中高年男性、友達「つくろう」はダメ 心理学者が説く大人の交際術
年齢を重ね、若いころに比べ友達の数が減ってきたことを気にしたり、関係性に思いを巡らせたりする中高年は多いかも知れません。大人になってからの友達関係は、どうしていったらいいのでしょうか。友達関係に詳しい本田周二・大妻女子大学人間関係学部教授(社会・臨床心理学専攻)に聞きました。 【画像】「友達がいない?」飲み会に誘われなくなった僕 58歳記者の苦悩 ――年齢を重ね定年なども見えてくると、仕事を抜きにした友人関係に不安を覚えるのですが……。 「本当に友達ゼロ人です」となるとつらいですけど、そうでなければ、そんなに心配する必要はありません。そこに「他人との比較」が入ってくると、よりつらくなるのではないでしょうか。 「友達」というものに価値を置き過ぎると、苦しくなります。「自分が相手をこう思っているのだから、相手にも自分をこう思ってほしい」と思うと、不安が強まるのではないでしょうか。人とのつながりは、友達だけではありません。家族や親戚などもあります。 ――趣味の教室などに通い、友達をつくろうとするのはどうでしょうか? とても良いと思います。何か共通項があると、そこから関係が深まっていきます。たとえば、囲碁やそば打ちなど共通の趣味を通じ、友達になるのは有効な方法です。 気をつけないといけないのは、友達って「つくろう」とするものではなくて、「できる」ものだと思うんです。はじめから「友達をつくるために、そば打ちに行くんだ」と意気込むと、相手も警戒しますし、うまくいかないかもしれません。 ――「友達がいない」中高年男性は、多いのでしょうか? これまでの私の複数の研究では、中学・高校生で「友達ゼロ人」はいませんでしたが、20代以降に聞くと「ゼロ人」と答える人が2~3割いるんです。2022年に実施した日米の30~40代計1千人を対象にした国際比較調査では、「友達がいない」と回答したのはアメリカでは1割未満でしたが、日本では2割超いました。それを望んでいるのならいいのですが、そうでないとつらい。 ――実際、友達は多い方がいいのでしょうか? 「友達は100人いないとダメ」などとすり込まれてきた気がしています。「友達の少ない私はだめだ」「少ないといやだから、嫌いな人ともつき合う」などの「呪縛」から、大人になって逃れられればいいのですが。 昔より地域や職場でのつながりが薄まり、友達をつくる難易度は上がっています。SNSの普及などで相手とつながりやすくなっても、自分が選んだ相手から自分も選ばれる必要が出てきます。 私としては「心を許せる相手、居心地がいい相手が一人でもいればいい」というメッセージを送りたいです。私の研究でも、「友達の数は、その人の幸福度には影響しない。信頼できる人が一人でもいれば、幸福度はある程度維持される」という結果が出ています。 ――「友達」って、何なのでしょうか? 濃い友達もいれば、薄い友達もいます。時期によっても変わる「つかみどころがない関係」といえます。私自身、友達に期待しすぎない、求めすぎない、ということを意識しています。大事な人はいますが、相手から同じだけ思ってほしい、とは考えません。それで十分楽しくつき合いができています。(聞き手・佐藤陽) ■本田周二さん プロフィル ほんだ・しゅうじ 1981年生まれ。大妻女子大学人間関係学部人間関係学科社会・臨床心理学専攻教授。2009年、東洋大学大学院社会学研究科社会心理学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(社会心理学)、公認心理師。成人期における友達関係の研究を続ける。
朝日新聞社