【大河ドラマ 豊臣兄弟!】第21回「風雲!竹田城」回想 小一郎が攻略した「天空の城」は対毛利の最前線 歴代の権力者を支えた生野銀山

焦点は「天空の城」の争奪戦に

大河ドラマ「豊臣兄弟!」の第21回、「風雲!竹田城」では物語の主舞台が変わり、これまでの近江(滋賀県)や京からさらに西へ進みました。現在の兵庫県の南西部にあたる播磨国と、北部にあたる但馬国が焦点に。中でもメインになったのは、近年「天空の城」「東洋のマチュピチュ」などと呼ばれ、大いに観光客の人気を集める但馬の竹田城(現・兵庫県朝来あさご市)です。(ドラマの場面写真はNHK提供)

竹田城(兵庫県朝来市) ドラマでもこの「霧」がストーリーのカギを握りました

標高353㍍の古城山に築かれた山城です。ドラマでも描かれたとおり、内陸のこの地域は、秋の良く晴れた朝にしばしば濃い霧が発生することがあります。この朝霧が竹田城を取り囲み、まるで雲海に浮かぶように見える姿は絶景。インカ帝国の古代都市、マチュピチュを連想させます

お城そのものも立派です。天守台・本丸を中心に、三方に向けて放射状に曲輪が配置され、縄張りの規模は東西に約100m、南北に約400m。完存する石垣遺構としては全国屈指の規模を誇ります。俯瞰した動画で威容を紹介します↓ のちに豊臣家の大坂城を守る、という重要なミッションが与えられたこともあり、年を追うごとに石垣などの構造物は充実していったと思われます。そのスケールには目を見張ります。

見事な石垣が残る竹田城 麓からみた竹田城

江戸時代に入った段階で廃城となったのですが、遺構はよく残り、整備も進んでいます。ドラマで関心を持った方、現地に足を運んでみてはいかがでしょう。小一郎たちの息吹を感じられるかもしれません。

信長と毛利の対立激化、将軍義昭が隠れた主役

播磨と但馬をめぐる攻防は、東側の織田勢、西側の毛利勢という巨大勢力同士の対立が背景にあります。今回のドラマでは直接描かれませんでしたが、室町幕府の最後の将軍、足利義昭(尾上右近さん)の動向が影響を与えていました。

京を追放されて以降も、戦国の世に存在感を示し続けた義昭

元亀4年(1573)7月、信長に京を追放された義昭。その後、和泉(大阪府)や紀伊(和歌山県)などを転々とした義昭は天正4年(1576)2月、毛利の庇護を求めて備後国の鞆とも(現在の広島県福山市)に落ち着きます。ドラマで描かれた天正5年の1年前のことです。義昭がこの地で政治的な活動を展開したことで「鞆とも幕府」と呼ばれる時もあります。

織田勢との対立に直面することになる毛利輝元(濱正悟さん)

かつては織田とは友好関係にあった毛利ですが、義昭が領内に入ってきたことなどで織田との対立が深まり、徐々に衝突が避けられない情勢になってきました。藤吉郎や小一郎はそうした重要な局面を踏まえて、係争の地となる播磨や但馬に派遣されたということになります。織田家で2人の能力が高く評価されていたことが伺えます。

「親子」対決 史実では繰り返される城を巡る攻防

但馬をめぐる攻防で、初めて戦いの総大将を任された小一郎(仲野太賀さん)。要衝の竹田城を治める太田黒輝延(中野英雄さん)と対峙します。

「血を一滴も流さずに(戦いを)終わらせたい」。小一郎らしい構想に基づき、考案したのは夜中にかがり火をたいて霧の発生をおさえ、終日、城を丸裸にする作戦です。水の貯えが切れるギリギリのタイミングで監視の目を緩めたように見せかけ、水の調達のために城外に出た一線の兵士たちに、投降するよう説得しました。

仲野さんが、父の中野さんに刃を向け、思わず殴りつけるという迫力の親子共演となりました。家来に離反され、気がつけば孤立無援になっていた輝延。憎々し気な悪役ぶりがさすが堂に入っている中野さんでした。

織田方の手に落ちた竹田城ですが、その後、ふたたび太田垣輝延の手に戻るなど複雑な経過をたどります。この回では、比較的簡単に兄弟の統治する地として落ち着いたように見えた播磨・但馬地域ですが、実質的に平定するまでには長い時間が掛かります。次回以降、その苦闘が描かれることでしょう。

生野銀山、権力者の財政基盤に

竹中半兵衛(菅田将暉さん)が今後の戦略上、「どうしてもおさえておきたい」と兄弟に進言したのが生野銀山(兵庫県朝来市)でした。竹田城の攻略も、この銀山を支配するうえでの作戦だったとされています。

生野銀山の坑道跡

「史跡生野銀山」のHPによれば、生野銀山は大同2年(807年)に銀が出たと伝えられ、長い歴史を誇ります。天文11年(1542年)には但馬守護職・山名祐豊が銀石を掘り出し、開坑の起源といわれています。

『生野銀山絵巻』,写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/14443529 『生野銀山絵巻』,写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/14443529

その後、織田信長・豊臣秀吉の直轄時代を経て、慶長5年(1600年)徳川家康は、但馬金銀山奉行を配置。佐渡金山、石見銀山と並び天領として徳川幕府の財政を支えました。常に時の権力者が支配下に置きたい存在でした。これから兄弟にとっても重要な切り札になりそうです。

「軍師官兵衛」、表舞台に

竹中半兵衛とならび、この時代の「軍師」を代表する存在、黒田官兵衛孝高(倉悠貴さん、この時は小寺官兵衛尉孝高)がいよいよ登場しました。さっそく播磨の各地に根を張る武将たちをまとめ上げ、能力のあるところを見せました。

当時は播磨の武将、小寺氏に仕えていましたが、これから官兵衛は藤吉郎と小一郎を特に軍事面で支え、大きく飛躍することになります。

早速、半兵衛と互いをライバル視するシーンが印象的。2人はこのあと、深い因縁で結ばれることになります。ドラマではどのように描かれるでしょうか。菅田さんと倉さんの演技合戦も注目でしょう。

小一郎と慶、仲睦まじく

前夫との間に生まれた与一郎を養子に迎え、本来の自分を取り戻すことができた慶(吉岡里帆さん)。その後は羽柴家の女性陣を引っ張るなど存在感を発揮、ストーリーの重要な部分を担ってきそうです。

小一郎ともいい雰囲気になりました。重い責任を負うことなる夫とともに、どのようなシーンを見せてくれるのでしょうか。

上月城、何があったのか…

幕切れ、播磨西部に位置する上月こうづき城(兵庫県佐用町)で、何やら恐ろしい事態が起きているように見えました。

毛利勢と対峙する上で重要な拠点の城。この時期、秀吉が自ら進軍して陥落させたのは史実通りなのですが……。

(美術展ナビ編集班 岡部匡志、撮影・岡本公樹) 【参考文献】「朝来市埋蔵文化財センター二〇周年企画展図録 羽柴秀長と竹田城」(朝来市文化財センター 古代あさご館)、「戦国武将合戦事典」(峰岸純夫、片岡昭彦編、吉川弘文館)、「信長徹底解読 ここまでわかった本当の姿」(堀新・井上泰至 編、文学通信)、「羽柴秀長 秀吉の天下を支えた弟」(柴裕之著、角川選書)、「羽柴秀長とその家臣たち」(黒田基樹著、角川選書)、「現代語訳 信長公記 天理本 首巻」(太田牛一著、かぎや散人訳 デイズ)、「豊臣秀長 『天下人の賢弟』の実像」(和田裕弘著、中公新書)、「織田信長合戦全録」(谷口克広著、中公新書) <あわせて読みたい>

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