イランの報復攻撃にさらされるイスラエル、観光客4万人が足止め

 6月15日、イランとイスラエルの衝突の激化で、イスラエル国内には約4万人の国外観光客が足止めされた状態になっている。エルサレムの旧市街で13日撮影(2025年 ロイター/Ammar Awad)

[エルサレム 15日 ロイター] - イランとイスラエルの衝突の激化で、イスラエル国内には約4万人の国外観光客が足止めされた状態になっている。航空会社は運航を中止しており、旅行者は事態の収拾を待つか、近隣諸国を経由して高額な迂回ルートを取るかの選択を迫られている。

イスラエルは13日早朝、イランへの奇襲攻撃を開始し、国内の空域を閉鎖。国民らには、現在いる場所に留まるよう呼びかけた。イスラエル観光省によると、これにより約4万人の観光客がイスラエルから出国できなくなっている。

米カリフォルニア州出身のジャスティン・ジョイナーさんは、ネバダ州に住む父ジョンさんと息子と共にエルサレムで休暇を過ごしていた。イスラエルがパレスチナ自治区ガザで武装勢力ハマスへの攻撃を続けていることから、何らかの混乱が生じる可能性は予想していたという。

しかし、ほとんどの地元住民と同様に、新たな戦争の勃発は全く想定していなかった。

「イスラエルがイランを攻撃するとは予想していなかった。これは全く次元の違う緊張だ」と、ジョイナーさんは滞在先の東エルサレムのホテルから取材に答えて語った。この2晩、イランの弾道ミサイルが隕石の雨のようにこの地区の上空に飛来してきた。

「上空で迎撃ミサイルの衝撃波を感じ、家族を防空壕に避難させるのは不安なことだ。アメリカではそんなことは考えられない」とジョイナーさんは語った。

オハイオ州クリーブランド在住で、看護研修プログラムのためにエルサレムに滞在していた医師のグリア・グレイザーさんは、サイレンが鳴るとホテルの10階から階段を駆け下りて避難所に急がなければならない。13日以降、こうしたサイレンが定期的に鳴っている。

「安全だと感じている。でも、深い眠りから起こされて安全な場所に急がなければいけないのが一番辛い。家族は死ぬほど怖がっている。彼らは24時間ずっと攻撃が続いていると思っているようだが、実際は違う」と、グレイザーさんは話した。

<ヨルダンルート>

グレイザーさんは6月29日に帰国予定だったが、出発を前倒しすることを検討している。最も容易な脱出ルートは、隣国ヨルダンへ陸路で渡り、日中の運航を続けているアンマン空港から飛行機で出発することだ。

イスラエルのメディアは、中止となったテルアビブのゲイ・プライド・パレードに参加するため12日にイスラエルに到着したばかりのトランスジェンダーの米国人インフルエンサー、ケイトリン・ジェンナーさんがヨルダン経由で出国したと報じた。

数時間前、彼女は防空壕で赤ワインを飲んでいる姿を写真に撮られていた。「安息日を祝うのに、こんな素晴らしい方法があるなんて」と、彼女はXに綴った。

誰もが出国を急いでいるわけではない。

カレン・トゥーリムさんは、テルアビブに住む娘に会うためにロンドンから訪問していた。「ここに来てから2日も経たないうちに、イスラエルがイランを攻撃した。動けなくなってしまった」と、トゥーリムさん。

エルサレムとは異なり、テルアビブはイランのミサイルの直撃を受けた。トゥーリムさんはホテルのシェルターへに断続的に避難せざるを得なかったが、安全だと感じ、娘のそばにいることができて良かったと話す。

「個人的には、ロンドンでニュースを見て娘のことを心配するよりも、ここにいる方が安心できる。だから今のところは大丈夫だ」

イスラエル観光省は足止めされた旅行者のために、英語とヘブライ語で24時間対応のバーチャルヘルプデスクを設置した。

しかし、すべての博物館は一時閉鎖され、エルサレム旧市街への立ち入りは居住者以外には禁止されており、多くの商店は閉まったままとなっている。

「通りも店も閑散としている」とエルサレム在住のアンワル・アブ・ラフィさんは語った。

「人々はこの暗闇の中で何か良いものを見つけようと、小休止を切望している。私たちは、未来はより良くなるだろうと自らを欺いているのだ」とラフィさんは話した。

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