〈目撃〉テントを作るコウモリのスゴ技、「逆さ舟」や円錐形も 洞窟ではなくねぐらを自作
中南米の熱帯の森では、熟練の建築家たちが設計図も道具も、あるいは手すらも使わずに複雑な構造物を作り出している。あるコウモリは、歯と爪だけを使って葉を快適なテントに作り変えるのだ。自らのツリーハウスを作るこれまでほとんど知られていなかったこの設計者たちについて、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探究者)たちのチームがいま研究を進めている。 【動画】「逆さ舟」テントを作る白いコウモリたち コスタリカ大学の生物学教授ベルナル・ロドリゲス・エレーラ氏は、コウモリの生物学者、写真家、科学者でもあるイラストレーター、そして2人の野生動物映像作家からなるチームを率い、コウモリの謎の探求に専念している。8人のグループはメキシコからブラジルまでを旅し、コウモリのさまざまな建築デザイン、使う植物の種類、そしてこのコウモリが森林の健全さにどのように貢献しているかを記録している。 「私たちは、コウモリは自分たちとそれほど変わらないと考えられるような物語を伝えようとしています」とロドリゲス・エレーラ氏は語る。これらのコウモリは「安全な場所を選び、自分たちを守る家を建てます。家族単位で暮らし、種子を散布するという重要な働きを通して、私たちを助けてくれているのです」
ヘラコウモリ科(Phyllostomidae)のうち、テントを作る種は少なくとも22種存在し、建築材料は77種以上の異なる植物を利用する。これらのコウモリは、適した葉の主要な葉脈の周囲に、完全に断ち切らないよう切り込みを入れてテントを作る。おかげで、葉は垂れ下がって形を変えるが、水分や栄養分の循環は維持され、生きた状態が保たれる。 これまで、チームは8つの異なる様式のテント建築を記録していると、コスタリカ大学の修士課程学生であり、本プロジェクトの研究員であるアナ・ルシア・アレバロ氏は述べる。 「傘のような形のものもあれば、キャンプ用のテントのような形のものもあります」と、アレバロ氏は語る。「あるコウモリの種は、左右対称に切り込みを入れてゆき、アルファベットのJのような形を作ります。別のテントでは、コウモリが複数の葉の茎を切り取って円錐形を作っています」 ロドリゲス・エレーラ氏によると、これらのテントを見つけるには、献身的な努力、忍耐、そして訓練された眼が必要だという。過去にこれらのコウモリが十分に記録されてこなかった理由の一つは、野生の環境下で彼らのテントを見分けられる人がほとんどいなかったからだ。ナショナル ジオグラフィックのチームの目標に、科学的発見だけでなく、若手コウモリ研究者の育成や一般市民への啓発が含まれているのはそのためだ。 テントを作るコウモリに関して知られていることの大部分は、コスタリカやパナマなどの数カ所での研究に基づく。アレバロ氏とロドリゲス・エレーラ氏らの研究チームは、2025年8月7日付けで学術誌「Therya Notes」に、グアテマラのテント作りコウモリに関する初の論文を発表した。テントを作る22種のコウモリのうち少なくとも10種がグアテマラに生息しているが、これまで同国でその行動が体系的に記録されたことはなかった。 研究者たちは、中米最大の熱帯低地林であるグアテマラ北部のマヤ生物圏保護区の2カ所で調査を行った。その結果、2種類のヤシの木に傘形のテントがあり、それぞれ異なる2種のコウモリが使用しているのが発見された。さらに、ある樹種の傘形テントにおいて、これまで報告されたことのない天井の加工が確認された。 「この論文は、テント作りの生態についてまだまだ新たな発見があるということを強く示しています」と、米ニューヨークのアメリカ自然史博物館哺乳類学部門の副学芸員で、この研究には関与していないアンジェロ・ソト・センテノ氏は述べる。「私たちはその複雑さをまだ完全には理解していません」