最高値迫るドル建てTOPIX、円高耐性強めた日本株に海外勢注目も

ドルベースで見た東証株価指数(TOPIX)が35年前に記録した史上最高値に迫っている。円相場が高止まりする中でも日本株を評価する材料が増えている証左で、海外投資家が日本株に再度注目するきっかけになり得る。

  ドル建てTOPIXは27日の取引時間中に一時19.72ポイントを付け、1989年12月に付けた終値ベースでの史上最高値20.18まであと2%余りとなっている。ドルで運用する海外投資家にとっては収益やセンチメントの改善につながっており、さらなる運用パフォーマンスの好転を狙いグローバルマネーが日本株市場に流入する可能性がある。

  UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストは、ドル建ての最高値を更新すれば「日本株が海外投資家の注目を浴びるきっかけになる」とし、日本株に対してネガティブな見解を持っていなければ「投資しやすくなる」とみる。 

  米国の関税政策など外部環境が不透明な中でも、3月期企業の決算発表で自社株買いの増加などコーポレートガバナンス(企業統治)の改善が確認できたことは「中期的な買い材料」とも同氏は指摘した。

「2つのエンジン」

  海外から日本株への資金流入は足元で長期化している。東京証券取引所が26日に発表した投資部門別売買動向によると、外国人投資家は6月第3週に現物株を885億円買い越した。買い越しは12週連続と2023年6月の記録に並んだ。

  ドル建てTOPIXの上昇について、野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは「日本株が為替離れしている表れ」と分析する。デフレ下では経済成長の原動力を外需や円安に頼る傾向が強く、外需の失速時に株価も下げやすかったが、インフレ基調の定着で内需が外需を補う構図が整い、「日本経済に2つのエンジンがそろってきた」と評価する。

  大和証券によると、主要上場企業の25年度業績で増益率の押し上げに最も寄与するセクターは医薬品や精密、電機、食品、ITシステム、サービス・メディアなどだ。一方、減益寄与1位は米関税引き上げや円高進行の影響を受ける自動車。阿部健児チーフストラテジストは、内需関連は関税の直接的な悪影響を受けにくく、国内の高い賃上げ率などを背景に相対的に業績が堅調とみている。

急激な円高はリスク要因に

  もっとも、ドル建てに先立ち円建てTOPIXが昨年7月に最高値を更新した際、為替は1ドル=161円台だった。デフレ脱却やガバナンス改善などと並び、歴史的な円安が時価総額上位の輸出セクターを中心とした好業績期待を通じて相場の押し上げ材料になったのは事実だ。

  足元は144円台と当時より1割円高に振れている。ドル建てTOPIXの上昇で海外勢の買いが期待できる半面、輸出企業の業績不安が日本株全体の足を引っ張るリスクは否定できない。UBS SuMiの小林氏は、米景気懸念から急激に円高が進んだ昨年8月のような事態になれば、「最終的に円建てとドル建ての双方とも厳しくなる」と分析している。

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