「遺産は半分ずつ」の約束がぶち壊しに…亡くなった父のスマホに保存されていた「遺言動画」の仰天内容(Finasee)
遺言書には法律で決まった形式があり、それを満たしているかどうかは、その遺言書が有効かどうかに深く関わってきます。見つかった遺言書の効力は、相続の内容にも大きく影響する大問題。では、どのような形式が必要なのでしょうか。本連載では、これまで多くの相談者の悩みを解決してきた行政書士・FP・宅地建物取引士の柘植輝氏に、トラブルへの対策や対処法について紹介してもらいます。
社会のデジタル化が著しく進む昨今。今や高齢者でも各種のITデバイスを当たり前のように駆使している。 それにともない、近年、遺言を動画で残す高齢者もちらほら見るようになった。 だが、「動画の遺言」の存在が、逆に、相続を泥沼に導く落とし穴となることもあるのだ。 今回はある兄弟の実例を通じ、動画の遺言を残すメリット・デメリットについてぜひ知っていただきたい。
今回、相続争いが起こったのは、兄・智徳さんと弟・拓海さんの兄弟だ。 兄弟の父親である剛士さんは、亡くなる10年ほど前から入退院を繰り返していた。特にここ数年は主治医から「いつ亡くなってもおかしくはない」と言われていたほど健康状態が悪化していた。 そんな父・剛士さんの病状を見て、智徳さんと拓海さんはいつしか相続についても話し合うようになっていた。 「揉めるのだけは嫌だな」兄の智徳さんが言った。 「そうだな。半分ずつでいいだろ」弟の拓海さんが半笑いで答える。 このときの二人は、比較的穏やかに話し合い、合意もとれていた。 それもそのはず。この兄弟は仲が良く、それまで喧嘩らしい喧嘩もほとんどしたことがなかった。 小学生のころに、おもちゃを取った取られたで少し喧嘩をしたことがある、という程度だった。 当然、この時、兄弟は父が動画で遺言を残していることも、この先大荒れの相続争いを繰り広げることになることも、全く予想していなかった。
兄弟が話し合いを始めてから数年が経ち、長らく闘病していた父・剛士さんが亡くなった。 兄弟二人は悲しみに包まれたが、ずいぶん前から覚悟していたことでもあり、粛々と遺品整理を始めた。 衣類、通帳、病院関係の書類……。静まり返った実家で、二人は淡々と整理を進めていく。 作業の途中、拓海さんはふと、剛士さんが生前に使っていたスマートフォンを手に取った。 「親父、機械に詳しかったよな」 そう質問すると、兄・智徳さんが答える。 「ああ。俺たちがパソコンやスマホに苦手意識がないのは、親父の影響かもな」 そんな会話をしながら、拓海さんは、剛士さんのスマホを操作し、電話帳アプリを開いた。 もちろん、電話帳に登録されている剛士さんの知人や親戚に、「父が亡くなりました」と連絡を入れるためだった。 「そうだ……、親父が撮影した写真や動画も一応バックアップしとこうかな。お見舞いのときに一緒に撮った写真なんかもあるしさ」 拓海さんはそう言って、そのままスマホのデータの捜索を続ける。 と、その時、スマートフォンのデータフォルダの中に、妙に目立つファイルがひとつ残されていることに気づいた。 ファイルの名前はなんと「遺言書」となっている。 深く考える間もなく、拓海さんは無言でその動画を再生した。 画面には、ベッドの上で弱々しく座る父、剛士さんの姿が映っていた。 動画の中の剛士さんはゆっくり話し始めた。