「袴はご遠慮ください、お願いしましたよね?」小学校の卒業式。止まらない「袴」着用と保護者の「逆ギレ」という地獄【専門家解説】(FORZA STYLE)
「先生、どうしてうちの子の袴を直してくれなかったんですか! 晴れ舞台が台無しです!」 2026年3月下旬、都内のある公立小学校。卒業式の閉式直後、高揚感に包まれるはずの教室で、担任の佐藤先生(仮名・31歳)を待っていたのは、涙ながらの感動や感謝ではなく、怒り狂った母親の糾弾でした。 原因は、女子児童が着用していた「袴」の着崩れでした。式が始まる直前、慣れない和装でトイレに駆け込んだ児童は、帯を緩め、裾を乱したまま入場。式の最中、座る・立つといった動作を繰り返すうちに袴は無残にずり落ち、集合写真に写ったのは、だらしなく着崩れた哀れな姿でした。 「学校側は、1年前の4月と年明けの1月の保護者会で、『卒業式の袴、着物の着用はご遠慮ください』ときちんとお願いしていたんです。理由は明確です。公立小学校のトイレの多くはまだ和式が残り、 子供一人で和装を捌き切ることは不可能だからです。さらに、着崩れを直せる教員数も数少ないのが現実です。だからこそ、事前に何度もお願いしていたはずでした...」 しかし、佐藤先生の願いは虚しく、卒業生120人のうち約3割が、色鮮やかな袴姿で現れました。文部科学省「学校行事における服装の現状(2025年度推計)」によれば、公立小学校での和装着用率は、ここ数年高止まりしており、それに伴う「着崩れトラブル」の相談件数は前年比1.8倍に跳ね上がっています。 佐藤先生を責め立てる母親は、こう言い放ちました。 「一生に一度の思い出ですよ? 先生なら少し気を利かせて、トイレの後で帯を締め直してあげるくらい、当たり前じゃないですか。子を思う教育者としての配慮が足りないんじゃないですか!」 危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、この「モンスター化する保護者心理」をこう解説します。 「今の保護者にとって、SNSでの『映え』は教育方針よりも優先されます。『学校が禁止していても、みんな着ているから大丈夫』という集団心理と、『高いレンタル料を払ったのだから、完璧な状態で式に出る権利がある』という消費者意識の暴走です」 学校が昨年4月と今年1月に発した「お願い」は、もはや紙クズ同然です。佐藤先生の手元に残ったのは、子供たちの成長への感動ではなく、理不尽な怒声への恐怖と、乱れた袴を必死に直そうとして、式典の進行を遅らせてしまった生徒という深い徒労感だけでした。 また、袴を着る・着ない生徒たちの間でも、不要なマウント意識が起きているのも事実です。一部の地域の卒業式は「門出の場」から、保護者の承認欲求がぶつかり合う「戦場」へと変貌しています。 【関連記事】「私も袴を着たかった...」逆ギレする親とマウントを取る子供たち。この「袴格差」を誰が止める? ※写真はイメージです 【取材・文】 吉久顕彰 【取材協力】 平塚俊樹:危機管理コンサルタント 【写真】Getty Images 【出典元】 文部科学省「学校行事に関する実態調査(2025年版)」、名古屋市教育委員会「卒業式の服装に関するアンケート」