中東危機が住宅直撃…塗料値上げ、ユニットバス品薄 原油供給不安長引けば中小は苦境に
中東情勢の緊迫化を背景とした原油供給不安の影響が、身近に及んできた。特に原油を精製してできるナフサ由来の素材は幅広い分野で使われており、住宅建築に欠かせない資材では、新規受注停止の動きも出てきた。ナフサは国内製造業の約3割に調達リスクの可能性があるとも指摘されており、苦慮する現場に官民が連携した対応策が急がれる。
仕入れがストップ
「さび止めが仕入れできない」「シンナーは3倍以上の価格になっている」。日本塗装工業会が6~10日、会員事業者に緊急アンケートを行ったところ、塗料やシンナーの仕入れに関して悲鳴に近い訴えが相次いだ。
塗料の希釈などに使うシンナーを巡っては、大手メーカーの日本ペイントホールディングスが3月19日、75%の値上げに踏み切った。担当者は「自助努力ではどうにもならなかった製品のみ、やむなく値上げした」と話す。
ナフサの供給不安は、浴室の壁や床に貼るフィルムの接着剤のほか、浴槽のコーティング剤に含まれる有機溶剤などにも広がってきた。
住宅設備機器メーカーのクリナップは今月15日から浴槽やシャワー、鏡などがセットになった「システムバスルーム」の新規受注を停止。LIXIL(リクシル)も14日からユニットバスの納期を「未定」と顧客に回答しているという。
このほか、雨どい用の資材や壁紙などを扱う企業からも値上げの発表が相次ぐ。
背景にあるのが、ナフサの国際価格の急騰だ。米イスラエルによるイラン攻撃直前の2月下旬から5割以上も上昇している。
政府は国内で半年以上分の在庫があるとした上で、中東以外の地域からの代替調達を進めている。資源エネルギー庁の担当者は「(在庫の使用抜きでも)7割程度は調達できている」と説明する。
だが、たとえばシンナーの場合は先行きに不安を抱えるメーカーなどが、原料の供給量に問題が生じていない段階で出荷量を半減させたため、調達難を引き起こした。
赤沢亮正経済産業相は「日本全体の必要量は確保できている」と繰り返し強調。こうした流通段階の目詰まりを一つずつ、解消する考えだ。
包装材にも波及
住宅以外で影響が顕在化しつつあるのが、ナフサ由来の包装材だ。三菱ケミカルは食品包装用ラップフィルムを今月21日に現行価格から35%以上値上げすると発表。積水化成品工業も同日から、食品トレーやカップ麺の容器の材料となるプラスチックの価格を1キロ当たり120円引き上げる。
外食大手コロワイドの担当者は、弁当や総菜用の容器やラップなどの一部商品について「値上げの要請が来ている」と明かす。スーパーやコンビニなどにも影響は広がる。
帝国データバンクによると、国内の主要化学製品メーカー52社からナフサ由来の製品を仕入れているのは約4万7千社に上る。これは同社が集計可能な製造業全体の約3割を占める規模だ。ナフサ由来の最終的な用途は住宅関連や包装材にとどまらず、自動車部品からハンバーガーの包装紙などさまざまだ。
石油化学コンサルタントの柳本浩希氏は、原油の供給不安が長期化すれば中小メーカーは苦境に陥り、サプライチェーン(供給網)が寸断される恐れがあると指摘。状況によっては、政府などによる「運転資金の支援なども必要になる」との見方を示している。(永田岳彦、福田涼太郎)