「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
走るガジェット「Tesla」に乗ってます
「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現される米Tesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、このクルマを連載形式でレポートします。
2021年9月に納車された筆者の「Model 3」は納車から5年、2回目の車検を迎えました。今回は生まれて初めてのユーザー車検を実施しました。自宅から30分程度のところにある関東運輸局神奈川運輸支局に自らModel 3を持ち込んで検査を受けます。時間と手間はかかりますが、Teslaサービスに依頼するより、車検代行手数料の分、安価に済ませることが可能です。2年前の車検時、Teslaの代行サービス手数料は3万2200円でした。
ただ、ユーザー車検とはいえ、今後安全に運行するためには所定の定期点検は必須です。神奈川運輸支局に出向く前にTeslaサービスに点検整備を依頼しました。本稿では、整備の様子を前半、ユーザー車検の様子を後半と、2回に分けて報告します。前半は、定期点検各項目の内容、料金、クルマの状態についてお話しします。
まず、今回Teslaサービスに依頼した点検における結果から主な項目を特記します。
- 2021年9月納車による2回目の車検
- 入庫時の走行距離:4万2347km
- 走行、充電、警告灯、足回りブッシュ・ブーツ、各種システムなど基本的な項目全て「良好」
- ブレーキパッド残量:9.0mm(前)、8.5mm(後)
- タイヤローテーション実施(25年10月に新品に交換済み)
- 高電圧バッテリーの健康状態(SOH):92.8%
故障らしい故障もなく無事5年を乗り切りました。と報告すると、またぞろ、お定まりの反応があるかと思うので、最初に次の様にお伝えしておきます。
過去の節目節目の点検報告で「故障なし」と書くたびに、「今のクルマがそんな短期間で壊れるはずないだろ、壊れる方がおかしい」というコメントを必ずと言っていいほど複数頂戴するのですが、そのようなことは筆者として百も承知です。
例えばわが家のセカンドカーであるアンプラグドの三菱「アイ」は、新車で購入して13年乗っていますが一度も故障していません。常識的な範囲内で点検や消耗品などの交換を真面目に実施しているからこそだと思いますが、仏Citroënや独Mercedes-Benzといった欧州車をメインカーとして30年以上乗り継ぎ、納車当初から幾度のトラブルに見舞われ、それ相応の出費を強いられたことを思うと、現代の日本車の信頼性はすごいものだと感心します。
そういう意味で「ガイシャ」であるModel 3も何らかのトラブルに遭遇するものと身構えていたわけですが、拍子抜けするくらいトラブルがありません。上海工場製造の個体は、米国工場の個体との比較で信頼性が高いという話を見聞きしますが、まさに身をもって感じる部分です。
ブレーキパッドの残量も注目に値します。完全停止まで可能な回生ブレーキのおかげでブレーキパッドの減りは前後とも約1mmだそうです(新品は前10mm、後ろ9.5mm)。前車のMercedes-Benz「C250」は、ほぼ同等の4万2000kmでリアのパッドが「摩耗限界(5.0mm)」を迎え、工賃込みで2万152円かけて交換を実施したことを思うと、パッドの減りを抑制できるワンペダルドライブのメリットを感じます。
欧州車の場合、ストッピングパワーを重視するので、パッドの摩耗が早いのは致し方ないとはいえ、完全停止まで可能なワンペダルドライブが維持コスト低減に寄与してくれることを実感します。ちなみに、前出のMercedesは、約7万km強のタイミングでブレーキディスクも交換したので高額な維持費に閉口しました。このときはパッド交換も含め10万円オーバーでした。
また、高電圧バッテリーについても、納車時との比較で92.8%(劣化率:7.2%)を残しているとのことで良好な状態を保っています。こちらも同様にコメントなどで「5年もすればバッテリー劣化が激しくて使い物にならない」と散々言われてきただけに、少なくとも筆者の個体には当てはまらないことが確認でき、安堵しております。
点検整備費用(除く車検費用)の詳細を表にまとめました。
ワイパーブレード、エアコンフィルター、ブレーキオイルといった消耗品交換は、快適で安全な運行を実施するために必要不可欠な項目です。ただ、エバポレーターやヒートポンプ洗浄は、必ずしも実施しなければならない項目ではありませんが、今後も快適なドライブ体験を得たいので、これを機に実施しておこうと考えた次第です。エアコン内にカビが発生して雑菌が繁殖するかもしれないと思うと、衛生上よろしくありません。
ただ、エアコンのヒートポンプ(ラジエーター)にごみや泥、虫などが付着して目詰まりを起こすと、コンプレッサーが壊れる可能性もあるようです。トラブル事前回避の意味でも5年を一区切りにして洗浄を実施する意味はあるかと思います。Model 3のエアコン修理で42万円の事例は過去の本連載『エアコン修理に42万円 納車4年以内のテスラオーナーなら入っておきたい「延長保証」の中身』で紹介しました。
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定期点検の申込みは、Teslaアプリから行う仕組みです。昨年、Model 3を購入した友人から「ストアの担当者に点検依頼のメールを送っても返事がない」といった相談を受けたので、「アプリから依頼する」とアドバイスすると、「ドライだねえ」と返されました。そうなのです。Teslaは、日本では当たり前のディーラー型の販売ではないので、顧客として点検などの用向きがあれば、アプリを介してサービスにアクセスする必要があります。
以下、その様子を時系列でご紹介します。大まかな流れは次の様になります。
- アプリの「サービス」→「その他」に、点検を受けたい旨のメッセージを記入。さらに、希望の日時を画面から選択して送信
- Teslaサービスより暫定見積もりが届くので確認して「承認」をタップ
- 点検日時の約1週間前にサービスより、消耗品交換などを含めた正式な見積もりがアプリに送信されるので問題がなければ「承認」をタップ
- 先方からメッセージや見積もりが届くとスマホのロック画面に通知される(オプトインしている場合のみ)
- 点検当日、サービス拠点に入庫時スタッフからの整備内容についての説明を受ける
- 今回は、ユーザー車検前の点検整備依頼だけだったので、約2時間半で引取完了
2年前の車検時は、Teslaサービスに車検代行まで依頼したので、定休日を挟み2泊3日の期間が必要でしたが、今回は点検だけなので2時間半で終了です。東名川崎のサービス拠点隣にファミレスがあるので、「MacBook Pro」を持ち込んで仕事をしながら待ちました。
東名川崎のサービス拠点は鉄道の駅から遠いこともあり、前回車検時の様に日数を必要とする場合は、入庫と引取時に家人にサービス拠点まで三菱アイで伴走してもらう必要があります。
ファミレスで待っている間も、Teslaアプリで修理の進捗が確認できます。そして、終了の予告の時間とほぼ同時に「点検完了」のメッセージが届きます。後は、受付に戻り、整備内容の説明を受け、クレジットカードでの支払いを承認して完了です。
次回は、神奈川運輸支局でのユーザー車検の様子を中心にお伝えする予定です。
前半最後に「Model Y」試乗体験の感想を加えて本稿を結びます。点検完了時に「Model Yをお試しになりませんか」ということで試乗してきました。千葉市稲毛のサービス拠点のオープニングイベントでは旧型のModel Yに乗りましたが、通称ジュニパーと名付けられた新型は初体験です。
まず外見。Model 3を見慣れているだけに、間近に立つとModel Yの大きさに驚きます。背が高く幅も広い。早速乗り込んで走り始めます。
21年型Model 3と比較すると、クルマとしての基本的な部分が、さらに良くなっているのを感じます。走行中車内が相対的に静かで、タイヤからのロードノイズもかなり抑え込まれています。
乗り心地もソフトです。Model 3で否が応でも意識させられる、ちょっとした舗装の段差で感じるハーシュネスも体感値で半分程度には抑えられている印象です。驚いたことに、オプション扱いの20インチホイールを装着しているとのこと、標準の19インチならさらにソフトな乗り心地になるのは想像がつきます。
そして、SUVタイプだけあり、目線が高いので、運転という行為そのものがずいぶんと楽に感じ、余裕のドライビングをしている自分に気付きます。年齢を重ね身体的自由度の衰えを感じている昨今、乗降についても無理なく実施できることを意識させられます。ちょっとオーバーな表現をお許しいただくと、その後、乗り込んだ自分のModel 3への乗車は、身体を穴蔵へ無理して押し込んでいるような感覚になりました。
筆者は、これまで30年以上セダン系を好んで乗り継いできました。「流行のSUVは眼中になし」と、半ばあまのじゃくな自分を楽しむ感覚すらありました。しかし、Model Yの試乗でその信念が揺らいでいます。乗降の楽さがこれほどまでに精神的ゆとりをもたらしてくれるのかと驚いています。
ただ、過去の本連載で幾度か触れた様に、筆者の住環境ではModel Yは大き過ぎます。モバイルサービスの担当者がModel Yで自宅の駐車場に乗り込んで来たので、完全に無理というわけではないのですが、全幅1920mm、全長4800mm、全高1625mmはさすがに心配です。特に機械式パーキングを利用する場合には困ることも多いでしょう。
延長保証の切れる27年9月以降も現車を乗り続けるのか、最新のModel 3に乗り換えるのか、はたまたModel Yを選択するのか、まだまだ時間はあるとはいえ、悩ましい選択を迫られそうです。
著者プロフィール
音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla
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