羽に似たクレストにサルのような尾、「奇跡の爬虫類」が見つかる
ミラサウラ・グラウウォーゲリとその生息地だった森林の復元図。(ILLUSTRATION BY GABRIEL UGUETO, NATURKUNDE MUSEUM STUTTGART)
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サルのような尾とカメレオンに似た脚で樹皮をつかみ、鳥を思わせる細い顔で周囲を観察している。背中には鮮やかな色に輝く扇のような「クレスト」が。羽毛のように見えるが、全く異なる構造物だ。この爬虫類は鳥や恐竜とは無関係で、最初の恐竜が空を飛ぶ1億年も前に存在していた。2025年7月23日付けで学術誌「ネイチャー」に論文が発表された2億4700万年前の「奇跡の爬虫類」だ。
断熱や周囲の感知、ディスプレイ、飛行などに使用できる羽毛や毛皮などの皮膚から生える複雑な構造物は、鳥類や哺乳類を生み出した系統にほぼ固有のものだと長く考えられてきた。しかし、奇跡の爬虫類の構造物は、これまで知られていた角、爪、毛などの外皮付属器とは全く異なる。
この化石は、羽毛や毛皮に似た進化的適応が、これまで考えられていたより広まっていたことを示唆している。
「びっくり仰天しました」と英エディンバラ大学の古生物学者スティーブ・ブルサッテ氏は感想を述べている。「新しい化石の発見にこれほど衝撃を受けたのは久しぶりです」
この成果は、あとに述べるように、数十年来の謎の解明にも貢献している。「羽毛のある恐竜とうろこのある爬虫類には常に区別がありました」と研究に参加したドイツ、シュツットガルト州立自然史博物館の古生物学者ステファン・スピークマン氏は言う。「そして、それはあまりにも単純な見方です」
おとなは体長30センチほどで樹上性
この標本は1939年5月、フランス北東部にある三畳紀の岩で、化石収集家のルイ・グラウフォーゲルが初めて発見した。出土したのは化石化した魚のひれや昆虫の翅と推測される数十の独立した構造物、そして爬虫類の骨格の一部だった。
しかし、シュツットガルト州立自然史博物館が2019年にグラウフォーゲルのコレクションを取得した際、化石化した構造物の基部に薄い肋骨を発見したとスピークマン氏は説明する。
ミラサウラの模式標本(種を決める標本)(ドイツ、シュツットガルト州立自然史博物館)。鳥のような頭蓋骨と背中のクレストが特徴だ。(PHOTOGRAPH BY STEPHAN SPIEKMAN, NATURKUNDE MUSEUM STUTTGART)
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岩石を慎重に除去していくと、背中の頭側に約5センチのクレストがある保存状態の良い胴体、首、頭蓋骨が出てきた。これらの構造物と骨格は同じ個体のものだった。
研究チームは骨格標本と80点以上の独立したクレストの標本を調べ、「グラウフォーゲルの奇跡の爬虫類」を意味するミラサウラ・グラウウォーゲリ(Mirasaura grauvogeli)という名前を付けた。骨格は子どものものだが、コレクションに含まれる一部のクレストの大きさから、おとなは30センチ以上に達していた可能性があるとスピークマン氏は述べている。(参考記事:「哺乳類が恐竜を襲う!「奇跡の化石」が見つかる、1億2500万年前」)
スピークマン氏らはミラサウラをドレパノサウルスと呼ばれる奇妙な樹上性爬虫類の仲間と同定した。ドレパノサウルスは北米とヨーロッパで発見されており、スピークマン氏によれば、カメレオンに例えられることもある。
しかし、実際ははるかに奇妙な特徴を持っていた。たるのような体、肩のこぶ、鳥のようなくちばしを持つ頭、前を向いた大きな目などだ。多くの種はものをつかむのに適した指と尾をもち、一部の種は尾の先端に爪があった。
「私にとって、最も近い例えはヒメアリクイです」とスピークマン氏は言う。