【Sea Japan2026】米グラス駐日大使、米造船「投資好機」。関連予算10兆円、日本に連携呼び掛け
ジョージ・グラス駐日米大使は22日開幕した国際海事展示会「Sea Japan(シージャパン)2026」で基調講演を行った。グラス大使は、トランプ政権が「海事アクションプラン」に基づき、次年度予算で約658億ドル(約10兆5000億円)という巨額の造船関連予算を投じる方針を表明したことを強調。日本企業に対し、「一世代に一度の機会だ」として、米国造船業への投資を呼び掛けた。日本の技術力と連携し、米国造船業を再興させたい考えだ。
グラス大使は講演の冒頭、米造船業が歩んできた激動の歴史を振り返った。第2次世界大戦時の米国は、一時は100以上の造船所が稼働し、世界シェアの約90%に相当する船舶を建造するなど、圧倒的な規模を誇っていた。しかし、その後産業は衰退。現在、米国が世界の大型船舶建造量に占める割合は1%未満にまで落ち込んだ。
大使はこの現状を「深刻な戦略的脆弱(ぜいじゃく)性」と表現し、貿易の80%、軍事補給の90%を海上輸送に依存する米国にとって、造船能力の欠如は国家安全保障上の死活問題であると危機感をあらわにした。
米国造船業の衰退と対照的に台頭してきたのが中国だ。グラス大使は、中国の建造能力が米国の200倍以上に達しており、軍民両用の造船所が8―10カ月ごとに大型艦艇を進水させている現状を指摘した。
こうしたパワーバランスの変化に対し、トランプ大統領は2025年4月の大統領令で「海洋支配の回復」を掲げ、「日本のような信頼できるパートナー」(グラス大使)との連携を最優先事項に据えている。グラス大使は、視察した三菱重工業・長崎造船所を例に挙げ、「納期を守り、予算内に収める日本のエンジニアリングの卓越性は、トランプ大統領が最も求めているものだ」と称賛した。
日本と米国は昨年10月、造船協力覚書を締結。同協定は造船所の近代化、AI(人工知能)や自律航行システムなど先端技術を有する人材育成システムなどに焦点を当てている。グラス大使は35年までに建造量を倍増させるという日本の目標にも触れ、共同で産業基盤を再構築したい考えだ。さらに、韓国ハンファグループが傘下のフィラデルフィア造船所で年間20隻の船舶を建造する計画であることなどにも触れ、日本のより積極的な関与を望んでいることも示唆。来週には日本のサプライヤーやパートナーと共に、アラバマ、ミシシッピ、フロリダ各州の造船所跡地(ブラウンフィールド)を巡る視察を行うことも明かした。
具体的な支援策として、国防総省が27会計年度の予算案で要求した658億ドルの使途についても言及。資金は海軍艦艇だけでなく、タンカーやRORO船などの補助艦艇、さらには商船向けのインフラ補助金や研究開発にも充てられるという。
大使は、フィンランドと合意した砕氷船の共同建造モデル(一部を相手国、残りを米国で建造)を引き合いに出し、日本ともLNG(液化天然ガス)船や海底ケーブル敷設船などで同様の協力を展開できるとの期待を示した。