『ウィズダフネ』レビュー。スマホ版『Wiz』は想像以上に硬派な冒険の1.5年間だった。課金キャラもロスト可能性の“ひどい目”の連続。なのにやめられない中毒性の正体に迫る!
『ウィザードリィ』(Wiz)シリーズと言えば、“難しいけれどもおもしろい”、そんなゲームとして有名だ。私が『Wiz』シリーズを遊んだのは本作が初めてだったのだが、実際に本作を遊んでみたところ……本当に難しいしひどい目にもたくさん遭った。
ウィズダフネ』の印象的な部分でもある“プレイヤーに降りかかるひどい目”について紹介していこう。
2024年10月の配信開始から、いまもひどい目に遭いながらも遊び続けている。この記事ではそんな『
ゲームを開始すると、主人公である自分は恐ろしく強いモンスターと戦うことになる。逃げることもできず、こちらの攻撃はほとんど通じないまま、なす術もなくやられてしまう。
肉も朽ち果て、骨になるところから始まる。俺、主人公なのに。いわゆる負けイベントではあるが、やられた後にふと目を覚ますと自分はベッドにいて……というようなことはない。そのままダンジョンで倒れる。ダンジョンで倒れたまま誰かに見つけられることもなく時が経ち、
実際にダンジョンでやられたら確かにそうなるかもしれないが、オープニングからかなりハードな始まりかたである。
はそういうゲームだ。ある種、昨今流行りの異世界転生で俺TUEEEEE! と爽快感ほとばしる系ファンタジーとは真逆を突っ走るような、「死ぬときゃ死にます、人間だもの」という世界観を冒頭から提示していると言えよう。 いったん骨にはなったけども、いろいろあった末、国王を救出するために王国騎士団や自身の仲間とともに迷宮となっている”奈落”(いわゆるダンジョン)へと挑むことになる。仮面を付けている主人公は、「信用できるのか」とたびたび怪しまれたり、ぞんざいな扱いを受けることも多々ある。でもそれは仕方ない気もする。仮面をずっとつけている人物は怪しいから。王国を救う勇者というよりは、とりあえず集められたその一部にすぎないのだろう。そんな風に扱われている状況から迷宮を踏破する伝説の冒険者へと成る、それもいいじゃないか(それが本当にたいへんなのだが……)。
怪しいヤツ扱いをされがちな主人公に、やさしく接してくれる人や、よくしてくれる人もいる。ありがたい。
ダンジョンは主観視点で探索していく。 自分の足で一歩ずつ進み、ひとマスずつマップを埋めていく。構内はたいまつの明かりでつねに薄暗く、壁にドクロが掲げられていたりとモンスターが生活していそうなダンジョンの中に、敵のおぼろげな影が現れて戦闘に入る。 戦闘はコマンド選択式であり、スキルや呪文など行動を選択して発動させる。仲間が隣から呪文を放つ姿が見えたりと戦闘シーンにも臨場感がある。たとえば、自身が剣を装備していた場合、主観視点なので自分自身も敵に近づいて剣で切りつける。迫力ある場面ではあるが、敵の中には見た目がかなりおぞましいものもいる。なので自分が攻撃するたびに直視できないような怪物が画面に大きく表示されることに……。自分のターンが回って来たときに、敵に攻撃するのをためらってしまうほどだ。 のちに私(主人公)は後衛で弓を撃たせてもらうことにした。これならば距離を保ったまま敵に矢が当たったのを見るくらいで済む。前衛で気持ち悪い敵が画面いっぱいに出ると、私(現実)がダメージを受けるのでしかたない。なるべく現実的なダメージは減らしていきたい。
近づいて敵に攻撃。敵キャラクターはけっこう気持ち悪い。もっとおぞましいヤツもいるぞ。
本作が凝っていてちょっとおもしろいのは、冒険を続けていると服や顔がだんだんと黒くすすけたように汚れてくるところ。とくに前衛の仲間は敵に直接切りかかったり攻撃を受けたりしているためか、後衛のメンバーよりも早く汚れてくる。「早くきれいにしたい」、「ニオイがひどい」というようなことを仲間が言いだす。うるせえあんたら冒険者だろ。町に帰るまでしばらく辛抱してもらうしかない。
進行するにつれて顔や服がドロドロに……。仲間のひとり、アベニウスは汚れても毅然としていてさすがだ。しかし、さらに戦い続けたところ、やっぱり「連戦で体が汚い」と嘆いた。
迷宮を潜り進めるほどに、より悲惨な状況が見えてくる。先に国王救出に向かっていた王国騎士団の兵士が簡単に敵にやられてしまったり、敵の罠にかかっていたり……。「つぎはお前自身がこうなるのだ」とでも言うかのように、迷宮からの一方的で残忍なショーを見せつけられる。序盤の私では彼らをどうすることもできなかった。すまない。 ダンジョンの道中もけっしてラクではない。たとえば
- 突然、敵の奇襲を受ける。群れをなした敵が一斉に攻撃をしかけてくるので、パーティーが大きく崩されるほどのダメージを受ける。
- 宝箱を見つけた! しかし罠の解除に失敗してしまい、矢が飛んできてダメージをくらう。仲間の盗賊はもう開けたくないと言い出してしまった。
- ウサギが出てくる。迷宮にもこんなにかわいらしい生き物がいたのか……と思えば鋭い牙と爪で即死攻撃を放ってくる。もちろん主人公に向かってくることもある。
- ダンジョンの通路が迷路のようになっているのに加えて、途中で崩落が起きて行き止まりができたりと、どこに進めばいいのかわからなくなる。
など、地味なものから致命的なものまで、苦難がずらりと並ぶビュッフェのようである。 「スマートフォン向けタイトルだから誰でも遊べるように、初心者のためにもやさしくおもてなししてェ……」という安易な姿勢は、本作の場合、いっさい見せない。そこに開発陣の矜持を感じる。シビレる。ツライ。
かわいいだけのウサギがこんな迷宮にいるわけねえだろ! 牙を剥き、鋭利な爪を振るってくる。死ッ……!!
それらを乗り越え、長い通路を抜けた先にボス戦が待つ。 雑魚戦でなるべくMPやSPを温存してきたのはここで放つためである。 ここは開幕から補助呪文、攻撃呪文、攻撃スキルと各自が覚えているいちばん強力なものを全員が全力で放っていく。ボスの攻撃も思ったより激しくない、「これなら勝てそうだ」、始めはそう思う……そうして全力を出し続けてどれくらい経っただろうか。ボスはまだ倒れない。何人かの仲間は倒れてしまい、残った仲間も攻撃スキルの余力が尽き威力の低い通常攻撃を当てていくことしかできない。敵の攻撃は強く、重くなってきており、回復呪文や薬もこれが最後である。この化物はいったいどれほどの体力があるのだろうか……。 頼む! この一撃で沈んでくれ! そう思いながら攻撃を続け、これ以上の戦闘は本当に無理だ、そう思ったタイミングでついにボスが倒れギリギリの状態で撃破する……そんな場面が多い。仲間からポンと肩をたたかれお互いを称えあう。苦しい戦闘の末に手にする勝利、その達成感はとてつもなく大きい。
な……なんとか倒したぞ……。ホコリまみれの仲間が肩を叩く。心地よい痛みが走る(想像)。
死亡してしまった仲間も町に帰れば、寺院で蘇らせることができる。
課金型ゲームでキャラクターをロストする可能性があるただし成功するとは限らないようだ。失敗すると灰になる。灰の状態からさらに蘇生に失敗すると、恐ろしいことにキャラクターを完全に失うロストとなる。
というのは非常に思い切った仕様ではないだろうか。手塩にかけて育てたキャラクターもロストしてしまえば何も残らないのだ。現代のソシャゲを遊ぶ方は実感できるだろうが、課金して手に入れたキャラクターが失われるというのは……想像するだに恐ろしい。しかし、その仕様を『ウィズダフネ』は入れてくる。「俺たちは『Wiz』だぞ、舐めるなよ」と、言っているようだ。 とはいえ、メンタルが十分に回復していれば失敗することもないようで、私はロストも灰も経験したことはない。それでもこの仕組みがゲームに実装されているという事実はある。そのため仲間を寺院で蘇生する際にはいつもメンタルが最大まで回復するのを待つ。そして緊張しながら寺院の人物に蘇生をお願いする。画面には「ささやき 祈り 詠唱 念じろ!」と表示される。『Wiz』作品によっては言葉の順序が異なる場合もあるようだが、印象的な言葉であることに変わりはない。それに合わせて私も「お願いします」といっしょに祈る。誰に何をお願いしているのかは自分でもよくわからない。 閉じていた仲間の目がカッと開き、体を起こし息を吹き返す。この目がカッと開くシーンもズンッと顔がアップになるので一瞬失敗したのではないかと毎回ヒヤッとしてしまう。どうやら今回も無事にうまくいったようで何よりである。灰になることを想像しただけでも私にとっては十分に恐ろしいことである。
冒険後の宴で、仲間と酒場で落ち合うこともある。しかしここでも気は抜けない。選択肢によっては、集まった仲間からボロボロにダメ出しを受ける。
たとえば「どうすれば罠にかからず進めると思いますか?」と聞かれ、その選択肢には、
とある。 どれも正解であるような、そうでもないような漠然とした印象を受ける。いちばん嫌な予感はするが、ひとまず今回は「気にせず突き進む」と答えてみる。するとその返事として還ってきたのは以下の通りである。
「でしたら、あなただけで進んでください」、「俺をなぐさめるために言っているのか? 余計なお世話だ馬鹿め」、「何とかしてと言ったのに、その耳は飾りなの……?」。 せっかく集まった仲間から、地に落とされるような言葉を浴びせられる。辛辣だ。さっきまで命を賭していっしょに冒険をし、艱難辛苦を乗り越え、凶悪なボス敵を倒し、大きな喜びと達成感に包まれて、お互いを信頼し合えていたと思っていたのだが……。軽率な選択がここまで皆の反感を買うとは思わなかった。すみません私が悪かったです、つぎからはちゃんとします。 また別の機会に酒場に誘われる。前回のことが頭をよぎる。そんなときは、酒場に入り集まった顔ぶれをちらっと見るだけにして、声もかけずにその場からそっと立ち去る……なんてこともできる。もちろん、メンバーや選択肢によっては大いに称賛を浴びることもある。基本的には楽しい宴なので積極的に参加してその雰囲気を味わっていただきたい。 宴の参加時には飲み物も選べ、ミルクやビール、蒸留酒などがある。例えばミルクを選べば、少しからかわれたり、健康的だなと言ってもらえたりと、こちらもキャラクターによってさまざまな反応を見ることができる。
酒場に集まった仲間たち。「罠に引っかかったら笑ってあげる」と、ミラナ。罠にかかったら、笑ってないで助けていただけるとうれしいです。
本作でも、RPGらしく宿屋に泊まることで回復できる。 “馬小屋”は0G、“エコノミー”は200G、もっと高額なスイートやロイヤルスイートもある。
馬小屋で休んでみたら、盗人にゴールドを盗まれた。「タダで回復できるなら」と、
馬小屋だからだろうか……何が起きても保証はない。治安の悪さ。また、馬小屋では、戦闘で汚れた服や顔がきれいになることはない。RPGの伝統的安全地帯であるはずの“宿屋”でも、選択によっては気は抜けない。なんだかスッキリもしないのだ。これが『ウィズダフネ』の世界だ。サツバツ! エコノミー以上であれば汚れを落とすことができるため、いまはエコノミーを選ぶようにしている。序盤では200Gでも苦しい金額であった。迷宮でボスを倒したときは、「せっかくだから」と奮発してスイートに泊まってみたら……サービスとしてさらに回復薬がもらえた。ら、ラグジュアリー! さすがスイートルームだ。予想外のリスクもあれば思わぬサービスもある、宿屋にも細かい演出が存在している。
馬小屋に泊まる一行。なんとも不憫ではあるが、一応回復はできる。
迷宮から持ち帰ったガラクタから、武器や防具を手に入れることができる。冒険におけるいちばんの収穫だ。いくつものガラクタの中から、少し強いものが手に入る。新しい装備ならより深く迷宮に潜ることができるだろう。 そうして戦闘や宝箱の入手をくり返し、ガラクタを持ち帰っては、いい装備を手に入れる。そうやって少しずつ自身やパーティーを強化し、さらなる迷宮の奥へと進む。このサイクルがなかなかやめられない。こうやって人は迷宮に囚われていくのだろう。 装備には攻撃力や魔力などのステータスを上昇させる“追加護(ランダムステータス)”が付いていることもある。装備の品質を表す星の数が多いほど、この数値も高いものになりやすい。もちろんいい武具を手に入れたほうが冒険は楽になるわけで、よりよいステータスになるよう、理想的な装備を目指して何度も迷宮と町を往復したくなるのだ。
『ウィズダフネ』が2024年10月にリリースされた際、それに合わせて“国王救出チャレンジ”というキャンペーンが行われていた。それは国王救出ミッションをクリアーしたプレイヤー先着10000人に賞品をプレゼントするというもので、ゲーム内での進行度と現実が交錯する試みでもあった。 キャンペーンのことはクリアー直前ぐらいに知ったのだが、それを知っても早さを意識してスイスイと進められるような難度ではなかったので、私は迷宮を右往左往しながら自分のペースで進めて行った。なんとかミッションクリアーまでたどり着き、ランキングで1000番台に入ることができた。ゲームのランキング争い、ましてやリアルな賞品付きともなれば、あっという間に世界中のプレイヤーで埋め尽くされるのではと思っていたのだが、順位は自分で思っていた以上に上位だったため驚いた。 ひょっとして、「そもそもこのゲームを最後までやりきれた人が少ないのではないだろうか……」とも思った。なぜなら現代のスマホゲームにしてはあまりにも骨太でスパルタンな仕上がりだから。 短い時間で手軽に楽しめるものが選ばれがちな世の流れに逆らうかのように、『ウィズダフネ』はここまでプレイヤーを突き放しながらも楽しむことができる挑戦的な作品である。
苦しい、苦しい、苦しい……でもなんかいけそう!かくいう私も、何度もいくつもの場面で諦めそうになった。どこへ向かえばいいのかわからなくなる、まさしく迷路のように複雑な迷宮、なるべくボス戦まで温存したいのにつぎつぎと湧いてくる敵、やたら硬くて攻撃の激しいボスたち……それでも特筆すべきは、どうにか突破できそうだという“希望”を感じられる点だ。
というバランス調整が絶妙だとも言える。 そしてダークなストーリーにすっかり引き込まれていた私はその行き着く先を見るために、レベルを上げたりガラクタを集めたり装備を強化したり時間を置いて日を改めたり……物語中盤からは攻略情報を検索しながら(見ないでクリアーすることは私には無理でした)何回も挑戦することで、ようやく突破できたことも多かった。 何度も打ちのめされるのだが、最後にはその苦難の道のりがあったことも、きっと納得できるような展開となるのでぜひがんばってみてほしい。またメインのストーリーはまさにRPGといったストーリーなのだが、途中から大きく転換する要素も入ってくる。そういった部分でも挑戦的な意欲作だ。 迷宮がツライんだけど、そのぶんクリアーした爽快感がバツグン。仲間をロストする怖さがあるんだけど(課金していたとしても!)、それがゲームを超えて現実とリンクする緊張感につながっている(し、工夫すれば回避可能)。ダンジョンは難しいけど装備を整えればじわじわと強くなっていくから、なんとかクリアーまでは行ける……はず。『ウィズダフネ』の“酷さ”は、つまりそういう、“マゾいんだけどやめられないという”中毒性に直結している。気づけばあなたもダンジョンの虜になっていることだろう。 皆さんもぜひいっしょに苦しみ……いや、楽しみながら、ひどい目……いや、スリリングな迷宮探索を体験してみてはいかがだろうか。
ひどい目に遭うたびに「ぐぬぬ」とはなる。それが本作のおもしろいところ。心のなかでは笑顔です(画:やまどりる)。