ディズニーらが画像生成AI「Midjourney」を著作権侵害で訴えた理由

Image: Disney/Universal

ありのままで使わないで、と。

DisneyとUniversalが、画像生成AIのMidjourneyを訴えました。DisneyやUniversalが持つキャラクターの著作権を侵害しているという主張です。彼らは訴状の中で、「Midjourneyは典型的な著作権タダ乗り業者であり、盗作の底なし穴である」と強く非難しています。

キャラ画像、作り放題を指摘

訴状では、Midjourneyが『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーや『アナ雪』のエルサ、『シンプソンズ』のホーマー・シンプソンなどなど、DisneyやUniversalが著作権を持つキャラクターの画像を無数に無断利用・生成することで収益を得ていると指摘しています。

Midjourneyに課金すれば、テキストで指示するだけで著作権保護されたキャラクターの絵でもどんどん作れちゃうんですね。冒頭の画像は文書にあるMidjourneyの生成画像例ですが、たしかにアナ雪エルサです。文書には、Disney・Universal傘下のいろんなキャラクターの生成例が載っていて、かなり周到に用意された感じです。

Image: Disney/UniversalImage: Disney/Universal

また、この訴えは突然起こされたわけでもないようです。DisneyからMidjourneyに対し、「著作権侵害の停止と、最低限、他のAIサービスが侵害的素材生成を防ぐために実装しているような技術的方策」を取るように求めていたと訴状にはあります。Midjourneyからは2024年12月、「Disneyからの文書をレビューしている」と連絡があって以来音沙汰ないとのこと。

Disneyの言う「技術的方策」って何かというと、たとえばChatGPTだと、著作権保護されたキャラクターの画像を生成しようとしても、「コンテンツポリシーに抵触するため、画像を生成することができません」などと待ったがかかります。訴状によれば、Midjourneyには暴力的・性的画像に対するチェック機能はあるんですが、著作権保護されたコンテンツに関してはチェック機能ができてないようです。

さらにMidjourneyはChatGPTを運営するOpenAIに比べれば小規模ではあるものの、2024年だけで3億ドル(約450億円)の売上をあげていて、リソースがないわけではないと見られます。それでもDisneyらが要望するような機能追加などは行なわれなかったため、「Midjourneyの侵害は計算に基づく意図的なものだ」と訴状では断じています。

AI動画生成に危機感

さらに提訴を後押ししたのが、MidjourneyがDisneyらの要望に対応しないばかりか、AIモデルをバージョンアップしたり、AI動画生成サービスの公開を予告したりと、サービス拡張に余念がないことです。とくに動画生成に関しては、このままではダース・ベイダーやエルサやミニオンの出てくる動画までMidjourneyで作れてしまうと予想されます。

DisneyとUniversalは、Midjourneyの行為は彼らの知的財産権の不正利用にあたるだけでなく、米国著作権法、引いてはコンテンツ産業全体を揺るがすものだとしています。彼らはMidjourneyの著作権侵害行為の差し止めと、Midjourneyによりこうむった損害に対する賠償を求めています。

ちなみに生成AIサービスの開発企業が著作権侵害で訴えられるケースは、今まで何回ありました。ただ今回のように大手映画会社が連携して、生成AIサービスの出力例や売上の状況など詳細な証拠までそろえて訴えを起こすのは初めてだと見られます

なおReutersによると、Midjourneyからはまだコメントは出ていません。

Source: Court ListenerReuters

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