【毎日書評】「つらい仕事」が「楽しい没頭」に変わる。人生がうまくいく究極の習慣

1つの習慣 うまくいく人は、なぜ「これ」を大切にするのか』(横山直宏 著、すばる舎)のタイトルにある「1つ」が指しているのは「楽しむこと」なのだそう。

もしかしたら、「もっとまじめに生きなければだめだ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、著者はそうではないと断言しています。むしろ人生を楽しむことが、自分の才能を最大限に発揮し、大きな結果を出し、まわりの人にもポジティブな影響を与える原動力になるのだと。

たとえば、ペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・セリグマン博士らによってはじまったポジティブ心理学の研究では、「楽しみ」や「喜び」などのポジティブな感情が、心と身体の健康を向上させ、成功につながるという報告がなされています。

あらゆるものごとを楽しみながら取り組む人は、ストレス耐性が強く、創造性や問題解決能力が高い傾向にあることがわかっています。(「はじめに」より)

もちろんそれは一例にすぎませんが、とはいえ世界中の専門家がこのことについて研究をし、科学的な成果も発表されています。つまり「楽しむこと」が人生によい影響を与えることには、さまざまな裏づけがあるわけです。

そこで本書において著者は、「楽しむ」ことで人生がうまくいく理由、そして“具体的にどうすればそれを実現できるのか”を解説しているのです。

世界中の英知と科学的根拠、一流の先人たちの実践法、そして私自身の体験を通して得た気づきを、わかりやすくお伝えしていきます。(「はじめに」より)

きょうは第2章「なぜ、ごきげんで仕事をするとパフォーマンスが最大化するのか」内の、「『時間を忘れるほどの集中』を操る方法」に注目してみたいと思います。

知らず知らずのうちに仕事に没頭していて、ふと気づいたら「もうこんな時間だったのか」と驚かされることがあります。しかもそんなとき、私たちは高いパフォーマンスを発揮しているものでもあります。

つまりそれこそが、心理学でいう「フロー状態」。フロー状態の時は脳内で、次のような反応が起きるのだそうです。

・「自己評価・時間認識・思考のコントロール」を司る前頭前皮質が静まり、自己意識が薄れ、時間の感覚がなくなり、不要な雑音が消えて本質だけが残るような状態になる

・ドーパミン(やる気ホルモン)の大量分泌がおこなわれ「集中しているのに楽しい」→「やればやるほど、もっとやりたくなる」という感覚が生まれる

・「アナンダマイド(多幸感ホルモン)」が増加し、創造性・幸福感・リラックスが促進されて「アイデアが湧く」「自然と身体が動く」感覚が起きやすくなる

(91〜92ページより)

著者もフロー状態を経験したことがあるそうで、いずれの場合にも共通していたのは「自分の価値観にぴったり合った仕事をしているとき」だったといいます。そうした仕事は楽しさとやりがいを同時に感じさせ、自然と集中力を引き出すわけです。(91ページより)

フロー状態に入るには?

著者によればフローとは、「超集中」の状態。では、どうすればフロー状態に入れるのでしょうか?

この問いに対する答えとして、ここでは現代心理学の父と呼ばれるハンガリーのミハイ・チクセントミハイ博士による著作『フロー体験 喜びの現象学』(世界思想社教学社)に記された“フローに入るための9つの要素”が引き合いに出されています。

1. 明確な目標

たとえば「1時間でプレゼン資料を完成させる」など“なにをすればいいのか”が明確だと、迷いがなくなり、脳は迷わず集中できるようです。

2. 即時のフィードバック

「書いた文章にすぐ反応がある」など、自分の行動が成果につながっていることがすぐにわかると、集中力が続くということ。

3. チャレンジとスキルのバランス

「少し緊張する商談」など、難しすぎず、簡単すぎず、ちょっとの背伸びでクリアできそうな課題があることも、フロー状態に入るためには大切。

4. 行動と意識の融合

「やっていること」と「自分の意識」がピタッと重なる感覚も重要。「身体が勝手に動いている感じ」など、“ただ、やっている純粋な状態”がそれにあたります。

5. 集中の深まり

外のことが気にならないほど集中している状態であることも重要。たとえば「人の声も聞こえないほど没頭している」というように、思考がすべて「いま、この瞬間」に注がれている状態です。

6. コントロール感

「自分でコントロールできている感覚」も大事。「多少のミスもリカバリーできる安心感」などがあれば、失敗を恐れずに集中できるのです。

7. 自己意識の消失

自分の評価や見た目を気にしていない状態になると、フロー状態に近づくそう。「うまく見せよう」などのエゴが一時的に消え、本当の自分が前に出てくるわけです。

8. 時間感覚の変化

時間があっという間に過ぎたように感じたり、逆にゆっくり感じたりすると、フローの状態に近いのだとか。時間の縛りから解放されている、最高の集中状態だということです。

9. 活動そのものが報酬

結果よりも、「やっている」こと自体が楽しいと感じる状態。それもまた、フローへのトリガーだそうです。(以上:92ページより)

これら9つを満たすためのポイントは、自分の価値観に合った仕事を楽しみながらするということであるようです。

たしかに、苦痛に感じる時間は長く感じられ、楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもの。そう考えると、自分の価値観で前向きにすることの意義が理解できるのではないでしょうか。

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Source: すばる舎

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