痩せすぎな人は自殺リスクが高いという研究結果

サイエンス

自殺は重大な公衆衛生問題であり、近年も「銃器による自殺は男性の方が女性より2倍以上高い」「教師や司書は自殺率が低い」など、自殺防止につながる可能性があるさまざまな研究結果が報告されています。新たに韓国の研究チームが、「痩せすぎな人は自殺リスクが高い」という研究結果を発表しました。

Inverse association between obesity and suicidal death risk | BMC Psychiatry | Full Text

https://bmcpsychiatry.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12888-024-06381-z

Underweight individuals are at an increased risk of suicide, study finds https://www.psypost.org/underweight-individuals-are-at-an-increased-risk-of-suicide-study-finds/ 自殺はあらゆる年齢層の人々に影響を及ぼす可能性がありますが、特に青少年や高齢者、社会的に疎外された人々の間で自殺リスクが高くなる傾向があります。また、自殺リスクに関連する幅広い遺伝的・社会的・身体的要因が特定されており、うつ病や片頭痛、不眠症といった疾患も自殺リスクの上昇と関連しているとのこと。

しかし、さまざまな健康状態との関連が指摘されているボディマス指数(BMI)と自殺リスクの関連性については、これまでよくわかっていませんでした。そこで韓国・カトリック大学校の医学博士であるJoonyub Lee氏らの研究チームは、韓国人のBMIと自殺リスクとの関連について調査しました。

研究には、韓国国民健康保険公団が2009年に行った国民健康調査で収集した、19歳以上の韓国人404万5081人の包括的なデータベースが用いられました。被験者はBMIスコア18.5未満が「低体重(痩せ型)」、18.5~23未満が「普通体重」、23~25未満が「過体重」、25~30未満が「肥満1度」、30以上が「肥満2度」に分類されました。

被験者は2009年~2021年末まで、あるいは研究期間中に自殺または死亡した場合はその時点まで、追跡調査が行われました。分析では被験者のBMIに加え、潜在的な交絡因子である年齢・性別・収入・糖尿病・高血圧・脂質異常症・喫煙・飲酒・運動・自傷行為・ウエスト周囲径・統合失調症・双極性障害・摂食障害・がん・不安症・物質使用障害といった要因が考慮され、BMIと自殺リスクの関連性が推定されました。 分析の結果、BMIで「低体重」に分類された人は「普通体重」の人と比較して、自殺リスクが44%も高いことが判明しました。一方、「過体重」の人々の自殺リスクは「普通体重」の人よりも21%低く、「肥満1度/2度」の人々は29%も低かったと報告されています。BMIと自殺リスクの関連性は、被験者がうつ病と診断されているかどうかや、独居生活を送っているかどうかにかかわらず有意だったとのことです。 研究チームは、「自殺による死亡リスクはBMIの分類と逆相関を示し、大うつ病性障害や居住形態の影響を受けませんでした。本研究のデータは、体重に関連する生理的要因が、自殺死亡リスクの理解において重要な役割を果たすことを示唆しています」と結論付けました。

なお、心理学系メディアのPsyPostは今回の研究について、自殺とBMIの関連性についての科学的知見に貢献するものだと主張。その一方で、この研究は韓国で実施されたものであり、他国では結果が異なる可能性があるとも指摘しました。

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