30代の長男も次男も働かない"子供部屋おじさん"…両親の貯金が「3年で2500万→1400万円」になった驚愕支出先
関西地方に住む葛西さん(仮名・59歳)は、妻(56歳)、長男(33歳)、次男(30歳)と暮らしている。子どもはふたりとも30代に入っているが、正規雇用で働いた経験はなく、子供時代の部屋をそれぞれがそのまま使っている。
葛西さんは長い間、機械メーカーで正社員として働いてきた。もともとは、定年まで同じ会社で働くつもりでいたが、6年ほど前に退職し、ひきこもり家族を支援するためのNPO法人を立ち上げることになった。
NPO法人を設立してからは、寄付金や助成金を活用しながら、働けない子どもたちの居場所を作ったり、定期的な勉強会を開催したり、時には講演会もおこなっている。
30歳 次男→ときどきアルバイトをしている
■2人の息子は高校時代に…
葛西さんの長男は高校時代、学校にほとんど通っておらず、高等学校卒業程度認定試験(以下.高卒認定試験)を受けて、高校卒業の資格は手にしている。
高校に通えなくなった理由を本人にたずねても、口を閉ざすばかりで、親も正確な理由はわからない。想像するに、「友人ができなかったり、学友から無視されたりするなど、交友関係の問題ではないか」と父親は考えている。ちなみに長男は、アルバイトをした経験もない。
一方の次男は、高校を卒業するまでは比較的順調に学業を終えられた。ただ、高校を卒業したのち、IT関連の専門学校に進学したが、専門学校は半年くらいで退学してしまった。理由は「自分のやりたいこととは違った」とのこと。「やりたいことが別にある」のではなく、「自分のやりたいことではなかった」という理由で、1年持たずに、専門学校を辞めてしまったのだ。
学業からはドロップアウトしてしまった次男だが、専門学校に通っているときから、ときどきアルバイトはできている。現在もお金が欲しくなると、数カ月単位でバイトをしているとのこと。ただ、どのバイトも1年は続かず、正社員登用を目指したこともない。
■ドロップアウトした経緯
父親はメーカー勤務時代、仕事が忙しかったこともあって、子どもたちのことは妻任せ。長男が高校に行けなくなった当時は、妻からの相談に自分なりに対応してきたつもりだったが、具体的な行動には移してこなかった。そして、解決策が見つからないまま、時間だけが過ぎてしまったと振り返る。
妻は長男が高校生になった頃に、パートタイムの仕事を始めた。子どもたちの教育資金を少しでも自分の収入で補いたいと考えたからである。パートは午前9時から、13時ころまで。13時30分くらいには帰宅できるのだが、帰宅すると、長男が家にいる機会が増えた。
「学校はどうしたの?」と尋ねると、「授業が早く終わったんだよ」と言い返されたりもしたが、実際には朝、家は出るものの学校には行かずに公園などで時間をつぶし、母親が出かけたあとに自宅に戻ってきたようだった。そんな状態がひと月くらい続いたのち、登校するふりすらしなくなってしまった。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332このころから、葛西家には重苦しい雰囲気が漂うことになる。妻に促される形で、葛西さんも「学校に行けないなら、塾にでも行ったらどうか?」とか、「学校に行けない子どもたちが集まれる場所があるみたいだから、行ってみないか?」などと声掛けをしたりもした。だが、長男が反応することはなく、そのまま時間が経過してしまった。
それでも20歳を過ぎたころ、長男から高卒認定試験を受けたいという申し出があった。受けたくなったきっかけはわからないが、長男が意欲を見せたことを喜び、夫婦で応援をした。そして、無事に高卒認定試験には合格するのだが、「今さら大学に行ったとしても、同級生は何歳も下の子ばかりで、話なんか合わないよ」と言われ、大学受験は実現しなかった。
■父親はNPO立ち上げも生活困窮状態に
バイトすらできずに、部屋にいる時間の長い長男の将来はもちろん心配だが、次男の収入も自分のお小遣いを賄える程度。子どもたちが20代のうちは、「そのうち働いてくれるんじゃないか」と軽く考えていたこともあったが、長男が30代を迎えるころから「このままでは、本当にまずいのではないか」という焦りが生じてきた。
そこで、葛西さん(当時56歳)は思い切った行動に出た。
30年近く勤めた会社を退職して、働けない子どもたちをサポートするためのNPO法人を立ち上げたのである。当事者家族である自分だからこそ、できる支援があるのではないかと考え、NPO法人の設立を実行に移したわけだ。
出典=内閣府趣旨に賛同して、協力してくれるメンバーも見つかり、NPO法人は無事に設立することができた。会社員時代と比べると、収入は3分の1くらい(月15万~20万円)に下がったため、妻のパート収入(月12万円)がなければ、家計は成り立たないが、寄付や助成金を利用して、居場所を確保したり、講演会を開いたり、定期的な講座を開催するなど、少しずつ活動は軌道に乗ってきたところである。
【資産状況】父親 貯蓄 600万円母親 貯蓄 800万円長男 貯蓄 20万円
次男 貯蓄 120万円
【家計収支】収入父親の収入 15万~20万円母親のパート収入 12万円
計 27万~32万円
支出食費 5万8000円水道光熱費 3万円固定資産税(月割り) 1万円日用品 8000円交際費 8000円被服費 5000円有料放送代 4000円交通費 8000円医療費 1万2000円クレジットカードの支払い 8万~10万円父親こづかい 2万円母親こづかい 1万円長男こづかい 1万円
計 26万3000~28万3000円
実は筆者は、このNPO法人から講演の依頼を受けたことで、今回の葛西さんと知り合った。その接点の中で、葛西家の事情も少しずつ把握できるようになってきた。
葛西家の現在の貯蓄は、父親が600万円、母親が800万円の合計1400万円である。葛西さんが退職した時点では、退職金を含めて2500万円ほど保有していたが、NPO法人を設立してからは、同法人運営への持ち出しなどもかさみ、家計が赤字になることが多い。気づけば世帯の貯蓄は1000万円以上も減っていた。
■長男の買い物グセで家計悪化
葛西家の家計の最大の問題は、NPO法人への持ち出し以外にもう一つある。長男の買い物グセである。長男はほとんど外出しないが、ゲーム関連や趣味のものなどを通販で購入している。フィギュアなども集めているらしい。物品だけではなく、食べたいものも勝手に注文しているとのこと。
欲しいものを購入して、支払いは親のクレジットカード。代引きしかできない場合は、商品が届いたとき、親に代金を支払わせている。
もちろん葛西さんも妻(母親)も、「そんなに買い物をされると、我が家は破産してしまう」と伝えているが、注意をされると長男は無言で立ち去ってしまう。長男の浪費は徐々にひどくなり、ここ数年は毎月8万~10万円にも及ぶという。
家計の費目をみると、貯金は1円もできていないことがわかった。長男のクレジットカードの支出がなければ、その分は、確実に老後資金の足しとして蓄えられただろう。
以下、ある日の葛西さんとのやりとりを整理してみよう。
【葛西さん】「カード払いの中には、代引きで払わされた代金も入っていますが、長男は欲しいものが我慢できず、どんどん注文をしてしまいます。会社員を辞めて、家計に余裕がないことを伝えても、聞く耳を持ってもらえずに困っている感じです」
【畠中】「怖がらせたくはありませんが、葛西家は、今のままだと老後破産しかねません。子どもを助ける前に、親の老後設計をきちんと立て直す必要がありますね。NPOが今後どうなるかわからず、収入が不透明で、老後の収入は夫婦ともに年金が中心になるでしょう。長男さんが支払いに使っているクレジットカードは解約してはいかがでしょうか。カードが使えなくなると、代引きで買い物をしてしまう可能性もありますが、それでも今までのように気軽には買い物できなくなるはずです」
【葛西さん】「クレジットカードを解約すると、電気代などを現金で支払うことになり、親側としても面倒なんですが……。だとしても、今のまま赤字を垂れ流していたら親の貯蓄も数年で底をつきかねないですよね。面倒でもやってみます」
【畠中】「カードが使えなくなることと合わせて、多くても、月に2万円程度が長男さんの支出の限界だと伝えてください(現状の小遣いは月1万円)」
【葛西さん】「なるべく早くカードを解約するとともに、使える金額の限界を伝えます」
■生活保護の世話になる可能性大
【畠中】「葛西さんのご長男は、この流れでいくと将来的には生活保護のお世話になる可能性が高いです。そこで、生活保護を見据えた注意点をお伝えしますね」
【葛西さん】「生活保護にも注意点があるんですね」
【畠中】「生活保護が受けられれば、一生働かなくても生活できると勘違いされている人が少なくありません。実は生活保護を受けること自体は、それほど難しくはないのですが、生活保護は停止される現実があることも理解しておかなければなりません」
【葛西さん】「生活保護は、親が死んだ後の話ですよね」
【畠中】「親御さんが存命中でも、息子さんの全財産が数万円程度まで減って、親と別に暮らせば、生活保護を受けることは可能だと思います。ただ、(両親の死後のケースであれ、存命中の親と世帯分離するケースであれ)生活保護の受給がスタートすると、働けない状態であることを証明しない限り、求職活動が義務付けられます。そのため、(現状、長男が特段の病気などがなく稼働能力があるため)働くこととセットだという現実はきちんと長男さんに伝える必要があります(働いて足りない生活費を生活保護として受給する形)。とはいえ、いきなり求職活動をするのはハードルが高すぎますので、まずはバイトを促しましょう。今の活動を支援してくださっている方々に、長男さんを働かせてもらえる場所はないものか、探してみることをお薦めします」
【葛西さん】「生活保護を受けると、求職活動が義務付けられるんですね。長男がいきなり正社員になるのは不可能ですから、職業体験でもバイトでも、とにかく働くことにチャレンジしないと、生活保護も受けられないという現実を伝えてみます」
【畠中】「葛西家の課題は、まずは長男の浪費をストップして親の生活設計をきちんと立て直すことと、そして将来的な生活保護に備えて、長男さんには少しでも働く体験をしてもらうことです。次男さんも将来、生活保護を受ける可能性があるかと思いますが、こちらも長男さんと同じように求職活動が求められます。次男さんの場合はバイトができるので、定期的な仕事に就くことを促されると思います(ケースワーカーは、厚生労働省の基準に基づき、該当者の年齢・健康状態・資格・職歴などを総合的に見て、就労時間を増やすといった指導をすることもある)。いずれにしても、葛西さんは今の仕事の人脈を活かして、お子さんたちが生活保護を停止されないために、少ない収入であっても働ける場所を探してみてはいかがでしょうか」
----------畠中 雅子(はたなか・まさこ)ファイナンシャルプランナー「働けない子どものお金を考える会」「高齢期のお金を考える会」主宰。『お金のプロに相談してみた! 息子、娘が中高年ひきこもりでもどうにかなるってほんとうですか? 親亡き後、子どもが「孤独」と「貧困」にならない生活設計』など著書、監修書は70冊を超える。
----------
(ファイナンシャルプランナー 畠中 雅子)