日大三高野球部で「わいせつ動画」拡散、親がとるべき初動は?「すぐ削除」が正解か?弁護士に聞く
昨年夏の甲子園大会で準優勝した強豪、日大三高の硬式野球部で起きたわいせつ動画拡散事件をめぐり、男子部員2人が2月12日、児童ポルノ禁止法違反(製造・提供)の疑いで書類送検された。
学校側は2月14日、野球部の活動休止を発表するとともに、未成年の女子生徒らに謝罪した。
わいせつな動画が拡散した場合、被害者側は学校や警察にどのような対応を求めるべきなのか。当事者間でデータを消させる行為は適切なのだろうか。保護者は何に心を配る必要があるのか。学校トラブルにくわしい高島惇弁護士に聞いた。
●データを消させることがよいのか
読売新聞などによると、一連の出来事は昨年3月から10月にかけて発生したとされる。
書類送検された部員の1人が、知り合いの女子生徒本人にわいせつな画像や動画をSNSで送らせ、別の部員に動画を提供。それを受け取った部員を通じ、他の部員にも広がったという。
被害者の保護者が警察に相談したことで発覚したとされ、2人は「謝罪したい」などと供述しているという。
被害者やその保護者としては、一刻も早く動画を消してほしいと思うのが自然だろう。一方で、「消させないで証拠保全を」と指摘する声もある。
●被害生徒の保護者がとりうる「初動」
──生徒がわいせつな画像や動画を他の生徒に送ってしまったことが発覚した場合、被害生徒の保護者は学校に何を求めるべきでしょうか。
まず把握している内容を踏まえて学校に相談し、学校による調査を求めることが考えられます。
学校の調査によって拡散状況などをおおむね把握できることは多く、学校が加害生徒のスマートフォンをその場で確認して削除させたり、一時的に預かったりするといった対応も比較的多いと思います。
そのうえで、児童ポルノの製造や提供、所持といった犯罪に該当する可能性があるため、保護者としては速やかに警察にも相談するのが無難でしょう。
●学校や捜査機関がデータを確保してくれる
──「消させず、証拠保全を」という意見もみられますが、これは適切と考えられるでしょうか。
被害者側が速やかに動画を消してもらいたいと思う気持ちは理解できます。一方で、直ちに削除させるのではなく「証拠保全を申し立てるべきだ」との意見もあるようです。
私の経験では、学校で保管されたり、迅速な捜査がおこなわれたりすることで、問題となっているデータを確保できるケースは少なくありません。その後、家庭裁判所に送致された段階で、被害者の立場から謄写の許可申請をおこなえば、必要な証拠を適切に確保できます。
また、仮にデータがすでに消去されていた場合でも、学校の報告書や加害生徒の供述など、他の証拠を通じて所持や拡散の事実を立証できることも多く、少なくとも民事で損害賠償を請求したり示談交渉をしたりするうえで、さほど不都合が生じることはないという見解です。
●学校名の報道によって不登校になる被害生徒も
──生徒間のわいせつ動画トラブルの相談に取り組む中で、被害生徒の保護者にどのような助言をすることがありますか。
SNS上でのわいせつ動画の拡散をめぐる問題は、昨今の学校案件では多く発生しています。ほとんどのケースで、生徒が興味本位や軽い気持ちで送受信しています。
今回はたまたま報道されていますが、いわゆるスポーツ強豪校や進学校で事件が起きても、社会的に大きく報じられないまま収束するケースも一定数あります。また、部員の不祥事であっても、部活動自体は継続される例もあると理解しています。
学校名などが報道されることで被害生徒が特定され、二次被害にもつながるおそれもあります。実際、拡散による精神的なショックから心身に不調をきたして登校できなくなる被害生徒も珍しくありません。
保護者としては、少年事件化への対応も重要ですが、子どもの「教育を受ける権利」を確保する観点から、加害生徒に対する退学処分や別室指導など、学校環境の安全確保について学校に継続的に働きかけていく姿勢が大切だと考えられます。
【取材協力弁護士】高島 惇(たかしま・あつし)弁護士学校案件や児童相談所案件といった、子どもの権利を巡る紛争について全国的に対応しており、メディアや講演などを通じて学校などが抱えている問題点を周知する活動も行っている。近著として、「いじめ事件の弁護士実務―弁護活動で外せないポイントと留意点」(第一法規)。事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp