第三者の精子提供で誕生 「出自を知りたい」…当事者の思いは
第三者の精子や卵子の提供で生まれた子どもの「出自を知る権利」に関わる法案が国会に提出されましたが、審議入りすることなく、22日閉会を迎えます。長年、法制化が望まれてきた一方で、見直しを求める声も大きかった法案です。当事者の思いを取材しました。20代の、アオイさん。父親が無精子症で、第三者からの精子提供により生まれ、中学3年生のある日、その事実を母親から知らされました。「あの時の気持ちって一番衝撃が大きくて」「事実を知ったからといって親に何の遠慮もなく聞くことってできなくって」想像もしていなかった父親とは別の精子提供者の存在。当時、心の支えとなったのは、同じく第三者の精子提供で生まれた3歳年下の妹でした。「(精子提供者について)一緒に想像し合うといいますか」「もしかしたら私はこっちの(体の)部位が提供者と似てるかもって」日本では、第三者の精子提供による人工授精は1948年に慶応大学病院で初めて実施され、これまで1万人以上の子どもが生まれたとされています。現在はいくつかの医療機関で実施されているものの、ほとんどの提供が“匿名”で行われてきた背景があり、親も、生まれた子どもも、提供者を知ることはできません。「本音を言うとするならば、もちろん(提供者について)知りたいです。自分のルーツとなる人っていうのがどんな人なのか」「私はその提供者の方がいてくれなかったら今ここにいないので」「本当に感謝をしているので」こうした、第三者の精子や卵子提供で生まれた子どもの「出自を知る権利」をめぐっては、厚労省の専門家の部会が20年以上前に法整備の必要性を指摘したものの、事実上、放置されてきました。今年2月、ようやく与野党の4会派が議論をまとめ、法案を提出。ところが…法案の内容が不十分だなどとして、見直しを求める声が相次ぎました。法案では、提供者の情報が請求できるようになるのは生まれた子どもが18歳になってから。開示される内容も身長・血液型・年齢などに限るとされ、名前などの個人の特定につながる情報は、提供者の同意があった場合のみ開示される仕組みでした。アオイさんも提供者について得られる情報が少なすぎると法案に落胆したといいます。「(提供をうけ)生まれてきた子どもたちってもう何十年も苦しんでて」「むしろ(個人を)特定されない情報の中に提供者の個性であったりとかそういうものが含まれてくるのであれば(法案に)希望はあるのかなと」「自分がどんな人間から生まれてきたか、本当にそれだけ知りたい」
また、先送りとなった法整備。当事者たちの気持ちに寄り添い、実態に合った仕組み作りが求められています。