【そもそも解説】脳卒中とは? 年10万人が死亡、10月は啓発月間
毎年10月は脳卒中月間、10月29日は「世界脳卒中デー」です。年間20万人あまりが脳卒中を発症し、150万人以上が治療を続けています。脳卒中とはどのような病気なのか、原因や治療、予防法を解説します。
Q 脳卒中ってどんな病気?
A 脳の血管に障害が起きることで生じる三つの病気の総称だ。「卒中」には「突然起こる」という意味がある。推計で年間20万人あまりが新規に発症し、150万人以上が治療を続けている身近な病気だ。治療が遅れると重い後遺症や命の危険につながることもあるので、迅速な対応が求められる。
Q 三つの病気とは?
A 脳梗塞(こうそく)、脳出血、くも膜下出血だ。脳の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血・くも膜下出血に分けられる。
脳梗塞は、脳の血管が血栓などで詰まり、その先の脳組織に血液が行き届かなくなり、脳の組織が機能しなくなってしまう。脳出血は、脳内の細い血管が破れて出血し、その血液が脳の組織を圧迫、破壊する。くも膜下出血は、脳の表面にある太い血管にできたこぶ(動脈瘤(りゅう))が破裂して、脳とくも膜の間に出血が広がる。
Q 原因は?
A 脳卒中には様々な危険因子(かかりやすい要因)がある。最大の危険因子は、加齢と高血圧だ。主な危険因子としてほかに、糖尿病や脂質異常症、不整脈(心房細動)、喫煙、飲酒があげられる。
Q 予防はできる?
A 生活習慣病をコントロールすることが最大の予防になる。高血圧の治療や定期的な血圧の測定、塩分を控えて野菜や魚を中心にしたバランスの良い食事、適度な有酸素運動、禁煙と適量の飲酒、糖尿病や脂質異常症など基礎疾患の管理も重要だ。年齢とともに動脈硬化は進むため、脳卒中は、特に高齢者は誰にでも起こり得る。
Q 発症すると、どんな症状が出る?
A 損傷を受けた脳の部位に応じて、出る症状は異なる。代表的な初期の症状と迅速な行動を呼びかける合言葉「ACT-FAST」がある。
▽Face(顔)顔の片側が下がって動かない
▽Arm(腕)片側の腕に力が入らない
▽Speech(言葉)ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない
▽Time(すぐに)救急車を呼ぶ(ACT)
そのほかにも、くも膜下出血では経験したことのない激しい頭痛が起こることがある。
Q 早期の発見、治療が大切なのはなぜ?
A 脳卒中の治療は時間との戦いと言われる。脳梗塞では、詰まった血栓を点滴薬で溶かす「t-PA療法」は、発症から4.5時間以内に開始する必要がある。治療が早いほど脳へのダメージを抑えて、後遺症を軽くできる可能性がある。
Q 亡くなる人も多い?
A がん、心疾患、老衰についで日本人の死因の第4位だ。かつては死因の第1位だったが、救急医療や治療法の進歩により、1970年代から大幅に減少傾向にある。ただ、現在も年間約10万人が脳卒中で亡くなっている。
Q どんな後遺症が残ることがある?
A 損傷を受けた脳の部位によって異なり、目に見えるものもあれば、目に見えないものもある。
手足のまひや筋力の低下、言語障害、認知機能の低下などが起こることがある。失語症や記憶障害、注意障害といった高次脳機能障害は、外見からは判断しづらく、周囲から理解されにくいため「見えない障害」とも言われる。
Q 発症後の生活にも影響がある?
A 厚生労働省の調査によると、脳卒中は要介護4や要介護5となる原因の第1位になっている。認知症や骨折・転倒とならんで、寝たきりになるなどその後の生活に大きな影響を与えやすい病気だ。だからこそ、予防と早期発見、リハビリテーションの継続が重要になる。
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この記事を書いた人
- 神宮司実玲
- くらし科学医療部|医療担当
- 専門・関心分野
- 医療、健康