標高1300メートルのホルスタイン 長野の酪農を引っ張る牧場
八ケ岳の裾野に広がる長野県南牧村の野辺山高原は、標高1300メートル余り。夏の気温は30度を超えることが少なく、冬は零下20度近辺まで冷え込むことがある。 【写真】新海さんの牧場の生乳を使ったヤツレンの「シュッポッポ牛乳 ミルクはやっぱり香り」。愛知県の食品スーパー・サンヨネが販売する ホルスタインのラッキーマーシュ・ダーハム・ユズポン号は、この地で新海(しんがい)益二郎さん(54)に育てられた。昨年10月、トラックに丸一日揺られ、北海道安平(あびら)町に向かった。そこで県代表として品評の全国大会「第16回全日本ホルスタイン共進会」に出場し、優等賞4席をとった。 JA全農長野によると、ホルスタインの県代表としては今世紀最高の成績という。 「乳牛のオリンピック」といわれるこの大会は、5年おきに催される。酪農家が交配して手塩にかけた乳牛たちが、健康で多くの乳を出せる理想の体形を競い合う。第16回はコロナ禍の中止を挟んで10年ぶりの開催だった。全国から386頭が出場した。 大会では、月齢や種に応じて20部ごとに審査される。まず優等賞、1等、2等のグループに分けられ、その中でまた順位がつく。ユズポン号は2歳シニアが集まった第10部の20頭のなかで上から4番目の成績だったことになる。 ちなみに第10部の1、2位は北海道、3位が島根、5、6位が北海道の酪農家だった。生乳全国シェアの約6割を占める北海道は今回、地元開催とあって約190頭が参加。全体から選ぶ最高位賞を含めて上位をほぼ占めた。 2024年の長野県の生乳生産量は全国12位。冷涼な環境を生かした高品質を売りにする。 だが、最近は飼料や資材価格の高騰や後継者難に苦しむ。そんな中で新海さんは酪農王国の道勢に食い込む成績を収めた。JA全農長野の担当者は「県の酪農を引っ張る存在」と評する。 新海さんは16歳で就農し、30歳で独立。妻・尚子さん(47)と力を合わせ家族経営の規模を保ちながら生産性を上げることを心がけてきた。 乳牛が役割を果たすのは平均5、6歳まで。その後はほぼ肉牛になる。生きる間にできるだけ気持ちよく乳を出せる環境を整える。それを新海さんは「酪農家の責任」と考える。共進会の活動もその延長線上にある。 共進会で同業者と交流すれば、飼料、機材、牛舎の管理などの最新事情を学べる。搾乳量は通常1頭あたり1日30キロとされる。新海さんの牧場では37キロとれる。優れた乳牛の育成にこだわった成果だ。 新海さんの長女・益美さん(22)は、物心ついた頃には両親と牛舎にいた。共進会にもついていき、自分の家の乳牛が評価されるのが誇らしかった。北海道の私立高校で酪農を学び、家族経営の一員に加わった。20歳の長男はカナダ、18歳の次女も北海道で酪農に携わる。新海さんの牧場に、後継者難はなさそうだ。(志村亮) ◇ 〈牛乳PB〉 愛知県で展開する食品スーパー、サンヨネ(愛知県豊橋市)が、特に品質が優れているとして、新海さんら野辺山高原の4酪農家の生乳だけを使ったプライベートブランド(PB)「ミルクはやっぱり香り牛乳」を販売している。「シュッポッポ牛乳」で知られるヤツレン(南牧村)が製造する。購入者からは香りがよいと好評という。
朝日新聞社