王女が霊媒師と結婚、連れ子の性犯罪、王太子妃の難病――。苦境に立つノルウェー王室の唯一の希望とは(AERA DIGITAL)|dメニューニュース
■ルイーセ王女が自称・霊媒師との結婚
今年9月、ネットフリックスは「レベル・ロイヤル:世間を揺るがせたラブストーリー」として、ノルウェー国王のハラール5世(88)の長女マッタ・ルイーセ王女(54)の結婚までの顛末を描いたドキュメンタリー番組を公開した。
ルイーセ王女が結婚したのは昨年8月31日。お相手は、アメリカ・カリフォルニア州出身のデュレク・ベレット氏(50)だ。王女は2002年にノルウェー人の小説家と最初の結婚をして娘を3人もうけたが16年に離婚。今回は再婚となる。
ドキュメンタリー番組によると、ルイーセ王女の再婚は当初から物議をかもしていた。それは、ベレット氏がシャーマン(霊媒師)を名乗っているからだ。ノルウェーは個人の自由を尊重する国ではあるが、さすがに国民は驚愕、交際が明らかになった当初から「彼は王女を洗脳したのか」「彼の本当の目的は何か」との疑問が渦巻いていた。
ルイーセ王女は「子どもの時から天使と交信できた」そうで、友人の勧めでベレット氏に連絡を取ったのが2人の出会いだ。メディアはベレット氏が過去に「私は古代エジプトのファラオだ」「爬虫類とアンドロメダのハイブリッドである」などと発言していることを暴露してきた。
2025年8月26日、ノルウェーでイベントに出席したハーラル国王(中央)、ソニア王妃(右)、メッテ=マリット王太子妃(左) (photo アフロ)■ノルウェー王室の支持率が急速に低下
今回公開されたドキュメンタリー番組では、ベレット氏は「みんな黒人のトランスジェンダーの霊媒師が嫌いなんだよ」と発言。20代で腎不全を患い、姉から腎臓提供を受けたものの、最近はその腎臓も悪化し、人工透析を受けながら新たな移植を待つ状態である。人々からは「シャーマンなら自分で治せば」と突き放されたことも告白している。でも「霊から力をもらうから頑張れる」のだという。
また、ルイーセ王女はベレット氏が金遣いが荒いことを示唆した。サングラスはいくつ持っているか分からないほどの数だと言う。
この結婚騒動でノルウェー王室の支持率は急速に落ちた。高齢の国王は2人の結婚について、「アメリカ人は王室を理解できない」と批判していたが、結婚式には参列、前夫を自死で失ったルイーセ王女の「これ以上の幸せはない」との選択を認めざるを得なかった。
2015年5月17日、建国記念日にロイヤルファミリーの一員としてカメラに収まったホーコン王太子(後列左)、マリウス氏(後列右)、 メッテ=マリット王太子妃(前列左)、イングリッド・アレクサンドラ王女(前列中央)、スヴェレ・マグナス王子(前列右)(photo アフロ)■麻薬パーティーに参加していた王妃
さらに、ルイーセ王女の弟であるホーコン王太子の妻メッテ=マリット王太子妃(52)の連れ子であるマリウス・ボルグ・ホイビー氏(28)の犯罪も、国民に大きなショックをもたらしている。マリウス氏は昨年、2件の性的暴行の容疑で逮捕され、さらに今年レイプなど計32件の罪で起訴された。判決は来年に言い渡される。
ホーコン王太子とメッテ=マリット王太子妃の結婚もまた、当時は物議をかもしたことで知られる。
メッテ=マリット王太子妃は、10代で両親の離婚をきっかけに麻薬パーティーに加わるようになり、麻薬常習者で服役歴がある男性の子どもを妊娠。それがマリウス氏だ。男性が去った後はウエイトレスとして働きながら、マリウス氏を育てた。一方で、猛勉強の末に名門オスロ大学に入学。学生時代に出向いたロックフェスティバルでホーコン王太子と出会って意気投合し、同棲を始めた。
ノルウェー国民は彼女に批判的だった。結婚前の記者会見でメッテ=マリット王太子妃は、「過去は変えられないが、未来は変えられる」と涙ながらに国民に謝罪、過ちを認めた。真摯な姿勢が国民の胸を打ち、「間違いをしたことがない人など、いるだろうか」と結果的に2人の結婚を祝福したのだった。
01年の結婚式では当時4歳のマリウス氏はホーコン王太子に抱っこされてバルコニーに登場した。マリウス氏には王位継承権はないものの、ロイヤルファミリーの一員として迎えられ、ホーコン王太子やその後に産まれた妹と弟とも仲は良かったそうだ。けれど、「家庭内の孤独」とメディアの注目を浴び続ける生活に苦しみ、20歳の時には公の場からは身を引くと発表。アメリカに留学し、いくつもの職にトライを続けていた。そんななかでの複数の深刻な暴力事件だった。
■メッテ=マリット王太子妃は進行性の難病に罹患
メッテ=マリット王太子妃は母親として大きなショックを受けているはずだが、自身の体調もすぐれない状況が続いている。以前から完治が難しい進行性の病気である肺線維症を患っているとして、治療に専念するため、10月の公務はすべてキャンセルされた。
王女の霊媒師との結婚、連れ子の性犯罪、王太子妃の難病――。ノルウェー王室の苦しみは続く。ネットフリックスの番組では、ハーラル国王が「それでも、続けて行かないといけない」とつぶやいたのが印象的だ。
2025年7月4日、アメリカ移民200周年の記念式典に参加した(左から)イングリッド・アレクサンドラ王女、メッテ=マリット王太子妃、ホーコン王太子(photo アフロ)■期待の王女はサーフィン好き
希望は、将来女王に即位するイングリッド・アレクサンドラ王女(21)だ。ノルウェーでは1990年の憲法改正により男女の区別なく第一子が王位継承一位になるため、王女の即位は確定している。
イングリッド・アレクサンドラ王女はサーフィンに長け、ジュニア・チャンピオンに輝いたこともある快活な女性だ。現在はオーストラリアのシドニー大学に留学中だが、応援する声と同時に「ノルウェ―から遠すぎる」と公務から離れたことを寂しく思う声も上がるほど、国民に人気がある。将来、悩み多きノルウェー王室を支えていくことが期待されている。
(ジャーナリスト・多賀幹子)