iD決済は時代遅れ?クレカのタッチ決済拡大の裏でiD機能が順次削減の見込み(スマホライフPLUS)
iDやQUICPayなど基盤技術であるFeliCaとNFCタッチ決済の違いについてあらためて整理しましょう。 ■利用者視点の利便性の違い
FeliCaは、ソニーが開発した日本独自の非接触ICカード技術規格です。最大の特長は、約0.1秒という非常に高速な処理速度であり、これは特に日本のラッシュ時の鉄道改札など、瞬時の処理が求められる環境で大きな強みを発揮してきました。 FeliCaは、おサイフケータイの登場とともにモバイル決済の普及を牽引し、長年にわたり日本のキャッシュレス決済市場を支えてきました。iDはNTTドコモが、QUICPayはJCBがそれぞれ主体となって展開し、多くのクレジットカード会社が自社カードにこれらの機能を搭載してきました。 しかし、日本国内では圧倒的な普及度を誇りますが、FeliCa規格は日本とアジアの一部地域に限定されており、国際的な汎用性には欠けます。FeliCaチップの製造コストやライセンス料が、NFC Type A/Bと比較して高めであるとの指摘もあり、こうした点が海外での広がりを阻害してきた可能性は否めません。 ■カード会社及び加盟店視点での違い
一方で、NFC Type A/BはVisaのタッチ決済やMastercardコンタクトレスの基盤技術です。海外で発行される多くのクレジットカードや、パスポート、運転免許証、マイナンバーカードのICチップなどにも採用されており、グローバルでの互換性が高いのが特徴です。 世界中で同じ端末で利用できる可能性が高く、インバウンド・アウトバウンドの両方で利便性が高いと言えるでしょう。 また、一般的にNFC Type A/B対応のチップやリーダーライターは、FeliCa対応のものと比較して安価だとされています。これにより、カード発行会社や加盟店にとって導入・運用のコストを抑えやすくなります。
Visaのタッチ決済やMastercardコンタクトレスではNFC Type A/Bが採用されています。これらのタッチ決済が拡大する裏で、三井住友カードがiD機能のカード搭載を順次終了するのは「FeliCa離れ」と言えるかもしれません。 iD搭載の停止とともに、全カードをタッチ決済対応にする方針は、明確にNFCタッチ決済を重視する姿勢を示しています。これは、顧客の利便性向上だけでなく、カード発行やシステム維持に関わるコスト、国際的な標準化への対応といった経営戦略上の判断も含まれていると考えられます。 ■FeliCa離れは今後も進む? NFCタッチ決済の波が押し寄せる中、長年日本の非接触決済を支えてきたiDとQUICPayは今後どうなるのでしょうか。まずNTTドコモは、カード会社によるiD離れの動きに対して「引き続きニーズは高い」と反発する姿勢を見せています。 一方、JCBは、QUICPayが2025年4月に誕生20周年を迎え、会員数が3,000万人、利用可能カ所も300万カ所以上に達したことをアピールしており、今後もサービスの提供に取り組む姿勢を示しています。 とはいえiDもQUICPayも同様に、NFCタッチ決済の急速な普及という大きな潮流の中で、独自のポジションをどのように維持・発展させていくかが課題です。NTTドコモ、JCBともに、長年培ってきたFeliCaベースの決済インフラと顧客基盤を活かしつつ、国際標準化の波にどう対応していくのか、その戦略が今後の日本の決済市場の行方を左右する一因となるでしょう。 ■クレジットカード本体からiD機能がなくなった後、iDを使い続けるには? カード本体にiD機能がなくなっても、Apple PayやGoogle Payにカードを登録すれば、スマートフォンでiD決済を利用できます。また、iDのみが搭載されたiD専用カードを新たに申し込む方法もあります。 とはいえ「スマホで簡単に決済したい」ということがあくまで目的の場合、iDにこだわる意味はあまりないかもしれません。FeliCa離れが進む中では、QRコード決済やクレカのタッチ決済に乗り換えるのも一案です。
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