたのか。 「まあずっとやり取りはしていましたよ。途中(やり取りが)消えたりしたかもしれないですけど。電話やメールのやり取りはなかったです」  Aさんの歯切れは悪かったが、安福容疑者の犯行には驚きを隠せない様子だった。 「(事件については知らなかった?)当たり前です。私のほうがどうしてって知りたいぐらい。どうしてそんなことになったのって聞きたいぐらいですから」  Aさんはそう言ってインターフォンを切った。「どうして」というかつての親友の問い掛けは、鑑定留置中の安福容疑者に届くだろうか。 【プロフィール】水谷竹秀(みずたに・たけひで)ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。他に『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)などの著書がある。10年超のフィリピン滞在歴を基に「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材を続け、ウクライナでの戦地ルポも執筆。

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