ロシアが極超音速ミサイルと喧伝したツィルコン、その正体は弾道ミサイル

ロシアの3M22 Zircon(ツィルコン)はスクラムジェットによってM8.0~M9.0で飛翔が可能な極超音速ミサイルと予想されていたが、ウクライナ国防省情報総局は回収された残骸を分析した結果「固定ロケットブースター付きの弾道ミサイルだ」「現在までM6.8を超えることはない」と発表した。

参考:War&Sanctions: Ukraine’s Defence Intelligence Publishes Details on russia’s 3M22 Zircon Ballistic Missile

ロシアの3M22 Zircon(ツィルコン)は固体燃料ブースターで超音速に加速後、スクラムジェットに点火して極超音速域(M8.0~M9.0)で地上・海上目標まで飛翔する極超音速ミサイルで、ロシア国防省は2020年10月に実施された試射の様子を公開し、ゲラシモフ参謀総長はプーチン大統領に「白海から発射したツィルコンは450km離れたバレンツ海の海上目標に命中し、この試射でツィルコン最高速度は音速の8倍に達し、最高飛行高度は28kmだった」と報告した。

2021年10月にはバレンツ海でヤーセン級攻撃型原潜からツィルコンを発射する様子も公開、ショイグ国防相は2022年8月にツィルコンの量産開始と実戦部隊での運用開始を発表し、2024年2月のキーウ攻撃で初めて実戦投入したものの、2025年末までに使用されたツィルコンは6発のみだった。しかし、ロシアは2026年1月から8月までにツィルコンを約40発使用し、ウクライナ国防省情報総局は31日「ジルコンはスクラムジェットで巡航する極超音速ミサイルではない」「最高速度もロシアが主張するM9.0に達したことは一度もない」「現在までM6.8を超えることはなく、この速度は飛行全体を通して維持されるわけでもない」と発表した。

ロシア国防省が2024年12月に公開した動画には水上艦艇の垂直発射装置から発射されたジルコンがハッキリ写っているものの、ミサイルの形状は保護フェアリングに覆われていて確認することが出来ず、西側諸国はジルコンの先端設計について平坦なウェーブライダー型の形状ではないかと予想していたが、回収した残骸から判明したジルコンの形状は極超音速域で持続的な巡航を行うのではなく、準弾道軌道で目標に向かう固定ロケットブースター付きの弾道ミサイルだったというオチだ。

‼️DIU exposes details of russia’s 3M22 Zircon ballistic missile — including its components, production chain, 70 companies involved, key personnel, and foreign equipment used to manufacture the weapon: https://t.co/oOBqjUb8dS pic.twitter.com/VqRSSA41iV

— Defence Intelligence of Ukraine (@DI_Ukraine) August 31, 2026

誘導方法も慣性航法とアクティブレーダーシーカーの組み合わせで、他のロシア製弾道ミサイルに採用されているデジタル演算システム(Baget-83)を使用しており、弾頭重量もイスカンデルMの1/3以下=約120kgしかなく、水上艦艇が黒海で作戦を行うのが困難になったため、現在はバスティオン沿岸ミサイルシステム(移動可能な地対艦ミサイルシステム)でツィルコンを運用しているらしい。

ツィルコンの能力は大げさなものだった可能性が高いものの、現時点において迎撃が困難なことに変わりなく、これが「技術的に迎撃困難なのか」「PAC-3 MSEを含む既存の迎撃手段の不足で迎撃困難なのか」は不明だが、ウクライナはツィルコンの迎撃成功を報告し、ロッキード・マーティンも実戦で迎撃可能と証明されたと主張している。

出典:Lockheed Martin

仮にPAC-3 MSEの不足で迎撃が困難になっているだけなら、ツィルコンの脅威は予想されていたものより小さくなるだろうし、このシステムはロシアが製造する長距離攻撃兵器の中で最も高価(Militarnyiによる推定単価は4億2,000万ルーブル~4億5,000万ルーブル)なので生産量も月3発レベルしかなく、現在のペースでツィルコンを発射すれば備蓄分(100発程度)が溶けるのは時間の問題だろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Defence Intelligence of Ukraine

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