波乱含みの市場、石破首相退陣で円と債券に売りリスク-株は思惑交錯

石破茂首相の退陣表明を受け、日本市場は波乱含みの週明けとなる可能性が高い。投資家の間に今後の政策や日本銀行の利上げ時期に対する不透明感が高まり、債券や為替市場に売り圧力が高まる公算が大きい。

  8日早朝の外国為替市場では円が前週末から大きく水準を切り下げ、一時ニューヨーク終値比0.7%安の148円42銭まで下落している。債券市場では財政支出拡大への警戒から償還期間が10年を超える超長期債を中心に利回り上昇(価格は下落)の圧力がかかりやすくなりそうだ。株式市場でも次期政権への期待と不安が交錯し値動きの荒い展開が見込まれている。

  7月の参院選で与党が大敗して以降、石破首相の退陣は時間の問題と受け止められていた。市場では次期政権がどの程度の財政支出を打ち出すのか、日銀の利上げ時期にどの程度影響を与えるのかを見極める姿勢が強い。

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、石破首相以上に財政規律を重視する後継者は考えにくいと指摘した上で、財政不安による超長期国債の軟調な展開は今後も続くか、むしろ強まる可能性があるとの見方を示した。

  日本の超長期債利回りの上昇は主要国の中でも際立っており、その動向が欧米債券市場に波及するリスクも意識されている。

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  IGオーストラリアのマーケットアナリストのトニー・シカモア氏は先週末に147円43銭前後で取引を終えた円が、149円10ー20銭まで下落する可能性が高いと述べた。

  ATFXグローバル・マーケッツのニック・トウィデール氏は、足元の動きを踏まえて「日銀は年内の利上げを見送る可能性がある」との見方を示した。さらに「円の値動きが荒く、取引が極めて難しくなるだろう」とし「金利トレーダーにとってもリスクが一段と高まる」と指摘した。

  翌日物金利スワップ(OIS)は18、19日に開かれる金融政策決定会合で、日銀が政策金利を据え置く確率を約98%と織り込んでいる。年内利上げの確率も5割弱にとどまっている。

株式市場の不透明感

  株式市場を巡っては投資家の見方は分かれている。財政支出の拡大や円安は株価に追い風となる一方で、金利が上昇するリスクは金融緩和のメリットを享受してきた企業にとって逆風となるためだ。

  ピクテ・ジャパンの田中純平投資戦略部長は、政局の先行きに対する不透明感がやや後退したことで、ひとまず上昇する展開が想定されると分析する。その後は「次期総裁が誰になるかが焦点になる」と語った。

  一方で、T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジスト兼ファンドマネジャーは、8日の日本株は下落すると予想。米雇用統計の影響に加え、石破首相の辞任はある程度想定されていたものの完全には織り込まれておらず、少なからず影響があるとみている。

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  後任候補としては、昨年の総裁選で石破氏と決選投票を争った高市早苗前経済安全保障担当相に加え、小泉進次郎農相、林芳正官房長官、小林鷹之元経済安全保障担当相らの名前が取り沙汰されている。

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