トランプ氏、ワシントンの論争逃れゴルフ三昧のスコットランド外遊へ
スコットランド、グラスゴー南郊の空港に着陸した米大統領専用機をトランプ氏支持の旗が出迎える/Andy Buchanan/AFP/Getty Images
エディンバラ(CNN) ワシントンの重苦しい湿気と、過熱する論争に絡む質問攻めから逃れる形で、トランプ米大統領は今週末、またしても自身の所有するゴルフクラブに避難する。ただ今回向かう先は、4800キロ離れた英スコットランドだ。
ホワイトハウスは5日間の旅行を「業務視察」と呼ぶが、公式な予定はずいぶんと少ない。トランプ氏は27日に欧州連合(EU)のトップと通商協議を行う。28日には英国のスターマー首相と会談することになっている。
しかしトランプ氏は、今回の旅行の大半を世間の目の届かない二つのゴルフリゾートで過ごすとみられる。自身が所有するこれらのリゾートはスコットランド西部の「トランプ・ターンベリー」と、約320キロ北に位置する「トランプ・インターナショナル」。スコットランドは、トランプ氏の母親にとっての先祖代々の故郷に当たる。
「スコットランドではやることが山ほどある」。25日にホワイトハウスを後にしながら、トランプ氏はそう語った。自身の家系とスコットランドとのつながりにも触れ、「愛着は強い」と言い添えた。
大統領の座に返り咲いてから6カ月。トランプ氏の政権は深刻な政治的危機に直面している。性犯罪で起訴され勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスタイン元被告について、政権側の情報公開に対する批判が噴出しているからだ。エプスタイン元被告はかつてトランプ氏の友人でもあった人物。
ここ数週間、トランプ氏が記者会見すると必ずと言っていいほどエプスタイン疑惑にまつわる新たな質問をぶつけられる。元被告との個人的なつながりも新たに暴露され、問題は収束しそうにない。
スコットランドを外遊中は、トランプ氏は自らにとってもっと居心地のいい事柄に集中できるとみられる。貿易交渉や一族の経営する事業、そしてゴルフだ。同氏はしばしば、自身とスコットランドとの縁を好んで口にする。そこは亡くなった母親の生誕の地であり、自ら運営するゴルフリゾートの所在地でもある。過去20年以上にわたって開発を進めてきたこの豪華なリゾートには大勢の地元住民が反対を表明している。大統領1期目に現地を訪問した2018年には、数千人の抗議デモ隊が路上に繰り出した。
外遊のハイライトは、29日に北東部のアバディーンシャーで開催されるセレモニーだ。新たな18ホールのゴルフコースの完成を祝い、テープカットに臨む。北海からの強風が吹き付ける海岸沿いのコースは、トランプ氏の母親にちなみ、「マクラウド・コース」と名付けられている。
メアリー・アン・マクラウドは1912年、スコットランド西部の島、ルイス島のストーノウェー郊外で生まれた。第1次世界大戦の後、18歳だった30年に米ニューヨークへ移住。36年にドイツ移民の息子だったフレッド・C・トランプと結婚した。2000年に死去した本人のモノクロ写真は現在、ホワイトハウスの大統領執務室に飾られている。
スコットランド当局は数週間がかりでトランプ氏の訪問に備えてきた。警備責任者は記者団に対し、これほど大規模な態勢が敷かれるのは22年に英国の故エリザベス女王が死去した時以来だと明かした。
しかし、トランプ氏に対する現地の全般的な反応は目に見えて冷淡だ。スコットランド独立を支持するリベラル寄りの新聞、ナショナルは25日付の紙面でトランプ氏を歓迎しないとのメッセージを強調。1面の大見出しで「有罪評決を受けた米国の重罪犯がスコットランドに到着」と謳(うた)った。
「ストップ・トランプ・スコットランド」と名乗る抗議デモ参加者の連合体は、組織的な抗議活動を計画していると明らかにした。場所はアバディーンと、エディンバラにある米総領事館の外だという。またオンライン上や英国の新聞各紙の紙面には次のような写真が出回った。写真はトランプ氏が所有するゴルフクラブの看板を写したもので、そのすぐ下に、別の小さな看板が立てられている。そちらの看板には「エプスタイン島の姉妹施設」と書かれている。
25日にホワイトハウスを出発する際、スコットランドで自身を待ち受ける反発についてトランプ氏は一切口にしなかった。ただスコットランド自治政府首席大臣(首相に相当)のジョン・スウィニー氏との会談を非常に楽しみにしていると語った。スウィニー氏は左派寄りの人物で、昨年の米大統領選では民主党のハリス副大統領(当時)を支持していた。
「彼は良い人物だ」「会談するのが楽しみだ」。トランプ氏は記者団にそう述べた。