人手不足ロシア、アフリカで大規模な女性採用活動-軍需生産に動員か
ロシアの企業が労働力不足を補おうと、アフリカで若い女性の採用活動を広げている。だが、採用された多くは軍用品の生産に動員されているとの懸念がある。
こうしたロシア企業が最近力を入れているのは、ロシアと同じBRICSのメンバー国である南アフリカ共和国だ。事情に詳しい関係者によると、主要雇用主の一つは軍用ドローンを生産するアラブガ経済特区で、ロシア企業の活動と意図について南ア政府が今や調査に着手した。
この人材調達活動には、BRICSの名称を使用する組織も関わっている。BRICS女性ビジネス連合の南ア支部は5月、アラブガおよびロシアの建設会社エタロンストロイ・ウラルと、合計5600人の労働者を来年供給する合意を結んだ。
1月には南アを拠点とするBRICS学生委員会がアラブガでの建設およびホスピタリティ業務に従事する求人広告を投稿。18-22歳の女性に限定されたこの求人は、南アのインフルエンサーも宣伝を始めた。
BRICS女性ビジネス連合の議長で、今年初めにロシアを訪問して合意に署名したレボガング・ズールー氏は「ロシアは労働力を求めている。一方、南アフリカは失業者が危機的な状況にある」と、ブルームバーグに語った。
ロシアでは人口の高齢化と減少に加え、ウクライナでの戦闘に数十万人の男性が駆り出されたことで、労働市場に大きな穴が生じ、賃金は高騰した。これに対し、南アでは労働力の3分の1が職を得ていない。経済的に両国の利害が一致するように思われるが、この採用活動が当局の注意を引きつつある。
例えばアラブガ経済特区については、米国の科学国際安全保障研究所(ISIS)など複数の機関による3本の報告書で、アフリカ人女性をだまして自爆ドローン「シャヘド136」の組み立て作業をさせていると非難されている。ISISによれば、この種の作業では男性よりも女性の方が信頼できると見なされているという。
南ア当局はロシアの外交代表を呼び出し、説明を求める可能性があると、事情を知る関係者は語った。関係者は公式発表がまだないとして、匿名を要請した。
南アの国際関係・協力省はブルームバーグの問い合わせに対し、「虚偽の名目で南ア市民を採用する外国のプログラムに関する報告について、政府は鋭意調査している」と回答。「ロシアの求人が公表されている内容に一致していないという、信頼に足る証拠はまだ確認されていない。しかし、アラブガによる若者の採用について、指摘がなされていることには留意している」と説明した。
アラブガ経済特区の採用部門アラブガ・スタート、エタロンストロイ・ウラルは問い合わせに回答しなかった。アラブガの代表はボツワナでのイベントで、採用されたアフリカ人労働者がドローン製造工場で働かされることはないと主張した。BRICS学生委員会と女性ビジネス連合は、ドローン工場への労働者供給を助けているとの見方を否定した。
学生委員会のテムベヒリレ・ムプンゴセ事務局長はインタビューで、「実際に現地で被害に遭ったという具体的な証拠はあまりない」と述べ、「私たちは貧しく、チャンスが必要だ。ドローンを作らせるために人を送っているわけではない」と続けた。
実際、34歳未満の女性の失業率が48%を超える南アでは、ロシアでの就労は多くにとって魅力的に映る。アラブガの求人広告によると、月給は最大800ドル(約11万7000円)。南アではまずまずの水準に過ぎないが、求職者にとっては少なくとも職は得られる。ただし、これはアラブガのあるロシア・タタルスタン共和国の平均給与と比べると、著しく低い。
アラブガ・スタートのウェブサイトに、ドローン工場での仕事について言及はない。だが、ISISとGlobal Initiative Against Transnational Crimeのリポートによると、契約した女性の大半は事前の説明がないままドローン工場で作業させられている。
2024年にはAP通信が、アフリカの女性らが自らの意思に反してドローン工場で働かされていると報じた。ドローン工場やアラブガ特別経済区はウクライナが繰り返し攻撃し、今月9日にも攻撃があったばかりだ。
ISISのスペンサー・ファラガッソ上級研究員は「われわれの推計では、アラブガに向かう女性の約90%が最終的にドローン関連の作業に配属されている」と指摘し、「女性らが行っているのは兵器の製造だ。戦争の一部となるため、攻撃の対象となることを意味する」と警告した。
原題:Russia’s Push to Recruit South African Women Triggers Probe(抜粋)