【ダークマターの塊を発見?】歪んだ光の輪に潜む“暗い塊”1000万太陽質量のダークマターのかけらか(スペースチャンネル)

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アインシュタインリングの輝く電波アーク内に潜む隠れた「暗黒天体」出典:Keck/EVN/GBT/VLBA

宇宙のどこかで、見えない“影”が光を歪めている——。天文学者たちは、地球から約100億光年離れた銀河の光の輪(アインシュタインリング)の中に、史上最小の「暗い物体(ダークオブジェクト)」を発見しました。これは、私たちの宇宙に満ちる“見えない物質=ダークマター”の正体を探る大きな手がかりになる可能性があります。

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■ 光を曲げる“アインシュタインリング”とは?

重力レンズ効果 出典:ESA/Hubble & NASA

発見の舞台は、「B1938+666」という名前の銀河系システムです。ここでは、遠方の銀河から放たれた光が、手前にある別の銀河の重力によってぐるりと曲げられ、光の輪のように見える現象が起きています。これは「重力レンズ効果」と呼ばれ、1915年にアインシュタインの一般相対性理論で予言されて以来、宇宙観測の最前線で重要な役割を果たしてきました。

光が完全に一直線上に並ぶと、きれいなリング状に見えますが、少しずれると十字形やジグザグ、さらには疑問符のような形にもなります。B1938+666もその一例で、1990年代から知られていましたが、今回の新しい観測でその“歪み”の奥に隠れた謎の存在が明らかになったのです。

研究チームは、世界各地の電波望遠鏡を組み合わせ、地球サイズの仮想望遠鏡として観測を実施しました。その結果、リングの一部にわずかな“くびれ”のような歪みが見つかりました。オランダ・フローニンゲン大学の天文学者ジョン・マッキーン氏はこう説明します。

「最初の高解像度画像で、重力アーク(光の帯)の幅が狭まっているのが見えた。それは何かがその部分で重力を加えている証拠だった。」

分析の結果、この揺らぎを生んでいたのは、太陽の100万倍の質量を持つ“暗い塊”であることが判明。これは、これまで重力レンズ効果で観測された中で最も小さな質量の天体です。

■ 見えない「暗黒物質(ダークマター)」の候補

アインシュタインリングの輝く電波アーク内に潜む隠れた「暗黒天体」出典:Keck/EVN/GBT/VLBA

この謎の天体は光を放たず、望遠鏡にも映らないことから、“ダークマターの塊”である可能性が高いと考えられています。ダークマターは、宇宙全体の約27%を占めるとされる“見えない物質”で、光や電磁波とはほとんど相互作用しません。重力レンズ効果は、この見えない物質を“間接的に可視化”できる数少ない方法の一つです。

今回のように孤立した小さな塊を見つけることは、「冷たいダークマター理論」の検証にもつながります。この理論では、ダークマターは速度が遅く、弱いエネルギーしか持たないため、ゆっくりと重力で集まり“塊”を作ると考えられています。

今回の研究で使われた解析技術は、これまでにないほど高精度なものでした。

これまでに、同規模のダークマター候補はわずか3例しか見つかっていません。しかし、今回の観測も踏まえ、この“暗い塊”のような構造は宇宙のあちこちに存在する可能性が高いと考えられています。特に、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)はアインシュタインリングの発見数を飛躍的に増やしており、次なる“暗黒の影”を見つけ出す可能性が高まっています。果たしてこの暗い塊の正体は一体何なのか?ぜひ皆さんからのコメントお待ちしています。

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