時価総額45兆円でトヨタを抜いた! 半導体メモリ「キオクシア」の株価が急上昇中の理由 「ストックオプションを付与された社員は7.7億円の含み益」

 日経平均株価は6月3日、終値で6万8000円台を付けて史上最高値を更新した。特にこの日、半導体メモリ大手の「キオクシアホールディングス」の株価は8万3140円まで上昇。時価総額は45兆円に到達し、一時、あのトヨタを上回った。この勢いは本物か。専門家に話を聞いた。  ***

 今を時めくキオクシアだが、その前身は東芝から分社した「東芝メモリ」だ。  経済部デスクが言う。 「今から9年前、東芝は米原子力小会社ウェスチングハウスが経営破綻した影響で財務状況が悪化し、主力の半導体メモリ事業を売却せざるを得ませんでした。それで設立されたのが『東芝メモリ』です。米投資ファンドを中心とする日米韓の企業連合が約2兆円で同社を買収し、2019年10月に現在の社名に変更しました」  株式市場に上場を果たしたのは24年12月のこと。 「初値は1440円でした。現在の株価は、当時の約50倍前後の水準です」(同)  キオクシアの関係者が明かす。 「株式上場の際、役員を除く部課長クラスのキーパーソン約600人に全体で約680万株分のストックオプションが付与されています。権利行使価格は1667円なので、仮に株価を7万円で試算すると1人当たり7.7億円の含み益になります。ちなみに、役員クラスはもっと多いはずです」

 うなぎ上りに株価が上昇している理由をキオクシアの広報担当者に聞いた。 「弊社はNAND型フラッシュメモリという半導体を製造・販売しています。スマートフォンやUSBメモリなどに入っている、データを記憶することができる半導体です。近年、フラッシュメモリがAIの計算処理を行うデータセンターに使われることが増えて、需要が拡大しています」  それは数字にも表れている。26年3月期の連結決算での売上高は前期比37%増の2兆3376億円、営業利益が92%増の8704億円、純利益も103%増の5545億円。売上高・利益共に過去最高を更新した。  だがなぜ、フラッシュメモリはデータセンターに使用され始めているのか。 「AI向け半導体といえば米国のNVIDIAが有名ですよね。画像・映像処理に特化したGPUといわれる演算装置を開発しており、それが主にAIの計算・処理を担っています。しかし、AIの計算には、データを記憶する場所も必要になる。そのための媒体が半導体メモリです。半導体メモリには2種類あって一つはDRAM、もう一つが私たちの扱うNAND型フラッシュメモリです」(同)  昨年前半まで、AIに使用される半導体メモリはDRAMが主流だったという。 「DRAMの方がデータを記憶し、その記憶を保存場所から呼びだすスピードが速い。韓国のサムスン電子やSKハイニックスなどが製造していますが、より高度なAIを開発・運用するにあたって、DRAMだけでは対応しきれなくなった。DRAMは単体での容量が少なく、全体で容量を増やそうとすると半導体の数が増えてコストもかかるからです」(同)


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 そこで目を付けられたのがNANDだった。半導体ビジネスに詳しい早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内厚氏の話。 「キオクシアの主力製品であるNANDは、もともと東芝時代に舛岡富士雄・現東北大学名誉教授が開発したものです。舛岡氏には営業職時代に培った“性能が良くても高くては売れない”との知見を生かしてNANDを開発したという逸話があります。実際、NANDは性能がほどほどで、なおかつ価格が安いという特徴がウケて、現在の市場でも受け入れられています」  先の広報担当もこう言う。 「NANDは記憶を呼び起こすスピードなどは遅いものの、記憶できる容量自体は多い。昨年の秋ごろからNANDとDRAMを組み合わせた方が効率的だという話が広まり、需要が一気に高まりました」  関連記事では、AI株バブルの現在と、キオクシアの今後の株価予測などについて、詳しく報じている。 「週刊新潮」2026年6月18日号 掲載

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