米雇用者数の伸び加速、教育分野が押し上げ-失業率4.1%に低下

6月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を上回った。予想を上回るのはこれで4カ月連続。公教育分野が異例の大幅増となり、全体を押し上げた。

キーポイント
  • 非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比14万7000人増
    • エコノミスト予想の中央値は10万6000人増
    • 前月は14万4000人増(速報値13万9000人増)に上方修正
  • 家計調査に基づく失業率は4.1%-前月は4.2%

  雇用者数は州・地方政府での増加が目立ち、州政府の雇用は2023年以来の大幅増となった。特に教育分野で伸びた。地方政府の雇用も急増した。一部のエコノミストはこれらの数字の強さに疑問を呈し、季節調整の問題かもしれないと指摘した。

  民間部門の雇用者数は7万4000人増。昨年10月以来の小幅な伸びにとどまり、雇用が鈍化しつつある状況と整合的な数字となった。雇用主はトランプ大統領の一貫性のない通商政策に対応しつつ、同氏が推し進める税制法案の議会承認を待っている。

  ヘルスケア・社会扶助の雇用は5万9000人増と、4カ月ぶりの低い伸び。娯楽・ホスピタリティーでも伸びが鈍化して2万人増、前月分は下方修正された。製造業や卸売り、ビジネスサービスでは減少した。

  パンテオン・マクロエコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、サミュエル・トムズ氏は「教育分野の雇用増加を除くと、民間部門の労働需要は減速している」とリポートで指摘。「関税引き上げや景気抑制的な金融政策、貿易戦争のさらなる激化を巡る懸念が、労働需要を強く圧迫している」と述べた。

  今回の統計を受けて、米国債利回りは上昇。円は対ドルで下げを拡大した。今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げ観測が後退したことが背景にある。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、関税によるインフレへの影響が一段と明確になるまで利下げを急がない考えをこれまでに示している。物価上昇圧力は今年これまでのところ抑制されている。

関連記事:強い米雇用統計で利下げ観測後退、円は一時145円台前半に下げ拡大

  パウエル氏は最近の議会公聴会で、労働市場が有意に弱くなれば、想定よりも早期に利下げに踏み切る可能性があるとの考えを示した。

関連記事:FOMCメンバー、多くが7月利下げに慎重な姿勢-物価動向見極めへ

  失業者数は5カ月ぶりに減少した一方、労働参加率も低下した。

  トランプ政権は通商戦略に加え、大統領自身が「史上最大規模」と位置づける不法移民の一斉強制送還を進めている。近年は外国生まれの労働者が雇用増加の主要な原動力となってきたため、この政策は労働市場に影響を及ぼすとみられる。

  外国生まれの労働者は3か月連続で減少し、今年の最低水準となった。過去3カ月の減少幅は新型コロナウイルス禍が始まった当初を除くと、2007年のデータ集計開始以降で最大となった。

  ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン氏、スチュアート・ポール氏らエコノミストは「FRBは今回の統計を、利下げへの慎重姿勢を正当化するものと受け止めるだろう。当局者は9月に利下げを再開するかを判断する前に、今夏のインフレ指標を見極めようとしている。市場は9月利下げをほぼ織り込んでいる」と述べた。

  エコノミストは労働需給が賃金の伸びにどう影響しているかについても注視している。平均時給は前月比0.2%増。前年同月比では3.7%増。いずれも市場予想を下回り、前年同月比では2024年7月以来の低い伸びにとどまった。

  週平均労働時間は短くなり、需要減速をあらためて示唆した。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Job Growth Picks Up With Help From Public Education Hiring(抜粋)

関連記事: