ハマチが消えた 鳥取沿岸、昨年記録的不漁に 操業支援へ緊急対策
鳥取県民の食卓を長く支えてきたハマチの沿岸での漁獲量が2025年、過去30年で最低という記録的な不漁に陥った。沿岸漁業の不振に危機感を持った県は新年度、緊急の不漁対策事業に取り組む。
「去年は目に見えてひどかったという実感がある。これだけ取れなかったのは初めて」。2月下旬、県漁協酒津支所(鳥取市)に所属する漁師の谷本達郎さん(39)が嘆いた。16歳で海に出て、今は4代目の船長として父と一緒に主に県沿岸で漁をする。刺し網で狙うのはハマチとタイが主だ。
生計を支えてくれていたハマチが昨年、急に姿を消した。経験的にいると思われる海域に網を入れてもかからない。漁獲量は4.2トンで前年の38.3トンから激減した。周囲の漁師も同じ状況だったという。
収入は半減し、船の燃料代や資材費の高騰が追い打ちをかける。「このままだと、仮に自分の子どもが漁師になりたいと言っても勧められない」
流入少なかったとみられる藻雑魚
ハマチは、成長とともに呼び名が変わる「出世魚」として知られる。
県によると、県内では小さい順にツバス→ハマチ(体長40センチ前後)→マルゴ→ブリ(同85センチ前後)と呼ばれる。仲買業者らプロの目で県民に勧めたい県産魚介類を県産魚PR推進協議会が選んだ「四季の県魚」(22年制定)では全20種類の中にハマチ(ブリ)が冬の魚として選ばれるなど、県民にとってはなじみの深い魚だ。
県によると、25年の県沿岸でのハマチの漁獲量(速報値)は96トンで、前年から87%減った。1996年以降の30年で最も少ない。近年では22年も不漁だったが、23年、24年と回復傾向にあっただけに急減が目立つ。
ハマチやブリの稚魚は流れ藻に付いて成長するため藻雑魚(モジャコ)とも称され、県水産試験場によると、25年は藻雑魚の県沿岸への流入量が少なかったとみられる。
日本海の近県も同じ状況だといい、ハマチなどの魚の分布や回遊コースが変わったと考えられるという。海水温や潮流の変化が原因と推測されているが、詳しくは不明だ。
県栽培漁業センターによると、海水表面の平均水温は25年7月、琴浦町沖で平年より2度、鳥取市青谷町沖で2.6度高かった。9月はともに2.6度高く、水深30メートルでは琴浦町沖で3.2度、青谷町沖で4.9度も平年を上回った。表面水温は一時的に30度台となり、11年の観測開始以来初だった。
主要1魚種の不漁、漁業全体に影響大
鳥取県内の海では全体の漁獲量が落ちるとともに、取れる魚の多様性も失われつつある。
県によると、サケ、フグなどの養殖を除いた県沿岸での漁獲量は1994年の約1万200トンに対し、25年は約2300トン。30年余りで8割近く減った。
年間100トン以上漁獲される魚類の種類数は、94年の14種類から25年は4種類に激減。ハマチのような、主要1魚種の不漁が漁業全体に大きく影響を及ぼすようになった。漁業者にとって「今までのような経営が成り立たなくなっている」と県の担当者は言う。
県は26年度、緊急の不漁対策事業に乗り出す。沿岸漁業者や漁協、自治体などでつくる対策協議会を発足させ、気候変動を踏まえた操業の効率化などを検討し、不漁対策を取りまとめる。
ハマチ漁の不振も重視。漁期の初めの5、6月ごろをめどに、漁獲があった漁業者から時期と場所の情報を受け取り、他の漁業者に即時に提供する事業に取り組む。スルメイカで既に導入している漁場形成調査のハマチ版という。
県内では25年、高い海水温が原因とみられる海藻のアラメの立ち枯れが発生した。アラメはアワビ、サザエなどの餌になったり、小魚の生育場所になったりする。県内ではアワビの漁獲量も右肩下がりで減っている。このため県は、新たな「藻場造成アクションプログラム」を1年前倒しして策定し、同計画に基づいて高水温に耐えるアラメの移植などに取り組む。
漁師の谷本さんによると、数年前からは刺し網にサメが大量に入り込んでハマチを食べたり、網に穴を開けたりする被害が出ているといい、サメ駆除への行政の支援も求めたいとしている。
この記事を書いた人
- 清野貴幸
- 鳥取総局
- 専門・関心分野
- 自然生態系、環境問題