ドローン飛来数は減少に転じて突破数は過去1年間で最も少ない:ウクライナ迎撃戦闘2026年6月分の傾向(JSF)

 2026年6月にウクライナ空軍司令部が報告したロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃は合計で5930飛来(ドローン5750機+ミサイル180発)でした。これは先月の2026年5月(分析記事)の8278飛来(ドローン8073機+ミサイル205発)と比べると減少しており、6000飛来を割ったのは2026年2月以来となりますが、依然として膨大な数が飛来しています。空襲報告の出典:ウクライナ空軍司令部

ロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃の飛来数

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃の飛来数。青色:ドローン、橙色:ミサイル:2025年7月~2026年6月

※飛来数で見るとドローンが攻撃の主力かと錯覚するが、後述の「突破数の打撃力換算」で年間の推移を見ると、ミサイルの打撃量が攻撃の成果の半分を占めている。

○2026年6月:5930飛来5277排除 

各種ミサイル:180飛来104撃墜 ※阻止率58%

  • 高速ミサイル:114飛来45撃墜 ※阻止率39%
  • 低速ミサイル:66飛来59撃墜 ※阻止率89%

各種ドローン:5750飛来5173排除 ※阻止率90%

  • ジェット型シャヘド自爆無人機:ほぼ毎日飛来報告(数の記載無し)
  • バンデロール徘徊弾薬:ほぼ毎日飛来報告(数の記載無し)

※高速ミサイル:超音速以上を発揮する弾道ミサイルと転用ミサイル(地対空ミサイルの対地攻撃転用など)を纏めて「高速ミサイル」と分類する。

※低速ミサイル:亜音速巡航ミサイル。高速ミサイルとの比較の意味での低速。

※排除:ここでは撃墜ではなく電子戦での無力化を指すが、囮無人機の燃料切れ墜落による「未到達」も含む。

※ジェット型シャヘド:報告数が増え始めたが、シャヘド全体の数%程度と推定。

※徘徊弾薬:自爆無人機の別の呼び方だが、バンデロールは実質的に小型巡航ミサイル。ただし宇空軍は無人機の枠に入れている。

※6月は大規模攻撃が2回のみ。なおドローンは毎日飛来している。

高速ミサイル6月傾向:過去2番目に多い飛来数

  • イスカンデルM弾道ミサイル×47飛来14撃墜
  • イスカンデルM弾道/S-400転用ミサイル×49飛来25撃墜
  • キンジャール空中発射弾道ミサイル×2飛来0撃墜
  • ツィルコン極超音速ミサイル×14飛来5撃墜
  • ツィルコン極超音速/オーニクス超音速ミサイル×2飛来1撃墜

○高速ミサイル合計:114飛来45撃墜69突破 ※阻止率39%

※S-400:地対空ミサイルを対地攻撃転用したもので準弾道飛行で超音速を発揮する。イスカンデルM弾道ミサイルと種類判別が出来ずに纏めて集計報告。

※オーニクス:対地対艦兼用の超音速巡航ミサイル。ツィルコンと発射車両が共通であるため種類判別が出来なかった場合があり纏めて集計報告。

①北朝鮮製KN-23弾道ミサイルの飛来報告無し

 2026年1月~5月と同じく6月も北朝鮮製KN-23弾道ミサイルの飛来報告がありません。ただしレーダー観測ではロシア製イスカンデルMと見分けが付かない筈なので、どうやら報告されていないだけで、実際にはずっと混じっていたままの可能性が高いようです。

②S-400地対空ミサイル対地攻撃転用の使用

  • 2026年6月:48飛来25撃墜(4回)
  • 2026年5月:63飛来23撃墜19未到達(4回)
  • 2026年4月:31飛来8撃墜(2回)
  • 2026年3月:33飛来25撃墜(3回)
  • 2026年2月:89飛来38撃墜(4回)
  • 2026年1月:66飛来29撃墜(6回)

 「イスカンデルまたはS-300/400」の飛来が1月から継続しており、最近の特徴となっています。

③ツィルコン極超音速ミサイルの飛来

  • 2026年6月:16飛来6撃墜(3回)
  • 2026年5月:3飛来0撃墜(1回)
  • 2026年4月:飛来無し
  • 2026年3月:4飛来1撃墜(2回)
  • 2026年2月:16飛来10撃墜(4回)
  • 2026年1月:3飛来0撃墜(2回)
  • 2025年合計:2飛来0撃墜(2回)
  • 2024年合計:4飛来1撃墜(4回) ※2月7日初確認

 これまで試験投入レベルだったツィルコンですが、2026年になってから纏まった数の投入が始まっています。ただしそれでも半年間で42発でしかなく月あたり平均だと7発に過ぎず、戦局に影響を与えるような数ではありません。突破率も弾道ミサイルと比べて大差がありません。なおツィルコンはスクラムジェット巡航ミサイルではなく固体燃料弾道ミサイルである可能性(記事)が指摘されており、実はあまり先進的な装備とは呼べない可能性があります。

高速ミサイル(弾道ミサイル+転用ミサイル)の飛来数

筆者作成図:ロシア軍の高速ミサイルの飛来数の推移。黄色:弾道ミサイル、青色:転用ミサイル、緑色:弾道ミサイルと転用ミサイルの混在:2025年7月~2026年6月

※2026年1月から「イスカンデルM弾道ミサイルまたはS-300/400地対空ミサイル対地攻撃転用」という報告が増えているため、これを「混在」と分類する。

※ツィルコンは極超音速兵器とされているが、ここでは弾道ミサイルのカテゴリーに入れる。

 高速ミサイルは開戦初期に混乱して正確な集計が出来なかった時期を除いて2026年2月(143飛来)が最大記録です。そして今月の2026年6月(114飛来)が高速ミサイルの過去2番目の飛来数となっています。なお高速ミサイルの阻止率については敵が高速目標を迎撃可能なパトリオット配備地域を狙ってくるかどうかで大きく変動するので、個別の高速ミサイル飛来地域とパトリオット配備推定地域(キーウ以外では移動を繰り返しており、配備地域の推定が難しい)を勘案しながらでないと迎撃戦闘の傾向は分かりません。

低速ミサイル6月傾向:過去1年間で下から2番目の少ない飛来数

  • Kh-101巡航ミサイル×27飛来26撃墜
  • カリブル巡航ミサイル×5飛来3撃墜
  • Kh-101/イスカンデルK巡航ミサイル×30飛来30撃墜
  • Kh-59/69空対地ミサイル×4飛来0撃墜

○低速ミサイル合計:66飛来59撃墜7突破 ※阻止率89%

※6月15日の巡航ミサイルは二種類まとめて報告(宇空軍)されているが、これは飛行途中で細かい種類の識別の維持が困難になったため。

巡航ミサイルの飛来数(撃墜数+未到達+突破数)

筆者作成図:ロシア軍の巡航ミサイルの飛来数の推移。灰色:撃墜数、薄橙色:未到達、桃色:突破数:2025年7月~2026年6月

巡航ミサイル阻止率(%)の推移

筆者作成図:巡航ミサイル阻止率(%)の推移:2025年7月~2026年6月

 巡航ミサイルは過去1年間で下から2番目の飛来数で、阻止率は良好であり年間平均以上の数字です。

各種ドローン6月傾向:過去1年間で最も少ない突破数

  • 各種ドローン:5750飛来5173排除577突破 ※阻止率90%
  • ジェット型シャヘド自爆無人機:ほぼ毎日飛来報告(数の記載無し)
  • バンデロール徘徊弾薬:ほぼ毎日飛来報告(数の記載無し)

※シャヘド136自爆無人機(ジェット型を含む)、ガーベラ囮無人機、イタルマス自爆無人機、パロディ囮無人機、バンデロール徘徊弾薬がウクライナ空軍司令部の集計報告にほぼ毎回記載されている。

※ただしイタルマスの報告は実際には同じ特徴を持つデルタ翼フロントエンジン牽引プロペラ式のBM-35自爆無人機である可能性が高い。

※ジェット型ドローンは増えて来たが現状ではまだ全体の数%程度と推定される。

長距離ドローン攻撃の飛来数(排除数+突破数)

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン攻撃の飛来数(灰色:排除数、青色:突破数):2025年7月~2026年6月

ドローン阻止率(%)の推移

筆者作成図:長距離ドローン阻止率(%):2025年7月~2026年6月

長距離ドローン攻撃の突破数

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン攻撃の突破数:2025年7月~2026年6月
  • 2026年06月:577突破:5750飛来5173排除 ※阻止率90%
  • 2026年05月:674突破:8073飛来7399排除 ※阻止率92%
  • 2026年04月:724突破:6585飛来5861排除 ※阻止率89%
  • 2026年03月:629突破:6462飛来5833排除 ※阻止率90%
  • 2026年02月:649突破:5059飛来4410排除 ※阻止率87%
  • 2026年01月:732突破:4452飛来3720排除 ※阻止率84%
  • 2025年12月:984突破:5131飛来4147排除 ※阻止率81%
  • 2025年11月:886突破:5446飛来4560排除 ※阻止率84%
  • 2025年10月:1077突破:5298飛来4221排除 ※阻止率80%
  • 2025年09月:736突破:5585飛来4849排除 ※阻止率87%
  • 2025年08月:697突破:4132飛来3435排除 ※阻止率83%
  • 2025年07月:723突破:6297飛来5574排除 ※阻止率89%

参考:囮無人機が混じっていない2024年6月以前(1年分)

○2023年7月~2024年6月:682突破:4433飛来3751撃墜

  • 1カ月分平均:約57突破:約369飛来約313撃墜 ※阻止率85%

※囮無人機は2024年7月から確認され始め、2024年10月から大規模投入が始まる。

 長距離ドローン攻撃については今月は過去1年間で5番目の飛来数ですが、阻止率が良好だったので、突破数は過去1年間で最も少ない数字です。

突破数の打撃力換算(青:ドローン、橙:ミサイル)

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃の突破数の打撃力換算(青色:ドローン、橙色:ミサイル):2025年7月~2026年6月
  • 2026年06月:打撃力133.7点(ドローン57.7点+ミサイル76点)
  • 2026年05月:打撃力137.4点(ドローン67.4点+ミサイル70点)
  • 2026年04月:打撃力124.4点(ドローン72.4点+ミサイル52点)
  • 2026年03月:打撃力98.9点(ドローン62.9点+ミサイル36点)
  • 2026年02月:打撃力181.9点(ドローン64.9点+ミサイル117点)
  • 2026年01月:打撃力138.2点(ドローン73.2点+ミサイル65点)
  • 2025年12月:打撃力151.4点(ドローン98.4点+ミサイル53点)
  • 2025年11月:打撃力203.6点(ドローン88.6点+ミサイル115点)
  • 2025年10月:打撃力215.7点(ドローン108.7点+ミサイル107点)
  • 2025年09月:打撃力131.6点(ドローン73.6点+ミサイル58点)
  • 2025年08月:打撃力118.7点(ドローン69.7点+ミサイル49点)
  • 2025年07月:打撃力145.3点(ドローン72.3点+ミサイル73点) 

○1年分合計:打撃力1780.8点(ドローン909.8点+ミサイル871点)

※打撃力換算はミサイルとドローンの弾頭重量差を10倍とする。突破して来たミサイル1発を打撃力1点、ドローン1機を0.1点と計算する。

※「突破数の打撃力換算」では突破して来たドローンは爆発した以上は全て自爆無人機と見做せるので飛来傾向の判断材料として正確性が高い。また実際に与えた被害量の大まかな把握ができる。

 大まかな数字になりますが、ミサイルの弾頭重量は約500~1000kg、ドローンの弾頭重量は約50~100kgである場合がほとんどです。ただし一部に特殊な例外はあります。

6月3日、ドニプロへのロシア軍のミサイル攻撃

6月3日のドニプロ攻撃は弾道ミサイルのクラスター弾攻撃と推定

※クラスター弾を切り離した弾道ミサイルの推進ロケット部分は姿勢を乱して回転を始めて、大きな空気抵抗を受けて速度が急速に遅くなる。このため弾道ミサイルの残骸であるが目視で見えるほど速度が遅くなっている。

6月10日、オデーサ沖で撃墜されたシャヘド

※オデーサ沖の洋上でシャヘド136自爆無人機を撃墜。着水地点にはシャヘドの燃料が燃え広がっている。

6月15日、キーウ・ペチェールシク大修道院の聖堂が炎上

※エピファニー大主教の投稿。ウクライナ正教会(2018年設立)の首座主教で、正式名称「キーウと全ウクライナの府主教」。

6月15日、キーウ在住の日本人女性の自宅に着弾

6月26日、日本の国光文乃外務副大臣のキーウ訪問

※ウクライナ民族衣装ヴィシヴァンカを着た日本の国光文乃外務副大臣によるキーウ訪問レポート。ロシア軍のミサイル攻撃で破壊されたのはキーウのシェフチェンキフスキー地区のルキヤニウカ通りにある「ショッピングモール・クヴァドラート(ТРЦ "Квадрат")」。奥に見える高いビルは「ビジネスセンターLuwr(БЦ "Лувр")」。2026年5月24日の大規模攻撃(関連記事)での被害。

※位置座標(50.461677182078674, 30.483165271563067)

6月25日夕方、キーウ上空でパトリオットが敵弾道ミサイルを迎撃

※白い煙を吐いてる方がパトリオット防空システムの迎撃ミサイル。まだ明るい夕方での迎撃戦闘。

6月28日深夜、キーウ上空でパトリオットが敵弾道ミサイルを迎撃

※現地時間では6月27日から6月28日に日付が変わった前後の夜間戦闘。

6月28日、キーウのダルニツキー地区で回収した弾道ミサイルの残骸

ウクライナ国家非常事態庁よりイスカンデルM弾道ミサイルの残骸を回収

※2026年6月28日、キーウのダルニツキー地区でウクライナ防衛戦力が撃墜したロシア軍のミサイルの残骸を、国家非常事態庁および国家警察の爆発物処理班が共同で回収処分。出典:ウクライナ国家非常事態庁Facebook

※形状からロシア製イスカンデルM弾道ミサイルと思われる。ジェットベーンのアクチュエーターの形状は北朝鮮製KN-23とは異なっており、またこの日はキンジャール(イスカンデルMの空中発射型)の飛来報告はない。

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