人手不足の「スキマ」捉えたタイミー株、上場後1年は派遣競合上回る
人手不足が続く日本の労働市場で正社員やパートタイマーの合間を埋めるスポットワーク、いわゆる「スキマバイト」への需要が高まり、株式市場でも業界リーダーの株価が大手人材派遣会社をアウトパフォームしている。
スキマバイトのマッチングサービスを手掛けるタイミー株は、東京証券取引所への上場後1年間の上昇率が22%となり、同期間に10%上げたリクルートホールディングス、8%高のパソナグループなど主要な人材派遣会社を上回った。日本株市場全体の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は9%高だった。
岩井コスモ証券アナリストの川崎朝映氏は、物流や小売り業界を中心に「空いた時間だけ短時間に労働するスキマバイトの需要が高まっている」と指摘。タイミーはリーディングカンパニーとして市場拡大の恩恵を受けやすく、知名度の高さも追い風に業績が拡大しているとの見方を示す。
厚生労働省が3カ月ごとに公表する労働経済動向調査によると、正社員やパートタイム労働者の過不足判断DIは、新型コロナウイルス禍の2020年を底に不足感の強い状況が続く。同省は人口減少や高齢化により人手不足は長期かつ粘着的で、労働時間の短縮やサービス産業化の進展も影響し、広範囲の産業や職業で生じていると分析しており、スポットワーク市場の成長は長期的に続く可能性がある。
タイミーのサービス開始は18年と、19年の「シェアフル」や24年のメルカリの「ハロ」よりも早く、業界のパイオニアとして市場拡大をリードしてきた。足元の業績も堅調で、今期(25年10月)営業利益は第2四半期(2-4月)まで2四半期連続でアナリスト予想を上回る。
タイミーの八木智昭最高財務責任者(CFO)はブルームバーグのインタビューで、新規株式公開(IPO)により知名度が上がるなど「上場の効果は大きかった」と語った。同社の前期(24年10月期)営業利益は前の期から約2倍となり、今期は60億-67億円と最大58%の増益を見込む。
多様な働き方の調査・研究を行うツナグ働き方研究所の最新調査によると、25年4月時点のスポットワーク求人倍率は3倍。新規ワークス数は7万1466件と前年同月比22%増えていた。
モルガンスタンレーMUFG証券の新井勝己アナリストは、介護向けやホテル向けも着実に拡大し、「短期・中長期で適切な成長の種まきができている印象」と分析。株価は上場来高値更新をうかがうと予測し、6月に目標株価を2200円から2300円に引き上げた。
同社にとってのリスクは成長率の鈍化だ。既に広く利用されている物流や飲食、小売り分野以外へ商圏対象が広がるかどうかが課題となる。八木CFOは、介護など新しい業界への拡大に加え、業界ごとに異なる課題を解決できる新しい施策の検討を進めていると述べた。
投資判断を6月に「買い」から「中立」に下げたジェフリーズ証券の大岩賢アナリストは、第2四半期決算を受けて売上高成長率で約10%としていた予測を横ばいに下方修正した。外食業界のマクロ環境やアプリの不正利用対策など一時的な要因を反映したものだが、この影響は数四半期にわたって続くとの見方を英文リポートで示している。