高橋まつりさん死去から10年「日本は変わってない。過労死なくしたい」労災認定は過去最多 母親・幸美さん“語り部”活動を続ける

長時間労働などが原因で命を落とす人が日本ではあとを絶ちません。大切な娘を過労死で失った母の、いまの社会への思いを聞きました。     ◇この日、墓参りにきたのは、高橋幸美さん。高橋幸美さん「お墓はたてたはいいけど、納骨したくなかったですよ」高橋さんの娘、まつりさんは10年前、24歳のときに過労自殺で亡くなりました。東京大学を卒業後、大手広告代理店「電通」に入社したまつりさん。期待いっぱいで始まった社会人生活でしたが──。まつりさんの母・高橋幸美さん「朝4時とかに帰ってきて。寝たら起きられなくて。会社、遅刻して怒られるから寝られないって」母に伝えた、47時間連続勤務後に40分で出社という違法な長時間労働。疲労がたまり、ある日SNSに残した言葉は──。「何のために生きているのか分からない」この言葉を書いた1週間後、2015年のクリスマスに、自ら命を絶ちました。まつりさんの死は、長時間労働が原因の労災と認定。電通は、労働基準法違反で有罪判決を受け、働き方改革が進むきっかけにもなりました。亡くなって10年──。まつりさんの母・高橋幸美さん「過ぎたらあっという間だったかもしれないけど、やっぱり長かった。やっぱりつらくて長かった。なんか楽しいことばかり思い出すけど、すごい昔のことばっかりでね」お墓には、2冊のノートが置かれています。訪れた人が思いを記し、「電通」のかつての上司からの言葉も。まつりさんの母・高橋幸美さん「まつりのおかげでよくなったよと、言ってくれるんですけど…」昨年度、長時間労働などによる「労災」と認定された死亡や病気の件数は、1304件と過去最多。高橋さんは「日本は全然変わっていない」と感じています。その高橋さんが「過労死をなくしたい」と続けてきたのは、これから社会に出る学生への“語り部”活動です。まつりさんの母・高橋幸美さん「みなさんは、つらいことがあって死にたいと思ったことはありますか。娘も人生の逆境や挫折を何度も味わったことがあります。でも、そのときは死にませんでした。正常な判断ができたからです。弱いとか強いとかじゃないんです」高橋さんは、「あなたの人生はあなたのもの。自分を大切にして」と学生たちに伝えました。大学4年生「自分と自分の大切な人のことを守れるように、今回の話をいかしていきたいと思いました」

高橋さんは、長時間労働のさらなる規制が必要だと強く訴えています。自分を大切にしながら、生き生きと働ける環境を……1人で旅立った娘を悼む高橋さんの思いです。

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