「IPv4アドレスが枯渇した」と言われてから14年、2025年にIPv4は結局一体どうなったのか?
インターネットの基礎として必要不可欠なIPアドレスのうち、IPv4アドレスが各地域インターネットレジストリに配分し切られた2011年頃から、「IPv4アドレスが枯渇した」と言われるようになりました。地域インターネットレジストリ(RIR)のAsia-Pacific Network Information Centre(APNIC)が2025年を振り返り、「枯渇そのものよりも、どう割り当てられ、どう使われたのかを考えるようになり、IPv4運用の新しい平常状態になった」と整理しています。
The IPv4 address swamp: The new normal | APNIC Blog
https://blog.apnic.net/2025/12/23/the-ipv4-address-swamp-the-new-normal/IPv4の枯渇、すなわちICANNが各RIRへIPv4を配分し切ったのは2011年で、そこから先は「未割り当てを新規にもらう」こと自体が不可能となりました。「枯渇」と聞くと、IPv4がある日を境に使えなくなるような印象になりがちですが、まず起きたのは、希少資源化したIPv4の徹底的な再配分です。
たとえば、大きなアドレスブロックが移転されたり、待機リストやアドレスの貸し出しといった仕組みが運用の一部になったりして、手に入れる手段自体が市場や制度に寄っていきました。また、クラウド大手がアドレスブロックを確保し、世界中のデータセンターに割り振る動きも広がりました。利用側ではネットワークアドレス変換(NAT)が引き続き広く使われ、並行してIPv6の導入も年々伸び続けています。つまり、2025年のIPv4に関する動きは「IPv4が消えた」ではなく「IPv4をやりくりするための仕組みが常態化した」のだとAPNICは述べています。 次に、IPv4アドレスが足りなくなるにつれて、1つの大きなまとまりをそのまま使うのではなく、小さく切り分けて配る形が当たり前になりました。その結果、インターネットの経路情報は「少ない大きな道筋」ではなく「たくさんの細い道筋」の集合になっていきます。
192.0.0.0から192.255.255.255までの「192/8」では、最小単位に近いサイズの細かいアドレスブロックが大量に流通し、経路情報が膨らみやすいことで知られていました。APNICは、その傾向が一部の特殊な領域だけでなく、IPv4全体に広がってきたのではないかと推測しています。実際に、ネットワーク機器が参照する経路情報の件数は約100万まで増え、しかも最小単位に近いサイズの経路が半分以上を占め、最近では6割に近い状態が続いているとのこと。 2011年に配分されたIPv4アドレスは2011年末だとまだ割り当てが進んでいなかったそうですが、2014年には地域によって急速に消化が進み、そして2024年時点では、各RIRで実質的にほぼ全てが割り当て済みになっています。枯渇から十数年かけて、未使用の大きな塊が残り続けたのではなく、時間をかけて制度と需要の中で順次使われていった、という形になります。
ただし、登録上の「割り当て済み」と、ネットからの「到達可能」は一致しません。2024年時点で192/8の経路数は1万4526ですが、カバーできているアドレスは62%で、ほぼ4割がインターネットから直接届かない計算になります。一方で、最後に配分された/8群はより高い被覆率を示しており、たとえばAPNICの103/8は4万2660経路で72%、LACNICの179/8は5973経路で99%という具合。要するに、同じ/8でも「どれだけ細かく割られて、どれだけ経路として積み上がったか」の差が数字に現われているとAPNICは論じています。 APNICは、IPv4はほぼ配り切られた一方で、小さく分けたアドレスが増えた結果、経路情報も膨らみ、さらに、アドレスが持ち主や使われ方を変えやすくなったことで、IPアドレスの評判に頼った迷惑通信対策が難しくなっていると語り、「IPv6は少しずつ普及していますが、当面はIPv4のこの状況を前提に運用とセキュリティを考え続ける必要があります」とまとめました。
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