【日本市況】円143円台に上昇、トランプ関税懸念が再燃-株式は下落
12日の日本市場では円が対ドルで143円台に上昇。トランプ米大統領が近く一方的に関税率を設定すると発言し、関税政策への懸念が再燃した。
リスク回避の流れで株式相場は反落した。債券は長期債が横ばい。超長期債対象の流動性供給入札が不調だったとの見方から、先物は小幅に下げて終えた。
トランプ大統領は関税率に関し、「今後おおよそ1週間半か2週間以内」に各国・地域に書簡を送ると発言した。上乗せ関税一時停止の期限が切れる7月9日より前のタイミングとなる。一方、ベッセント米財務長官は誠意を持って交渉している貿易相手に対しては、上乗せ関税の発動時期をさらに延長する「可能性が極めて高い」と述べた。
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あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、関税を巡っては米中が枠組みで合意したとみられるものの、不透明感が残りドル売りの要因だと指摘。「前週末の米雇用統計を受けてドルが買われたため、ポジション調整の動きもドル・円の重しになっている」と述べた。
12日の日本市場の為替・株式・債券相場の動き- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.6%高の143円71銭-午後3時31分現在
- 東証株価指数(TOPIX)終値は前営業日比0.2%安の2782.97
- 日経平均株価は0.6%安の3万8173円09銭
- 長期国債先物6月物の終値は前日比1銭安の139円33銭
- 大阪取引所は12日の夜間取引から中心限月が9月物に移行と発表
- 新発10年債利回りは横ばいの1.455%-午後3時時点
- 新発40年債利回りは1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い3.085%
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=143円台後半に上昇。米国で5月の消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことに加え、トランプ米大統領の関税政策に対する警戒感が再燃し、円買い・ドル売りの流れとなっている。
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三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、ドル・円はチャート上で一目均衡表の雲の下限に抑えられている状況が続いていると話す。この日は米国で5月の生産者物価指数(PPI)の発表を控えており、CPIと同様に関税の影響があまり出ず、弱めの結果となればドルが売られると予想している。
株式
日本株は5営業日ぶりに反落。トランプ米大統領の関税発言や原油高を受けて利益確定売りが優勢だった。為替の円高進行も自動車など輸出関連株の重しになった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、4営業日続けて上昇した後で「短期的な過熱感があり、きょうは自律調整というイメージ」と述べた。今週の日米交渉の進展次第で来週は相場がやや大きく動く可能性があると述べた。
東海東京インテリジェンス・ラボの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリストは、売りの「背景としては原油高が大きい」との見方を示した。原油の急騰は金融緩和による世界的な株高の良い流れが途切れるリスクを意識させると話した。
米政府が在イラク米大使館の一部職員に退避を命じ、米軍関係者の家族にも中東地域からの退避を許可したことで、地政学リスクの高まりが懸念され、原油先物は11日の取引で急伸した。
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債券
債券相場は長期債が横ばい。米長期金利低下の流れや米関税政策を受けたリスク回避で買いが先行した一方、超長期債対象の流動性供給入札が不調だったことが売り圧力になった。発行減額への期待感から超長期債の一部は買われた。
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは「流動性供給入札の応札倍率は最近記憶にないくらい低く、不調と言っていいだろう」と分析した。
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残存期間15.5年超39年未満を対象に行われた流動性供給入札は、応札倍率が2倍と前回(2.87倍)、前々回(2.5倍)を下回った。債券先物は入札結果発表後に下落に転じた。
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.750% 1.010% 1.455% 2.405% 2.910% 3.085% 前日比 横ばい -0.5bp 横ばい +2.5bp -0.5bp -1.0bpこの記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。