やっぱり「みどりの窓口」で大混乱! 新幹線トラブルで「最長4時間待ち」の異常事態

 ことの発端は6月17日、東北新幹線を回送中の新型車両「E8系」が、立ち往生したことに始まる。  社会部デスクによれば、 「何らかの理由で電源装置が故障したとみられています。前代未聞なのは、同日に別の区間を走っていた『E8系』3編成が、同じ不具合に見舞われたことです。運行を担うJR東日本は、原因が特定されるまで『E8系』の単独運転を取りやめると発表しました」  昨年運行を開始した「E8系」は、山形新幹線を走る「つばさ号」の専用車両である。ゆえに今回、山形新幹線は別の車両をかき集めての運行となり、輸送能力は通常の6割程度に。少ない車両を効率よく回すため、東京から山形まで直通する「つばさ号」の大半は運休。山形、東北新幹線の中継点である福島と山形・新庄の間を往復する臨時ダイヤが組まれた。東京方面〜山形方面の乗客は福島での乗り換えを強いられている。  20日には中野洋昌・国土交通大臣(47)が、JR東日本に原因究明と再発防止策の検討を指示。23日の山形県議会でも議題となり、県がJR東日本に改善を求め直訴する事態になった。  折しも山形は特産品のさくらんぼが収穫時期にあたる。観光のベストシーズンにもかかわらず、新幹線がまともに動いていないとなれば影響は深刻である。

 奥羽山脈の秘湯である白布温泉(山形県米沢市)で、「湯滝の宿 西屋」の代表取締役を務める遠藤友紀雄氏(61)が言う。 「予約されたお客様の中で、“新幹線が動かないため行けない”という理由のキャンセルは6件ありました。また7月以降に予約を変更することになったお客様が3件ほど。予約枠はまだ埋まっていません。お年寄りのお客様は、電車を使って来られることが多く、早期復旧を願っています」  山形新幹線・かみのやま温泉駅が最寄りの老舗旅館に聞くと、 「残念ながら、12件ほどキャンセルのご連絡を頂戴しています。東京からのお客様は新幹線の予約を変更しなければならず、たどり着くのは難しかったようです」  山形県内である温泉旅館を営む女将(おかみ)は、新幹線への不安を口にする。 「新幹線を利用されるお客様は本当に多いので、これまでも運休すると“行けないから”とキャンセルされることは何度もありました。新幹線の連結器が外れるなど信じられない出来事もあったでしょう。大きな事故につながる不安はあります」  この女将が訴えるように、JR東日本の新幹線ではトラブルが続発しているのだ。


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 先のデスクが解説する。 「今年3月、東北新幹線を走行中の『はやぶさ・こまち号』の連結器が外れて緊急停止。昨年9月にもJR東日本では同様のトラブルが起きていたことから、国交省は『重大インシデント』に認定しました」  これだけではない。昨年1月には東北新幹線の架線が破断して停電、終日運休となり大混乱を招いた。昨年3月には東北新幹線・郡山駅で「つばさ号」のブレーキが利かず、500メートル以上のオーバーランをして急停車。乗客が負傷している。  一度トラブルが起きると切符の払い戻しや変更などで乗客は駅の窓口に殺到する。ところがJR東日本は、コロナ禍の2021年に管内440駅にあった「みどりの窓口」を、140駅へと削減する合理化策を発表。昨年までに窓口を半減させたが、時期尚早だったとして計画を一時凍結している。これがパニックに拍車をかけているのだ。  出張で頻繁に新幹線を使う40代会社員が言うには、 「JR東日本の予約アプリ『えきねっと』は使いづらい。航空会社のようにネットで簡単に購入や変更ができず面倒なのに、山手線でさえ多くの駅で窓口が廃止された。大きな駅でないと切符の手続きができない上、トラブルが続けば文句の一つも言いたいよ」

 実際、今回の山形新幹線における計画運休では、山形駅の窓口が長蛇の列となり最長4時間待ち。SNSでも“こんな時くらい夜まで窓口を開けて”などの恨み節が聞こえてくる。  そもそも新幹線の安全を揺るがすトラブルは頻繁に起こるものではない。少なくとも同時期に、JR東海やJR西日本などの管内を走る新幹線で、かような大混乱は生じていないのだ。  鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏が指摘する。 「この1〜2年、JR東日本の新幹線で運行面のトラブルが頻発しています。しかも同種の事象が複数回発生しており、現場の技術力の問題というより、マネジメントが機能していないのではないかと感じています。JR東日本はネット予約へ移行を急ぎ、みどりの窓口を大量閉鎖して混乱を招きました。このままでは安全面でも“利用者不在の合理化が進められているのでは”との不安を招きかねません」  日本の鉄道は「世界一、時間に正確」と称されてきた。遅れはもとより運休など滅多にない。そんな世間の信頼も、これでは崩れかねない。

新潮社

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