「JavaScript」の商標をOracleから開放するよう求めた審判で無関係な「Node.js」の画像が証拠として使われた件に当事者が反発
プログラミング言語「JavaScript」の商標を保有しているOracleに対し、多数のエンジニアらが商標の取り消しを求めた審判で、Oracleは第三者が立ち上げたプロジェクトの画像を商用利用の証拠として提出しました。この点について当該プロジェクトの当事者が「Oracleの行為は欺瞞(ぎまん)的である」と指摘していたのですが、当局はこの主張を証拠不十分で却下しました。
JavaScript™ Trademark Update | Deno
https://deno.com/blog/deno-v-oracle4 JavaScriptはOracleが商標を保有していますが、JavaScriptという言葉は一般的な用語として広く認識されているとして、エンジニアら1万4000人以上の署名をもって商標を開放するよう求める運動が展開されています。JavaScriptの実行環境である「Deno」や「Node.js」を開発したライアン・ダール氏らが申立人となり、「1:一般名称化」「2:詐欺」「3:放棄」の3点を申し立ての根拠としています。
・1:JavaScriptは汎用的である
「JavaScript」という用語は、プログラミング言語の一般的な名前になりました。これは、Oracleとはまったく関係ない場所で、世界中の何百万もの開発者や組織によって使用されています。法律により、一般名称となった商標は商標のままではいられません。JavaScriptはブランドではなく、現代のプログラミングの基礎です。・2:Oracleは過去に虚偽の申請をした
Oracleは2019年にJavaScriptの商標を更新した際、Oracleとはまったく無関係な、ダール氏が立ち上げたプロジェクト「Node.js」のスクリーンショットをUSPTOに提出しました。Node.jsをOracleの「商用利用」の証拠として提示することは、商標法の完全性に違反します。USPTOが商標を更新するためにこの虚偽の証拠に依拠した場合は、商標の更新が無効になる可能性があります。・3:商標は放棄された
Oracleは長年にわたり「JavaScript」という名前で重要な製品やサービスを提供していません。アメリカの法律では、3年連続で使用されていない商標は放棄されたものとみなされ、Oracleの不作為は明らかにこの基準を満たしています。「JavaScript」の商標を持つOracleが商標の開放を求められるも「自主的に取り下げるつもりはない」と拒否 - GIGAZINE
2025年6月18日、商標審判・控訴委員会(TTAB)は、上記のうち「詐欺」の主張を却下しました。TTABは、「詐欺の主張が法的に十分ではない」と指摘しています。 申立人には、詐欺の主張を修正して再提出する機会が認められ、2025年7月8日までに修正申立書を提出することが許されています。 この判断についてダール氏は異議を唱えましたが、詐欺の主張を修正すると申し立ての進行が数カ月遅れてしまうとして、修正はしない方針です。
ダール氏は「JavaScriptが商用利用されているということを証明するために、Oracleは無関係なNode.jsのウェブサイトの画像を提出し、アメリカ特許商標庁を故意にだまそうとしました。Node.jsの創始者として、この行為は特に許しがたいものです。Node.jsはOracleのの製品やブランドではありません。Oracleはそれを開発せず、運営せず、商用利用の証拠として使用する権限もありませんでした。第三者のオープンソースサイトを証拠として提出したことは、彼らがもっと良い証拠を持っていなかったことを証明しています」と指摘しました。 ダール氏は、本件の本質は詐欺ではなく、JavaScriptを開放すること(一般名称化と放棄)にあるとして、詐欺の主張は修正せず、申し立てを続行することにしました。Oracleは2025年8月7日までに一般名称化及び放棄に関する主張を認めるか否かを回答しなければなりません。 ダール氏は「この取消しに勝訴するか、Oracleが正しいことを行い商標を開放すれば、JavaScriptは自由になります」と述べました。
インターネットユーザーは「Oracleはエンジニアリング部門より法務部門の方が規模がデカい」と揶揄しています。
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