「ヘリで取り締まりします!」 県警が"本気の取締り"を実施! 超・迷惑な「重量オーバートラック」を地上×上空の"すごい連携プレー"で「徹底排除」! 「違法過積載車」取締り強化 茨城

 トラックやダンプ、トレーラーなどの貨物車両では、荷物を積める上限を定めた「最大積載量」が決まっています。

 これを1kgでもオーバーした状態を「過積載(オーバーロード)」といいます。道路交通法や道路運送車両法に抵触する、れっきとした違反で、罰則の対象となります。

 過積載は、単にルールを破っているという事実だけでなく、運転時に大事故を起こすリスクが急激に高まり、周囲の交通に危険を及ぼします。

 最大のリスクが「ブレーキが効かなくなること」です。

 重量がかさめばブレーキが効きにくくなるのは物理の法則上、当然ですが、最大積載量の何倍、何百kg以上という重大な過積載状態では、その「停まりにくさ」は合法状態とは比べ物にならないレベルになります。

 全日本トラック協会によれば、80km/hで走行中の10トントラックが、最大積載量上限の10トンを積んで合法状態で走っている場合、制動距離は50.3m。しかし、たった8トンの過積載(18トン積み)でも、70.3mも延長。

 距離にして電車1両分、大型トラック2台分にあたる20mと相当です。

 そんな状態で、人が飛び出してきたら、前のクルマが急に停まったら、「本来停まれたであろう地点」から遠くまでオーバーランすることになり、重量増による大きな衝突エネルギーの増加を伴って突っ込んでいきます。

 過積載をしていなければ停まれた、あるいは軽い物損で済んだものが、大事故を招くことになるのです。

 事故までに至らなくても、過積載により「運転時の操縦性の低下」と「トラックの致命的な故障」を招きます。

 数百kgオーバーの過積載では、荷台が異常な重さになり、荷重が崩れます。結果、カーブでは想定以上のGがかかり、横転・転覆したり、カーブが曲がりきれなくなります。駆動輪のリアが重くなり、スリップする可能性もあります。

 さらに商売道具たる車両にも、想定をはるかに超える重量増加がじわじわとダメージを与えます。タイヤも偏摩耗を起こし、重さの影響とともにブレーキが効かなくなり、雨の日はスリップします。

 ボディやシャシ、サスペンションには金属疲労を与え、最悪は折損して、即走行不能になります。重くて加速しないことで、目一杯アクセルを踏んで燃費が悪くなり、エンジンの重故障も引き起こしかねません。

 そして、過積載車が通行することで、道路の舗装や橋脚、高架などの構造物にもダメージを与えます。補修のための道路工事を行い、不便を強いられるとともに、本来は必要なかった道路修理で、貴重な税金が投入されます。

 事故になると、事故自体の責任に加え、過積載をしていた事実に対し厳しい追及がなされます。法律を守っていないことから、保険が下りない可能性もあり、結果として大損害になります。

 過積載状態で運行させた会社にも責任が及び、社名の公表などで取引先からの仕事を打ち切られるなど、社会的な制裁も受ける可能性があります。

 さて、茨城県警では近年、過積載の取り締まりを強化しており、大型車の通行が多い主要国道を中心に、白バイや覆面パトカーなどを使って、直接過積載疑いのクルマを1台ずつ調べているほか、抜き打ちで重力測定所を設け、その場で検挙しています。

 さらに、県警のヘリコプターも活用しているといいます。交通機動隊の隊員が同乗し、上空から荷台の状態をカメラで監視。過積載疑いの車両を見つけると、すぐに地上の白バイやパトカーへ連絡し、停止命令を下してチェックしています。

 現在、産業廃棄物の運搬に関して特に目を光らせており、県と合同の捜査で、過積載を行った荷主の正体や産廃の出どころ、行先の特定を進めています。

 同警は「効率重視より、交通事故防止!」と呼びかけています。

※ ※ ※

 過積載は依然として全国的になくなっていません。その背景には、ドライバーや運送会社に仕事を依頼する“荷主”の立場が非常に強いことがあります。

 ドライバーや運送会社がルールを守ろうとしても、コストを削りたい荷主が「重量オーバーしても運べ」という圧力を与え、仕方なくそれに応じる形になっているのです。

 そうしたことから、2014年には制度が改正。

 過積載などの違反行為が見つかった時、ドライバーや運送会社だけでなく、原因をさかのぼって調べられ、もし荷主が過積載に関与していた場合、荷主に対して即刻改善要求と荷主名の公表などが実施される「荷主勧告」が発動されやすくなりました。

 今後、過積載の“諸悪の根源”となっている荷主に対し、厳しい視線が向けられるようになります。

関連記事: