F1分析|フェルスタッペンの強さは本物か? 気になる「マシンへの理解が深まった」という言葉

 強いフェルスタッペンが戻ってきた。

 F1第16戦イタリアGPを制したのは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンだった。フェルスタッペンはこれで今季3勝目。エミリア・ロマーニャGP以来、ずいぶんと久しぶりの勝利であった。

 今季のF1は、マクラーレンが圧倒的強さを誇ってきた。彼らはどんなコースでも速く、真っ向勝負では誰も太刀打ちできない……そう思われていた。しかしフェルスタッペンは、そのマクラーレンを真っ向勝負で下した。

 しかも今回のレースは、前の2戦とは違う。フェルスタッペンが今年勝利したのは、日本GP(鈴鹿)とエミリア・ロマーニャGP(イモラ)の2戦。いずれも、後方のマクラーレン勢をなんとか抑え込むという戦いぶりだった。しかし今回は、圧倒的速さをみせての完勝である。まるで勝ちまくっていた2022年や2023年のフェルスタッペンが戻ってきたようだ。

F1イタリアGP決勝レースペース分析:トップ3

写真: Motorsport.com Japan

 レースペースを見ると、それがよく分かる。このグラフは、イタリアGP決勝レースの、トップ3台のレースペース推移を折れ線で示したものである。

 これを見ると、フェルスタッペンはレース序盤、コンマ数秒マクラーレン勢よりも速いラップタイムを積み重ね、リードを拡大していった。25周目頃から、マクラーレン勢の方がペースが速くなったタイミングがある(グラフ赤丸の部分)が、これはフェルスタッペン曰く「少し苦労した」とのこと。これは今回の弱点だったと言えるだろうが、それまでに6秒以上のリードを築いていたため、ポジションを脅かされるようなことはなかった。

 フェルスタッペンはその後、マクラーレン勢よりも早いタイミングでピットインし、ハードタイヤに履き替えた。実はここからの10周程度が、レッドブルとフェルスタッペンの陣営にとっては、一番ヒヤヒヤしたタイミングであろう。もしこの間にセーフティカーが出動したり、バーチャルセーフティカーが宣言されてしまい、マクラーレンがピット作業を済ませると、フェルスタッペンが首位から陥落してしまう可能性があった。ただSCもVSCも出ず、レッドブルとしては胸を撫で下ろしたことだろう。

F1イタリアGP決勝レースギャップ分析:トップ3

写真: Motorsport.com Japan

 こちらのグラフも見ていただこう。こちらは、レース中のトップ3のギャップ推移を、折れ線で示したものだ。

 タイヤ交換を済ませたフェルスタッペンが、ノリスの後方10秒以内に迫ったところで、勝負あった(赤丸の部分)。今回のイタリアGPでは、SC/VSC中にピット作業を済ませた時のロスタイムが11秒程度であった。つまりこのタイミングで、マクラーレンが望みを繋いでいたSC/VSCが宣言され、フェルスタッペンの前に立つという可能性が潰えたのだった。

 ただ逆を言えば、レッドブルは戦略ミスを犯したのかもしれない。前述のように、フェルスタッペンがタイヤ交換を済ませた後、マクラーレンがピットストップする前にSCやVSCが出てしまうと、優勝を逃す可能性も十分にあった。

 マクラーレン勢が動くのを待ってからフェルスタッペンをピットに呼び込めば、そんなリスクに怯える必要はなかったはず。いくらミディアムタイヤの扱いに苦労していたとしてもだ。ここは、チームとしては再検証する必要があるかもしれない。

 とはいえ今回のフェルスタッペンの速さは圧倒的だった。イタリアGPの舞台であるモンツァ・サーキットは、世界屈指の超高速サーキットであるため、今回限りの出来事と見ることもできる。しかし、フェルスタッペンが語ったひと言が気に掛かる。

 土曜日の予選後、フェルスタッペンは次のように語った。

「今ではマシンのセッティングも少しずつ分かってきたと思う。おかげで、週末を通じて多くの部分を変更するのではなく、各セッション後に少しずつステップアップしていくことができたんだ。このことはもちろん、予選で大きな助けになった」

「ザントフールト(オランダGP)で今年のマシンについて多くのことを学べたと思う。その知識を、残りのシーズンに活かしていきたいね」

 また決勝レースの後にも、フェルスタッペンはこんなことを言っている。

「マシンは僕の好みに少し近づいた。今週末はマシンの挙動だけでも一歩前進したように思えるし、それがレースにも現れている」

「ポジティブなのは、マシンをどう調整すればもっと競争力が上がるのか、少し理解が深まったということだ。この調子が今後のグランプリにも引き継がれ、コースによっても多少の差が出ることを期待している」

 今回の強さが、フェルスタッペンが言う「マシンへの理解が深まった」ことが理由だとしたならば……今後も同様の強さを発揮し続ける可能性がある。本文中で「早めにピットストップしたのはミスかも」と言及したが、それも”もし前に出られたとしても、コース上でオーバーテイクできるから大丈夫だ”と考えていたからこその動きだったとしたならば……恐るべきだ。

 マクラーレン圧勝と思われた今シーズンは、一筋縄ではいかないのかもしれない。

 それもこれも、次戦アゼルバイジャンGPでレッドブルがどんな走りを見せるのか、それにかかっている。

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