NY市場サマリー(27日)ドル上昇、S&P・ナスダック最高値更新 利回り小幅上昇

<為替> ドルが対ユーロでの一時の下落から回復した。トランプ米大統領がカナダとの貿易交渉を突如打ち切ったほか、イランを再度攻撃することを検討すると表明したことで、リスク回避の動きが強まった。

序盤の取引では、米経済指標で景気減速の兆しが示されたことで連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測が高まったことを背景に、ドルは対ユーロで3年半ぶりの安値を付けていた。

トランプ大統領はこの日、カナダが米テクノロジー大手に課すデジタルサービス税は「米国に対する直接的かつ露骨な攻撃」だとし、カナダとの貿易協議を突然打ち切り、今後1週間以内にカナダ製品に新たな関税率を設定すると表明。イランについては、懸念される水準までウランを濃縮している場合は再爆撃も検討すると述べた。

この日発表の米経済指標では、5月の個人消費支出(PCE)価格指数が前年比2.3%上昇と、前月の2.2%からやや加速。物価の「瞬間風速」を示す前月比では0.1%上昇し、伸びは前月から横ばいだった。

前日発表の週間新規失業保険申請件数では、6月14日までの1週間の継続受給件数が2021年11月以来の高水準だったほか、第1・四半期の国内総生産(GDP)確報値は年率換算で前期比0.5%減と、個人消費の大幅な下方修正を反映し、改定値の0.2%減から下方修正された。

こうした中、FRBによる利下げ観測が高まっており、市場が織り込む年末までの利下げ幅の予想は65ベーシスポイント(bp)と、1週間前の46bpから拡大した。

終盤の取引で、カナダドルCAD=は対米ドルで0.5%安の1.37カナダドル。

主要通貨に対するドル指数=USDは97.36とほぼ横ばい。ただ週初からは1.4%下落し、週間の下落率としては5月19日以来の大きさとなった。

ユーロEUR=は0.05%高の1.1705ドル。一時は2021年9月以来の高値となる1.1754ドルを付けた。週初からは1.57%上昇。5月19日以来の大幅な上昇となった。

ドル/円JPY=は0.19%高の144.65円。ただ、週初からは0.94%下落。5月19日以来の大幅な下落となる。

暗号資産(仮想通貨)のビットコインBTC=は0.86%安の10万6879ドル。

NY外為市場:

<債券> 利回りは取引終盤にかけて上げ幅を縮小し、小幅上昇となった。5月の個人消費支出(PCE)価格指数が前年比2.3%上昇した一方、個人消費支出が予想外の減少となったことを受け、市場は連邦準備理事会(FRB)による年内の利下げペース加速を織り込み始めた。

指標となる10年国債利回りは3.2ベーシスポイント(bp)上昇の4.284%。週間では8.6bp低下し、3週連続の低下となった。

30年債利回りは3.5bp上昇の4.851%。週間では3.7bp低下し、こちらも3週連続の低下となった。

2年債利回りは2.9bp上昇の3.744%。週間では16.4bp超低下し、4月中旬以来最大の低下幅となった。

利回り曲線は3日連続でスティープ化し、2年債と10年債の利回り格差は54.1bpとなった。

利回り曲線のスティープ化は、投資家が長期ゾーンの国債を敬遠する中で、巨額の財政赤字への懸念を反映している可能性が高い。また、市場が今後の利下げに備えていることも示唆している。

米金融・債券市場:

<株式> S&P総合500種(.SPX), opens new tabとハイテク銘柄中心のナスダック総合(.IXIC), opens new tabが終値で過去最高値を更新した。貿易協定への期待が投資家のリスク選好度を高めたほか、この日発表されたインフレ指標を受け連邦準備理事会(FRB)による利下げ期待が高まったことが背景。

トランプ大統領が、米国のハイテク企業を標的としたカナダの新関税を巡り、カナダとの貿易協議を突然打ち切ったことを受け、株価は一時、上昇幅を縮小した。それでも、主要株価3指数は軒並み週間で上昇した。

CMEのフェドウオッチによると、金融市場はFRBが9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で今年最初の利下げを実施する確率は76%との見方を織り込む。7月に利下げが実施される確率は19%。

トランプ大統領は27日、相互関税上乗せ分の猶予期限となっている7月9日について、確定した期限ではないとの考えを示し、これよりも早くなることも遅くなることもあると発言。ベセント財務長官はこれに先立ち、関税を巡る各国・地域との貿易交渉について、9月1日のレーバーデーまでに合意できるとの見通しを示していた。
S&P主要11セクターでは、一般消費財(.SPLRCD), opens new tabの上昇率が最も大きかった。一方、エネルギー(.SPNY), opens new tabは低迷した。
個別銘柄では、エヌビディア(NVDA.O), opens new tabは1.8%上昇。25日に株価は過去最高値を記録しており、時価総額は4兆ドルに迫る勢いにある。
スポーツ用品大手ナイキ(NKE.N), opens new tabは15.2%高。第1・四半期(6─8月)の売上高見通しが予想より小幅な落ち込みにとどまったことを受けた。

ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を1.29対1の比率で上回った。

米取引所の合算出来高は220億7000万株。直近20営業日の平均は182億7000万株。

米国株式市場:

<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、米中両国が、レアアース(希土類)の対米輸出迅速化で合意したと報じられたことで投資家のリスク選好が強まり、3日ぶりに反落した。中心限月8月物の清算値(終値 に相当)は、前日比60.40ドル(1.80%)安の1オンス=3287.60ドルと、中心限月清算値ベースでは5月下旬以来1カ月ぶりの安値水準。金は週間では2.90%安。

NY貴金属:

<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が大規模な増産方針の継続を検討するとの一部報道を受け、一時売られたものの、あと買い戻しが入り、3日続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月8月物の清算値(終値に相当)は前日比0.28ドル(0.43%)高の1バレル=65.52ドルだった。週間では12.56%安。9月物は0.25ドル高の64.07ドル。

NYMEXエネルギー:

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